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Nature Cancer に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。

Article: RNF2の除去は腫瘍免疫微小環境を再プログラム化し、NK細胞とCD4+ T細胞に依存した持続性の抗腫瘍免疫を促す

RNF2 ablation reprograms the tumor-immune microenvironment and stimulates durable NK and CD4+ T-cell-dependent antitumor immunity

doi:10.1038/s43018-021-00263-z

E Yangたちは、in vivoモデルとヒトのがんデータセットを用いて、エピジェネティック調節因子Rnf2が、ナチュラルキラー細胞とCD4+ T細胞における抗腫瘍免疫応答の抑制に役割を担っていることを明らかにした。

Article: EGFR阻害療法中にがん細胞が持続する非確率論的可能性の背景にはIRS1のリン酸化がある

IRS1 phosphorylation underlies the non-stochastic probability of cancer cells to persist during EGFR inhibition therapy

doi:10.1038/s43018-021-00261-1

R Straussmanたちはクローン解析を行い、肝臓がんの細胞集団におけるEGFR療法への薬剤耐性は、継承される連続的な形質であり、IRS1のリン酸化によって決定されることを明らかにした。

Article: CSF2により誘発されるマクロファージの補償的活性化は、CSF1R阻害に対する適応的な抵抗性を促進する

Compensatory CSF2-driven macrophage activation promotes adaptive resistance to CSF1R inhibition in breast-to-brain metastasis

doi:10.1038/s43018-021-00254-0

F Klemmたちは、乳がん脳転移でのCSF1R阻害に対する抵抗性は、マクロファージにおけるCSF2Rb–STAT5軸の補償的活性化により促進され、これはCSF1RとSTAT5を組み合わせて標的化することにより軽減できることを明らかにした。

Article: 急性骨髄性白血病において忍容性と有効性の改善された画期的新薬としての可逆的DNMT1選択的阻害剤の発見

Discovery of a first-in-class reversible DNMT1-selective inhibitor with improved tolerability and efficacy in acute myeloid leukemia

doi:10.1038/s43018-021-00249-x

M Pappalardiたちは、DNMT1に選択的な非共有結合性の強力な阻害剤を特定した。これは臨床で検証された共有結合性の非選択的なDNMT阻害剤に比べて、前臨床の急性骨髄性白血病モデルでの忍容性と有効性が改善されている。

Article: 慢性肝疾患はEnterococcus faecalisの腸でのコロニー形成を可能にして肝臓がんの発生を促進する

Chronic liver disease enables gut Enterococcus faecalis colonization to promote liver carcinogenesis

doi:10.1038/s43018-021-00251-3

水腰英四郎(金沢大学)たちは今回、患者試料と異種移植片を用いた研究で、慢性肝疾患に関連した微生物相がTLR4–Myd88シグナル伝達を誘導することにより、gelE陽性のEnterococcus faecalisを介して肝臓がんの発生を促進することを示している。

Article: ネオアンチゲンの低発現とT細胞の不十分なプライミングが、大腸がんにおける早期免疫回避の根底にある

Low neoantigen expression and poor T-cell priming underlie early immune escape in colorectal cancer

doi:10.1038/s43018-021-00247-z

T Jacksたちは、ネオアンチゲン発現レベルが、腫瘍の発生とプログレッションにおいてT細胞のプライミングと免疫監視に影響を与えることを明らかにし、大腸がんのin vivoモデルを用いて、免疫療法に及ぼす影響を調べている。

Article: Molecular Oncology Almanacにより分子プロファイルを臨床的フレームワークに統合して、前向きプレシジョン・オンコロジー研究につなげる

Integrating molecular profiles into clinical frameworks through the Molecular Oncology Almanac to prospectively guide precision oncology

doi:10.1038/s43018-021-00243-3

E Van Allenたちは、臨床的意思決定の支援と仮説形成プラットフォームの提供を行うために、基本的なナレッジペースを備えたデータ統合フレームワーク開発し、複数の後ろ向きコホートと前向きプレシジョン・オンコロジー臨床試験において、ベンチマーク評価と検証を行なっている。

Review Article: がん種横断的研究を基礎研究から臨床へ移行させる

Moving pan-cancer studies from basic research toward the clinic

doi:10.1038/s43018-021-00250-4

Dingたちは、がん種横断的解析の時代について考察し、これらの解析で得られた基本的知見や、固有の機会と課題、基礎と臨床分野におけるこのようなアプローチの将来を取り上げる。

