血清中の「糖鎖に覆われたドーナツ状の糖タンパク質」を物差しとして用いることでウイルス性肝炎患者における線維化程度や治療法の評価が容易になる
A serum “sweet-doughnut” protein facilitates fibrosis evaluation and therapy assessment in patients with viral hepatitis
2013年1月15日 Scientific Reports 3 : 1065 doi: 10.1038/srep01065
肝線維化は慢性肝炎患者の疾患重症度を反映するが、線維化を基盤として治療法の効果を評価するための簡単かつ正確な系は存在しない。我々の開発した、糖鎖(グリカン)を基盤とする免疫学的測定法(FastLec-Hepa)は、このまだ満たされていないニーズに見合うものだ。FastLec-Hepaは、血清中の高度にグリコシル化されたMac-2結合タンパク質の、線維化に関連する独特の糖鎖変化を、20分以内で自動的に検出する。患者血清のFastLec-Hepa値は、線維化の進行とともに増加し、線維化の全ステージでの中央値は有意に異なっていた。FastLec-Hepaには、PEG-インターフェロン-α/リバビリン併用療法の効果を、治療後の短い期間で評価するのに十分な感度と定量性がある。FastLec-Hepaで得られた線維化の進行度合は、抗ウイルス効果の著効例では−0.30ステージ/年に相当し、また、再燃/無効例では0.01ステージ/年に相当する。そのうえ、重症患者の長期間にわたる追跡調査から、治療後もFastLec-Hepa値が所定のカットオフ値を超えたままであった患者においては、肝細胞がんの発症が見られた。FastLec-Hepaは、疾患の重症度の定量化を可能にし、臨床的に有益な治療効果判定に利用できるただ1つのアッセイと言えよう。
久野 敦1*, 池原 譲1*, 田中 靖人2, 伊藤 清顕3, 松田 厚志1, 関矢 聡1, 髭 修平4, 坂元 亨宇5, 鹿毛 政義6, 溝上 雅史3 & 成松 久1
- 独立行政法人 産業技術総合研究所 糖鎖医工学研究センター
- 名古屋市立大学 大学院医学研究科 病態医科学講座 ウイルス学
- 独立行政法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター
- 北海道大学 大学院医学研究科 内科学講座
- 慶應義塾大学 医学部 病理学教室
- 久留米大学 医学部 病理学教室
*本研究は、久野 敦、池原 譲の2研究者が同等に貢献した成果として論文発表しています。