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イネ:サイトカイニンヌクレオチドの加水分解酵素ホスホヒドロラーゼの抑制によるイネの収量向上
Nature Genetics 55, 8 doi: 10.1038/s41588-023-01454-3
植物におけるサイトカイニンの合成経路には、1段階反応の直接経路と2段階の反応による二段階経路の2つが提唱されている。直接経路はLONELY GUY(LOG)タンパク質が担っている。しかし二段階経路を担う酵素はまだ特定されていない。本論文で我々は、量的形質座位GY3が、二段階経路を制御することにより穀物収量を20%以上増加させる可能性があることを示す。座位GY3はLOGタンパク質の1つをコードしており、このタンパク質は5′-リボヌクレオチドホスホヒドロラーゼ(5′-ヌクレオチダーゼ)として働き、サイトカイニン前駆体を過剰に消費する。これは、直接経路でホスホリボヒドロラーゼとして働く正統的なLOGファミリータンパク質の活性とは対照的である。GY3タンパク質がiPRMPを脱リン酸化してiPRを生成するためには、GY3のS41残基が重要な役割を果たしている。GY3のプロモーター領域にsolo-LTRを挿入すると、GY3の発現が抑制され、幼穂における活性型サイトカイニンの含量が上昇した。また調査した全てのインディカ系統のイネにおいて、GY302428の遺伝子移入による単位面積当たりの穀物収量の増加は7.4〜16.3%であり、インディカ系統のイネの生産性向上にはGY302428が非常に有用であることが示された。