Article: 2つの標的を持ち、最適な共刺激と代謝適応度を備えたCAR-T細胞は、抗腫瘍活性を増強し、固形腫瘍の免疫回避を阻止する

Dual-targeting CAR-T cells with optimal co-stimulation and metabolic fitness enhance antitumor activity and prevent escape in solid tumors

doi:10.1038/s43018-021-00244-2

Dottiたちは、トランスに作用してCD28と4-1BBを共刺激し、CD3ζ鎖を有するという特徴を持ったキメラ抗原受容体(CAR)の設計を報告する。これはCAR-T細胞の代謝機能と抗腫瘍機能を改善し、2つの抗原を同時に標的とすることで腫瘍の免疫回避を防いだ。

Article: Scgb1a1+クラブ細胞の放射線で活性化される分泌タンパク質は、肺がんでの免疫チェックポイント阻害の有効性を高める

Radiation-activated secretory proteins of Scgb1a1+ club cells increase the efficacy of immune checkpoint blockade in lung cancer

doi:10.1038/s43018-021-00245-1

Mittalたちは、チェックポイント阻害との併用時に放射線療法の治療効果をもたらす機構について研究し、肺に常在する活性化された分泌性クラブ細胞が、抗腫瘍免疫応答の調節に役割を担っていることを明らかにした。

Article: PUS7の標的化はtRNAのシュードウリジン化とグリオブラストーマの腫瘍形成を抑制する

Targeting PUS7 suppresses tRNA pseudouridylation and glioblastoma tumorigenesis

doi:10.1038/s43018-021-00238-0

Shiたちは、PUS7がtRNAシュードウリジン化とコドン特異的翻訳を制御して、グリオブラストーマの腫瘍形成を促進することを明らかにし、グリオブラストーマモデルにおいて腫瘍増殖を遅らせるPUS7阻害剤を発見した。

Article: 胃がんにおける腹膜転移のマルチオミクスプロファイリングから明らかになった分子サブタイプと治療脆弱性

Multi-omic profiling of peritoneal metastases in gastric cancer identifies molecular subtypes and therapeutic vulnerabilities

doi:10.1038/s43018-021-00240-6

田中庸介(国立がん研究センター)たちは、胃がんの腹膜転移について包括的なマルチオミクス特性解析を行い、その分子サブタイプや治療標的となり得る分子を明らかにした。

Article: PIKfyveの標的化によるオートファジーの阻害は、前立腺がんでの免疫チェックポイント阻害に対する応答を増強する

Autophagy inhibition by targeting PIKfyve potentiates response to immune checkpoint blockade in prostate cancer

doi:10.1038/s43018-021-00237-1

Chinnaiyanたちはハイスループット化合物スクリーニングを行い、PIKfyveの阻害が進行性前立腺がんにおける免疫チェックポイント阻害応答を増強するための治療戦略となることを明らかにした。

Review Article: がん治療向上のために工学的に改良されたCAR T細胞

Engineering-enhanced CAR T cells for improved cancer therapy

doi:10.1038/s43018-021-00241-5

Melenhorstたちは、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を用いた治療の現状について総説する。免疫療法のこの領域で達成された急速な進展に加えて、克服すべき課題についても焦点を当てている。

Brief Communication: 成熟した三次リンパ組織構造は、PD-L1の発現とは無関係に固形腫瘍での免疫チェックポイント阻害剤の有効性を予測する

Mature tertiary lymphoid structures predict immune checkpoint inhibitor efficacy in solid tumors independently of PD-L1 expression

doi:10.1038/s43018-021-00232-6

Italianoたちは、複数の腫瘍タイプにわたる3つの独立した患者コホートにおいて病理学的解析を行い、免疫療法に対する応答を予測する上で成熟した三次リンパ組織構造が有用であることを示している。

Article: 去勢を介したIL-8は骨髄浸潤と前立腺がんのプログレッションを促進する

Castration-mediated IL-8 promotes myeloid infiltration and prostate cancer progression

doi:10.1038/s43018-021-00227-3

Drakeたちは、前立腺がんモデルにおける去勢は、IL-8の分泌と免疫抑制性の骨髄由来抑制細胞の移動を促し、この軸の阻害とチェックポイント遮断と組み合わせて行うと、腫瘍プログレッションが抑制されることを実証した。

Article: 化学療法とミスマッチ修復の欠損は協調的に働き、TP53の変異誘発とALLの再発を促す

Chemotherapy and mismatch repair deficiency cooperate to fuel TP53 mutagenesis and ALL relapse

doi:10.1038/s43018-021-00230-8

Zhouたちは、ミスマッチ修復を欠損したALL細胞でのチオプリンによる化学療法が、R248Q TP53変異と、治療中のALL再発や化学療法抵抗性に有利なクローン選択を引き起こすことを示している。

