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代謝:血漿と尿のメタボロームを対にして比較した遺伝学研究から明らかになった血漿と尿の境界面における酵素過程と輸送過程
Nature Genetics 55, 6 doi: 10.1038/s41588-023-01409-8
腎臓は血漿と尿の境界において、有用な溶質を保持しつつ老廃物分子を除去するという働きをしている。血漿と尿のメタボロームを対にした遺伝学研究を行えば、その基礎となる過程を解明できるだろう。本研究では、血漿と尿の1916種の代謝物についてゲノムワイド解析を行い、1299の有意な関連を検出したことを報告する。関与する代謝物の40%についての関連は、血漿のみの研究では見逃されてきたと考えられる。尿特異的な結果が検出され、腎臓での代謝物再吸収(アクアポリン〔AQP〕-7を介したグリセロール輸送など)に関する情報や、腎臓で発現する血漿と尿中のタンパク質のさまざまなメタボロームフットプリント(輸送体であるNaDC3〔SLC13A3〕やASBT〔SLC10A2〕などの局在と機能に一致する)に関する情報が得られた。代謝物と疾患に関する7073の組み合わせに共通する遺伝的決定要因から、代謝性疾患についての理解を深めるための情報資源が示され、ジペプチダーゼ1と血中消化酵素や高血圧とのつながりが明らかになった。血漿以外のメタボロームにも遺伝学研究を拡張することは、身体区分の境界における過程についてのユニークな知見を得ることにつながる。