ツノガイ(角貝)の死後、週〜月単位の時間スケールで急速に形成される球状炭酸カルシウムコンクリーション
Early post-mortem formation of carbonate concretions around tusk-shells over week-month timescales
2015年9月15日 Scientific Reports 5 : 14123 doi: 10.1038/srep14123
炭酸カルシウム(CaCO3)コンクリーションは、世界中に分布する地質学的年代の堆積岩中に見られる。このような炭酸カルシウムコンクリーションの多くは、球状の孤立した状態で産出し、その中心に保存良好の化石を含むことが多い。これまでその成因は、埋設された海洋堆積物中における無機炭素や有機物の拡散等によると説明されてきた。しかしながら、孤立した球状コンクリーションが、堆積と同時に形成される化学的濃集過程や、コンクリーション中の炭素の供給源など、その成因はほとんど解明されていなかった。本論文では、約2000万年前の堆積岩中から発見された、ツノガイ(ダンツノガイ属)のまわりに形成された球状コンクリーション(直径φ:14-37 mm)をもとに、ツノガイの死後、後数週間から数ヶ月の間に軟体部の腐敗によって生じる脂肪酸の浸出により形成されたことを示す証拠が提示されている。とくにツノガイの口の周りにおける特徴的な炭酸カルシウムの濃集は、ツノガイからの脂肪酸と海水中のカルシウムイオンの急速な反応によって形成されることが明らかとなった。そして、今回のこれら全ての観察事実と地質学的証拠から、海洋性の堆積岩中に見られる、あらゆる種類の孤立した状態で産出する球状の炭酸カルシウムコンクリーションの成長速度を見積もることのできる「拡散成長速度クロスプロット」が提示された。本論文で示す事実は、化石を含まない球状の炭酸カルシウムコンクリーションもまた、一般には保存されにくい非骨格生物の軟体部の腐食にともなう脂肪酸が炭素供給源となって形成された可能性を示唆する。
Hidekazu Yoshida, Atsushi Ujihara, Masayo Minami, Yoshihiro Asahara, Nagayoshi Katsuta, Koshi Yamamoto, Sin-iti Sirono, Ippei Maruyama, Shoji Nishimoto & Richard Metcalfe