Article: 化学療法は小児前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病において細胞状態をロバストに誘導する

Chemotherapy induces canalization of cell state in childhood B-cell precursor acute lymphoblastic leukemia

doi:10.1038/s43018-021-00219-3

Enverたちは、遺伝的多様性ではなく、エピジェネティックな細胞状態が、小児前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病における導入化学療法中のサブクローン遺伝子型のボトルネック選択を促進することを報告している。

Article: マルチオミクスから明らかになった、慢性リンパ性白血病におけるmTOR-MYC-OXPHOS活性に関連した臨床的意義のある増殖促進

Multi-omics reveals clinically relevant proliferative drive associated with mTOR-MYC-OXPHOS activity in chronic lymphocytic leukemia

doi:10.1038/s43018-021-00216-6

Huberたちは、マルチオミクス解析パイプラインを用いて、CLLの臨床コホートにおける疾患の不均一性と転帰に関連したmTOR、MYC、酸化的リン酸化(OXPHOS)の代謝活性を含む増殖促進の軸を明らかにした。

Article: ネオアジュバントのカボザンチニブとニボルマブは、抗腫瘍免疫を増強して進行性肝細胞がんを局所的に切除可能がんへと変換する

Neoadjuvant cabozantinib and nivolumab convert locally advanced hepatocellular carcinoma into resectable disease with enhanced antitumor immunity

doi:10.1038/s43018-021-00234-4

Yarchoanたちは、肝細胞がん患者に対するカボザンチニブと免疫チェックポイント阻害の単群第I相臨床試験について報告している。彼らは高次元空間解析を行い、応答例で濃縮された免疫特性を明らかにした。

Article: ネオアンチゲンのレパートリーの幅と、HLA-I分子の特異性の間の負のトレードオフが抗腫瘍免疫を形作る

Negative trade-off between neoantigen repertoire breadth and the specificity of HLA-I molecules shapes antitumor immunity

doi:10.1038/s43018-021-00226-4

Manczingerたちは、「無差別性(promiscuity)」がペプチドレパートリーの幅を示すHLA-I対立遺伝子の特徴であることを明らかにした。無差別な対立遺伝子は、免疫寛容性の腫瘍微小環境を助長し、腫瘍免疫監視に対して負に作用する可能性がある。

Review Article: 転移性乳がん治療における腫瘍不均一性の理解と克服

Understanding and overcoming tumor heterogeneity in metastatic breast cancer treatment

doi:10.1038/s43018-021-00229-1

PashaとTurnerは、転移性乳がんの治療抵抗性で腫瘍内不均一性が持つ役割について、最近の知見を総説する。彼らはまた、この課題を打開するための前向きな戦略について検討している。

Article: 抗MAPK標的療法に対する獲得抵抗性は、黒色腫において免疫回避性腫瘍微小環境と免疫療法に対する交差抵抗性をもたらす

Acquired resistance to anti-MAPK targeted therapy confers an immune-evasive tumor microenvironment and cross-resistance to immunotherapy in melanoma

doi:10.1038/s43018-021-00221-9

Obenaufたちは、黒色腫でBRAFやMEK阻害剤に対して獲得された抵抗性は、がん細胞が指示する免疫回避性腫瘍微小環境を助長することにより、免疫チェックポイント遮断に対する交差抵抗性をもたらすことを報告している。

Article: 縦断的電子健康記録にリアルワールドデータを統合する人工知能フレームワークは、がん種横断的な継続的予測を可能にする

An artificial intelligence framework integrating longitudinal electronic health records with real-world data enables continuous pan-cancer prognostication

doi:10.1038/s43018-021-00236-2

Morinたちは、がん種横断的な生存予後を推定するために、10年以上にわたり収集された臨床の電子健康記録や、社会データと人口統計データから継続的な学習を可能にするデータ統合フレームワークを開発した。

Article: トリプトファン代謝はIDH変異型グリオーマにおいて骨髄の動的な免疫抑制性状態を促進する

Tryptophan metabolism drives dynamic immunosuppressive myeloid states in IDH-mutant gliomas

doi:10.1038/s43018-021-00201-z

Plattenたちは、骨髄系細胞によるトリプトファン代謝が、IDH変異型グリオーマにおいて免疫抑制性微小環境に独自に関与することを見出した。マウスの腫瘍モデルでこの経路を抑制すると、免疫抑制状態を打開できる。

