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遺伝子調節:マルチモーダルな一細胞データに基づく組織特異的なエンハンサー–遺伝子マップから疾患の原因対立遺伝子が明らかになる
Nature Genetics 56, 4 doi: 10.1038/s41588-024-01682-1
ゲノムワイド関連解析(GWAS)の座位から、疾患の原因となるバリアントと遺伝子を特定するには、その疾患に関連する組織における細胞タイプ特異的なエンハンサー–遺伝子マップを確立することが必要である。しかし、正確かつ細胞タイプ特異的なエンハンサー–遺伝子マップをヒト組織において構築することは現在の実験・解析方法では困難だった。本論文では、一細胞レベル、つまり単一核でのマルチモーダルなRNA塩基配列決定データとATAC塩基配列決定データを用いて、エンハンサー領域のクロマチン状態と遺伝子発現の間の関連をモデル化するノンパラメトリック統計手法SCENT(single-cell enhancer target gene mapping)を開発した。我々は12万を超える一細胞/単一核データを含む、9つの一細胞RNA/ATACデータセットにSCENTを適用することで、23の細胞タイプ特異的なエンハンサー–遺伝子マップを生成した。これらのマップには、1143の疾患や形質の発現量的座位およびGWASの原因バリアントが集積していた。ありふれた疾患と希少疾患の両方について原因遺伝子を特定し、さらにがんの非コード体細胞変異のホットスポットを標的遺伝子に結び付けることも可能となった。疾患に関連するヒト組織のマルチモーダルなデータにSCENTを適用することで、非コードバリアントの機能を定めるのに不可欠なエンハンサー–遺伝子マップを構築できることが実証された。