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肺疾患:ヒト肺における細胞タイプ特異的発現量的形質座位と疾患関連の発現量的形質座位
Nature Genetics 56, 4 doi: 10.1038/s41588-024-01702-0
ありふれた遺伝的バリアントは、肺繊維症などの慢性肺疾患に対する大きなリスクをもたらす。細胞タイプ特異的に、また、状況依存的に、遺伝子発現の遺伝的制御を明らかにすることは、遺伝的多様性が複雑形質や疾患の病理生物学的性質に影響を及ぼす仕組みを理解する上で重要である。本論文では、この目的のために、肺繊維症患者66人と非罹患ドナー48人の肺組織について一細胞RNA塩基配列決定を行った。擬似バルク(pseudobulk)の手法を用いて、38の細胞タイプについて発現量的形質座位(eQTL)をマッピングすると、細胞タイプに共通な調節効果と特異的な調節効果の両方が観察された。また、疾患相互作用eQTLを明らかにし、肺繊維症ではこの種類の関連が細胞タイプ特異的に、細胞調節不全に結び付けられる可能性が高いことを示した。我々はさらに、肺疾患のリスクバリアントを、疾患に関連する細胞タイプにおいてその調節標的と関連付けた。これらの結果は、遺伝子発現に及ぼす遺伝的多様性の影響は細胞の状況によって決まり、状況特異的なeQTLが肺の恒常性や肺疾患の主要な調節因子と考えられることを示している。