脳出血および深部微小出血とcnm陽性ミュータンス菌(Streptococcus mutans)の関連;病院コホート研究
Intracerebral hemorrhage and deep microbleeds associated with cnm-positive Streptococcus mutans; a hospital cohort study
2016年2月5日 Scientific Reports 6 : 20074 doi: 10.1038/srep20074
口腔感染症が脳卒中と関連することが疫学研究で明らかとなっている。これまでに我々は、コラーゲン結合タンパク質Cnmをコードするcnm遺伝子を保有する口腔内のミュータンス菌(Streptococcus mutans)が、実験的に脳出血(ICH)を引き起こすこと、また、我々の地域住民を対象としたコホート研究で脳内微小出血(CMB)と関連することを明らかにしている。そこで今回、急性脳卒中患者100人を被験者として、一病院の単施設観察研究で、cnm陽性ミュータンス菌の役割を調べた。唾液から分離されたミュータンス菌のcnm遺伝子について、PCR技術を用いてスクリーニングを行い、そのコラーゲン結合活性について検討した。CMBはT2* GRE(gradient-recalled echo)MRIで評価した。1人の被験者はインフォームドコンセントを取り下げたので、99人の被験者(男性63人)を解析した。内訳は虚血性脳卒中67人、一過性脳虚血発作5人、ICH 27人である。11人にcnm陽性ミュータンス菌株が見られた。cnm陽性ミュータンス菌の存在は、ICH(虚血性脳卒中に対するオッズ比は4.5;95%信頼区間は1.17-19.1)および深部CMB数の増加〔中央値(IQR)はcnm陽性ミュータンス菌保有者3(2-9)に対し、cnm陽性ミュータンス菌非保有者0(0-1)、p = 0.0002〕と有意に関連した。ミュータンス菌陽性の被験者では、コラーゲン結合活性は深部CMB数と正の相関関係があった(R2 = 0.405;p < 0.0001)。これらの結果は、口腔衛生が脳卒中において重要な役割を果たすことのさらなる証拠になる。
Shuichi Tonomura, Masafumi Ihara, Tomohiro Kawano, Tomotaka Tanaka, Yoshinori Okuno, Satoshi Saito, Robert P. Friedland, Nagato Kuriyama, Ryota Nomura, Yoshiyuki Watanabe, Kazuhiko Nakano, Kazunori Toyoda & Kazuyuki Nagatsuka