再定義されたコドンを利用するタンパク質の安定化
Protein stabilization utilizing a redefined codon
2015年5月18日 Scientific Reports 5 : 9762 doi: 10.1038/srep09762
最近の技術進歩によって、タンパク質に人工のアミノ酸を導入する方法に根本的な改良が加えられ、標準的な20種のアミノ酸に加えて人工アミノ酸をタンパク質中の複数の部位に効率良く取り込ませることができるようになった。このような手法の開発により、生体分子工学の重要課題に新しいアプローチで取り組むことが可能になっている。今回の研究では、体積の大きいハロゲン化アミノ酸をタンパク質中の複数の選択した位置に組み込むことにより、タンパク質の構造の安定性を高められることを明らかになった。すなわち、グルタチオン-S-転移酵素の7か所に3-クロロ-L-チロシンまたは3-ブロモ-L-チロシンを取り込ませることにより、安定性が著しく(それぞれ5.2kcal/molと5.6kcal/mol)上昇した。X線結晶解析から、この大きなハロゲン原子が酵素分子内部のすき間を埋め、隣接するアミノ酸残基との間に通常とは異なる相互作用を生じて安定化させていることがわかった。さらに、工業的な利用の可能性を持つアゾリダクターゼで試みたところ容易に安定化できたことから、この新しいタンパク質安定化機構は非常に単純であり、さまざまなタンパク質に広く応用可能なことが実証された。
Kazumasa Ohtake, Atsushi Yamaguchi, Takahito Mukai, Hiroki Kashimura, Nobutaka Hirano, Mitsuru Haruki, Sosuke Kohashi, Kenji Yamagishi, Kazutaka Murayama, Yuri Tomabechi, Takashi Itagaki, Ryogo Akasaka, Masahito Kawazoe, Chie Takemoto, Mikako Shirouzu, Shigeyuki Yokoyama & Kensaku Sakamoto