ホスファチジルエタノールアミン-N-メチルトランスフェラーゼの発現低下は非肥満患者の非アルコール性脂肪肝炎の発症リスクである
Insufficiency of phosphatidylethanolamine N-methyltransferase is risk for lean non-alcoholic steatohepatitis
2016年2月17日 Scientific Reports 6 : 21721 doi: 10.1038/srep21721
肥満は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の最も重要なリスクであるが、正常なBMI(body mass index)で非肥満NASH患者が存在することが分かっている。今回我々は、ホスファチジルエタノールアミン-N-メチルトランスフェラーゼ(PEMT)の発現低下が非肥満NASHの発症リスクであることを報告する。高脂肪高蔗糖(HFHS)食を摂取させたPemt-/-マウスは食餌性肥満や糖尿病が抑制されたが、顕著な脂肪性肝炎を示し、多数の肝腫瘍が発生した。Pemtは、クラスリン重鎖やp53と複合体を形成して、p53が誘導する転写を抑制し、HFHS食で飼育したPemt-/-マウスは肝細胞の顕著なアポトーシスを示した。そのうえ、Fbxo31(F-box protein 31)やHNF4α(hepatocyte nuclear factor 4α)のDNAメチル化の亢進とmRNA発現の抑制により、サイクリンD1の著明な活性化が引き起こされた。NASH患者の肝組織におけるPEMT mRNAの発現は、単純性脂肪肝の患者より有意に低下しており、PEMT活性の低下した非肥満NASHが異なる疾患単位であることを提唱する。
Atsuko Nakatsuka, Makoto Matsuyama, Satoshi Yamaguchi, Akihiro Katayama, Jun Eguchi, Kazutoshi Murakami, Sanae Teshigawara, Daisuke Ogawa, Nozomu Wada, Tetsuya Yasunaka, Fusao Ikeda, Akinobu Takaki, Eijiro Watanabe & Jun Wada