環境温度がTRPV4を通じてミシシッピーワニの性決定に関与する
TRPV4 associates environmental temperature and sex determination in the American alligator
2015年12月18日 Scientific Reports 5 : 18581 doi: 10.1038/srep18581
温度依存型性決定(TSD)は爬虫類に広く見られる性決定様式であり、個体の遺伝的背景ではなく温度感受期(TSP)の孵卵温度によって個体の性が決定される。ミシシッピーワニ(Alligator mississippiensis:別名アメリカアリゲーター)においては、TSPの間で卵を33℃(雄になる温度male producing temperature:MPT)で孵卵すれば雄が生まれ、30℃未満(雌になる温度female producing temperature:FPT)で孵卵すれば雌が生まれる。しかしながら、TSDにおける分子機構の詳細は不明な点が多く、環境温度と性決定を結ぶ分子基盤は未だに解明されていない。本論文において我々はワニのTRPV4オルソログ(AmTRPV4)が性決定温度に近い温度領域で活性化することを示し、薬剤暴露によりAmTRPV4チャネル活性を操作すると雄性分化に関わる遺伝子の発現が影響される事を明らかにした。本研究によって温度受容因子として知られているTRPV4チャネルとTSD制御候補としての繋がりを初めて実証し、脊椎動物におけるTSDの新たな分子基盤を明らかにした。
Ryohei Yatsu, Shinichi Miyagawa, Satomi Kohno, Shigeru Saito, Russell H. Lowers, Yukiko Ogino, Naomi Fukuta, Yoshinao Katsu, Yasuhiko Ohta, Makoto Tominaga, Louis J. Guillette Jr & Taisen Iguchi