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酵母ゲノム:出芽酵母142株のテロメアからテロメアまでのアセンブリによりゲノム構造の全貌を解明
Nature Genetics 55, 8 doi: 10.1038/s41588-023-01459-y
パンゲノムは、配列多型と構造バリアント(SV)の両方の観点から、その生物種の遺伝的多様性を正確に反映する。我々が作成した出芽酵母参照アセンブリパネル(Saccharomyces cerevisiae Reference Assembly Panel:ScRAP)は、出芽酵母の系統的・生態学的多様性を代表する142株の参照配列品質レベルのゲノムによって構成されている。いくつかの二倍体および倍数体のヘテロ接合分離株については、ScRAPには、フェージングしたハプロタイプアセンブリが含まれている。我々は、重複のないおよそ4800のSVを特定し、テロメア長や転位性遺伝因子の動態を含むゲノムの多様性を幅広い視点から把握することができた。また、大型の染色体に大規模な欠失や転座を起こした複雑な異数体が高い頻度で認められた。SVは切断点近傍の遺伝子発現に影響を及ぼし、遺伝子レパートリーの進化に大きく寄与していることが分かった。また、水平に獲得された領域が染色体末端に挿入され、新しいテロメアを形成し得ることも見いだした。まとめると、ScRAPは集団規模でのゲノム進化を理解する上でのパンゲノムの有用性を示している。