Article: RNA結合タンパク質RBMXとRBMXL1によるCBX5の転写制御は、骨髄性白血病のクロマチン状態を維持する

Transcriptional control of CBX5 by the RNA-binding proteins RBMX and RBMXL1 maintains chromatin state in myeloid leukemia

doi:10.1038/s43018-021-00220-w

Kharasたちは、RNA結合タンパク質のRBMX とRBMXL1が、AMLの腫瘍プロモーターであることを明らかにした。これらの因子はクロマチンの凝縮を変化させて、CBX5がコードするヘテロクロマチンタンパク質の転写調節を介して細胞の生存を変化させる。

Article: ClonMapperによる多機能バーコーディングは、腫瘍の進化と治療の期間におけるクローン動態の高分解能研究を可能にする

Multifunctional barcoding with ClonMapper enables high-resolution study of clonal dynamics during tumor evolution and treatment

doi:10.1038/s43018-021-00222-8

Wuたちは今回、単一細胞系譜の追跡とクローン単離を可能にするClonMapperというバーコーディングツールを開発した。彼らは、化学療法中と治療抵抗性が生じる状況において、ClonMapperがヒトCLL細胞のクローン動態の研究に有用であることを実証している。

Review Article: がん治療用PI3K阻害剤の現在と未来

The present and future of PI3K inhibitors for cancer therapy

doi:10.1038/s43018-021-00218-4

Scatiltriたちはこの総説で、効果的な阻害剤開発に関するこれまでの進展や、毒性と治療抵抗性による臨床的な制約など、臨床で固形腫瘍におけるPI3Kを標的化するパラダイムについて取り上げる。

Article: 画期的新薬のポリメラーゼシータ阻害剤は相同組換え欠損腫瘍を選択的に標的とする

A first-in-class polymerase theta inhibitor selectively targets homologous-recombination-deficient tumors

doi:10.1038/s43018-021-00203-x

D’Andreaたちは、抗生物質のノボビオシンがPOLQ特異的阻害剤であり、相同組換え欠損型の乳房腫瘍と卵巣腫瘍(PARP阻害剤抵抗性を獲得したものも含む)に対してin vivoで前臨床活性を持つことを明らかにした。

Article: FTO m6A RNAデメチラーゼの発現低下はEMTを介した上皮腫瘍のプログレッションとWnt阻害剤に対する感受性を促進する

Downregulation of the FTO m6A RNA demethylase promotes EMT-mediated progression of epithelial tumors and sensitivity to Wnt inhibitors

doi:10.1038/s43018-021-00223-7

Fuksたちは、FTO m6A RNAデメチラーゼの発現低下がWnt経路を活性化し、その結果、上皮間葉転換(EMT)を介した上皮腫瘍のプログレッションが進行し、Wnt阻害剤に対する感受性が付与されることを報告している。

Article: 記憶T幹細胞のクローン増殖は、患者における初期の抗白血病応答とCAR T細胞の長期持続性を決定する

Clonal expansion of T memory stem cells determines early anti-leukemic responses and long-term CAR T cell persistence in patients

doi:10.1038/s43018-021-00207-7

Amroliaたちは、CARPALL試験で収集した長期間持続するCAR T細胞のクローン起源が持つ特徴を明らかにした。この試験では、TSCMを介した応答を通じて患者での長期的な抗白血病制御を仲介する低親和性CAR T細胞を用いている。

Article: 体系的なCRISPRスクリーニングにより明らかになった、複製エラーと内因性DNA損傷によって引き起こされたシグネチャーの根底にある変異機構

A systematic CRISPR screen defines mutational mechanisms underpinning signatures caused by replication errors and endogenous DNA damage

doi:10.1038/s43018-021-00200-0

Nik-Zainalたちは、CRISPR–Cas9と全塩基配列解読を用いて、42のヒトDNA修復遺伝子をノックアウトした後の変異パターンについて調べた。彼らはさらに、ミスマッチ修復欠損腫瘍を検出するために臨床で用いるツールの開発と検証も行なっている。

Article: 連続的な単一細胞ゲノミクスから明らかになった、初期段階の乳がん患者における内分泌療法とCDK4/6阻害剤の併用療法進行に伴う治療抵抗性サブクローンの収斂進化

