魚油摂取は交感神経系を介して褐色脂肪組織および白色脂肪組織におけるUCP1発現量の増加を誘導する
Fish oil intake induces UCP1 upregulation in brown and white adipose tissue via the sympathetic nervous system
2015年12月17日 Scientific Reports 5 : 18013 doi: 10.1038/srep18013
褐色脂肪組織(BAT)は、エネルギー恒常性の調節において重要な役割を果たしており、ヒトの肥満の新たな治療戦略をもたらす可能性がある。BATによる熱産生は、古典的褐色脂肪細胞や異所性ベージュ脂肪細胞のミトコンドリアに存在する脱共役タンパク質1(UCP1)によって調節され、また、交感神経系(SNS)により制御されている。これまでの研究で、魚油摂取がBATにおける脂肪蓄積を抑制し、UCP1の発現を誘導することが示されているが、こうした作用の詳しい機序はまだ明らかになっていない。今回我々は、魚油がエネルギー消費量とSNSに及ぼす作用について調べた。魚油摂取は酸素消費量と直腸温を上昇させ、それと付随して、肩甲骨間BATと鼠蹊部白色脂肪組織(WAT)において褐色脂肪細胞マーカー2種、すなわちUCP1とβ3アドレナリン受容体(β3AR)、また後者においてはベージュ脂肪細胞マーカーの発現量を増加させた。さらに、魚油摂取は、尿中カテコールアミン分泌量と、肩甲骨間BATおよび鼠蹊部WATにおけるノルアドレナリン(NA)ターンオーバー速度を上昇させた。また、TRPV1(transient receptor potential vanilloid 1)をノックアウトしたマウスでは、魚油がSNSを介してエネルギー消費量に及ぼす作用は認められなかった。結論として、魚油摂取はTRPV1-SNSを介して古典的褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞におけるUCP1発現を誘導する可能性があり、それによって脂肪蓄積を低減し脂質代謝を改善することが見込まれる。
Minji Kim, Tsuyoshi Goto, Rina Yu, Kunitoshi Uchida, Makoto Tominaga, Yuriko Kano, Nobuyuki Takahashi & Teruo Kawada