バイオハイブリッド人工器官による置換療法としての次世代型バイオハイブリッドインプラントによる機能的な歯の回復
Functional tooth restoration by next-generation bio-hybrid implant as a bio-hybrid artificial organ replacement therapy
2014年8月13日 Scientific Reports 4 : 6044 doi: 10.1038/srep06044
バイオハイブリッド人工器官は、生体内において周囲組織と適切な生物学的連携を確立することにより器官機能を回復するという魅力的な治療概念である。しかしながら、筋肉や腱、靭帯のような線維性結合組織を伴ったバイオハイブリッド人工器官はいまだ開発されていない。本論文では、ハイドロキシアパタイト(HA)でコーティングした歯科用インプラントを用いて、その周囲に歯胚から採取した歯小嚢組織を巻き付けた後、マウス歯牙喪失モデルの下顎第一大臼歯部に移植した。我々は、HAコーティングした歯科用インプラントと歯小嚢幹細胞を用いることによって、線維性接続を可能とする新たなバイオハイブリッド器官としての歯科用インプラントの開発に成功した。このバイオハイブリッドインプラントは、歯根膜やセメント質のような歯周組織を再生できるだけでなく、骨リモデリングや重度の歯槽骨欠損の再生、侵害刺激に対する応答性の獲得といった「歯の生理的機能」を回復させることが可能であった。従って、本研究では、歯の欠損を回復し得る次世代型バイオハイブリッドインプラントは、その他の臓器にも波及し得る将来のバイオハイブリッド人工器官による置換療法となる可能性を示している。
大島 正充1*, 井上 香織2,3, 中島 啓2,4, 立川 哲彦5, 山崎 大道2, 磯邊 友秀5, 菅原 彩香2, 小川 美帆1,6, 田中 智恵2, 齋藤 正寛2, 春日井 昇平7, 山本 照子3, 井上 孝4, 手塚 克成1,6, 窪木 拓男8, 山口 朗9 & 辻 孝1,2,6**
- 東京理科大学 総合研究機構
- 東京理科大学 基礎工学研究科 生物工学専攻
- 東北大学大学院 歯学研究科 顎口腔矯正学分野
- 東京歯科大学 臨床検査病理学講座
- 昭和大学 歯学部 口腔病態診断科学講座 口腔病理学部門
- 株式会社 オーガンテクノロジーズ
- 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 インプラント・口腔再生医学分野
- 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野
- 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 口腔病理学分野
*現所属先:岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野
**現所属先:理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター