ダイコンのゲノムおよび太い根の形成と発達に関する網羅的な遺伝子発現プロファイル
The radish genome and comprehensive gene expression profile of tuberous root formation and development
2015年6月9日 Scientific Reports 5 : 10835 doi: 10.1038/srep10835
植物の貯蔵器官の形成および発達を分子レベルで調節する過程を理解することは、作物育種、食糧生産、および植物進化研究の各領域に寄与すると考えられる。本論文では、ダイコンRaphanus sativus var. hortensis(青首総太系ダイコン)の概要ゲノム配列のアノテーションおよび解析、ならびに根の発達過程におけるトランスクリプトーム解析の結果を示す。複数の次世代シーケンサーのデータを組み合わせたアセンブルにより、遺伝子を5万4357個含む合計383 Mb(N50スキャフォールド:138.17 kb) のダイコンゲノム配列が構築された。シンテニー解析および系統解析の結果、ダイコン属(Raphanus)とアブラナ属(Brassica)との分岐は全ゲノムの三倍化(WGT)と時期が重なると考えられ、WGTがアブラナ類(Brassiceae)作物の多様化を引き起こしたことが示唆された。さらにトランスクリプトーム解析の結果から、炭水化物の代謝に関連する遺伝子の機能および経路が、肥大中の根、とりわけ細胞分裂中の組織で顕著に活性化されていることがわかった。特に、ショ糖合成酵素(SUS1)の発現レベルは、根の肥大速度と相関していた。我々は、辛味成分の合成に関与する遺伝子群および転写因子も同定した。
Yuki Mitsui, Michihiko Shimomura, Kenji Komatsu, Nobukazu Namiki, Mari Shibata-Hatta, Misaki Imai, Yuichi Katayose, Yoshiyuki Mukai, Hiroyuki Kanamori, Kanako Kurita, Tsutomu Kagami, Akihito Wakatsuki, Hajime Ohyanagi, Hiroshi Ikawa, Nobuhiro Minaka, Kunihiro Nakagawa, Yu Shiwa & Takuji Sasaki