磁気誘導輸送と核磁気共鳴画像法のための磁性抗がん化合物
A magnetic anti-cancer compound for magnet-guided delivery and magnetic resonance imaging
2015年3月17日 Scientific Reports 5 : 9194 doi: 10.1038/srep09194
これまでのがん化学療法における薬剤送達制御は、たとえば、既存の抗がん剤を磁性粒子と結合させたり、ミセルに包み込んだりして、特定の標的へ送達させる方法が中心であった。今回我々は、様々な金属サレン誘導体の中で、特定の鉄サレン(μ-オキソN,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン鉄(Fe(Salen))が、内因性に磁気特性と抗がん活性を持つことを見出した。X線結晶構造解析および構造計算に基づく第一原理計算によっても、この磁気特性は導かれた。同薬剤は、さまざまながん細胞株において、活性酸素の産生を通じてアポトーシスを誘導した。マウス足の腫瘍および尾のメラノーマモデルにおいて、磁石を用いたFe(Salen)の送達は、腫瘍サイズの明らかな減少を引き起こした。またFe(Salen)の蓄積は、核磁気共鳴画像法によって可視化された。つまり、Fe(Salen)は磁気特性をもつ抗がん化合物であり、薬剤送達とイメージングに応用できる。我々は、このような磁性抗がん剤は、診断と治療を融合させるだけでなく、薬剤送達の新たな戦略として、画期的な化学療法の潜在性を秘めていると考えている。
Haruki Eguchi, Masanari Umemura, Reiko Kurotani, Hidenobu Fukumura, Itaru Sato, Jeong-Hwan Kim, Yujiro Hoshino, Jin Lee, Naoyuki Amemiya, Motohiko Sato, Kunio Hirata, David J. Singh, Takatsugu Masuda, Masahiro Yamamoto, Tsutomu Urano, Keiichiro Yoshida, Katsumi Tanigaki, Masaki Yamamoto, Mamoru Sato, Seiichi Inoue, Ichio Aoki & Yoshihiro Ishikawa