Serial single-cell genomics reveals convergent subclonal evolution of resistance as patients with early-stage breast cancer progress on endocrine plus CDK4/6 therapy

doi:10.1038/s43018-021-00215-7

Bildたちは、単一細胞ゲノム解析によりクローンの収斂進化機構を明らかにし、FELINE試験で内分泌療法とCDK4/6阻害剤を併用した初期乳がん患者における治療抵抗性を説明している。

Perspective: がん治療用PI3K阻害剤の現在と未来

Targeting public neoantigens for cancer immunotherapy

doi:10.1038/s43018-021-00210-y

Zhouたちは、がん免疫療法に向けた共通ネオアンチゲンの標的化における機会と課題について考察している。

Brief Communication: パルボシクリブは、サイクリン依存性キナーゼ経路に変化を起こした進行性脳転移において頭蓋内活性を示す

Palbociclib demonstrates intracranial activity in progressive brain metastases harboring cyclin-dependent kinase pathway alterations

doi:10.1038/s43018-021-00198-5

Brastianosたちは、サイクリン依存性経路に変化を起こした進行性の転移性脳がん患者における、パルボシクリブの頭蓋内臨床効果に関する中間試験結果を報告している。

Article: ULK1の阻害はLKB1変異型肺がんにおける抗原提示の障害を解決し、抗腫瘍免疫を回復させる

ULK1 inhibition overcomes compromised antigen presentation and restores antitumor immunity in LKB1-mutant lung cancer

doi:10.1038/s43018-021-00208-6

Wongたちは、 LKB1欠損型の肺腫瘍はオートファジーの阻害に対して感受性を持ち、オートファジー阻害は障害された抗原提示と抗腫瘍免疫応答を回復させることができることを明らかにした。彼らは、これらの腫瘍に対する治療として、ULK1とPD-1の二重標的化を提唱している。

Article: ASXL1機能獲得変異型白血病における安定化されたBAP1に対するエピジェネティック標的化療法

Epigenetic targeted therapy of stabilized BAP1 in ASXL1 gain-of-function mutated leukemia

doi:10.1038/s43018-021-00199-4

Shilatifardたちは、ASXL1の機能獲得変異が、骨髄系新生物でBAP1の安定化と広範なエピジェネティック変化を促すことを示す。彼らはまた、ASXL1変異型白血病に対する治療可能性を持つ化学的阻害剤の開発も行なっている。

Article: クローン造血と急性骨髄性白血病におけるDNMT3Aのホットスポット変異は、ウイルスを模倣した応答を介して細胞をアザシチジンに感受性にする

Hotspot DNMT3A mutations in clonal hematopoiesis and acute myeloid leukemia sensitize cells to azacytidine via viral mimicry response

doi:10.1038/s43018-021-00213-9

Müller-Tidowたちは、クローン造血や急性骨髄性白血病で見られるDNMT3Aのホットスポット変異は、局所的なDNA脱メチル化やウイルスの模倣、インターフェロンの活性化を介して、がん細胞にDNMT1阻害剤アザシチジンに対する感受性を持たせることを明らかにした。

Article: 好中球の酸化ストレスは肥満に関連した血管機能障害と転移性移動を仲介する

Neutrophil oxidative stress mediates obesity-associated vascular dysfunction and metastatic transmigration

doi:10.1038/s43018-021-00194-9

Quailたちは、好中球由来の活性酸素種(ROS)と好中球細胞外トラップ(NET)は、内皮の接合部接着を変化させることで乳がんの肺への転移を仲介し、血管の透過性とがん細胞の経内皮移動を促すことを示している。

Article: 複数のヒト腫瘍タイプからの既知のネオエピトームに基づいてHLAクラスIネオアンチゲン候補をランク付けするための機械学習モデル

A machine learning model for ranking candidate HLA class I neoantigens based on known neoepitopes from multiple human tumor types

doi:10.1038/s43018-021-00197-6

Robbinsたちは、機械学習によるネオアンチゲン順位付けモデルを開発し、実験的に検証済みのヒト腫瘍のネオアンチゲンを用いて検証した。その結果、将来的な免疫療法で標的化可能なネオアンチゲンの情報資源が得られた。

Review Article: EGFR変異型肺がんにおける治療抵抗性の克服

Overcoming therapy resistance in EGFR-mutant lung cancer

doi:10.1038/s43018-021-00195-8

Passaroたちは、疾患の検出や治療応答の追跡を行うための手法や、抵抗性機構に関する理解の進展、EGFR標的化に対する治療抵抗性の回避を目的とした進行中の臨床試験など、EGFR変異型肺がん治療の最近の進展について考察する。

Article: 悪性疾患患者でのSARS-CoV-2 IgGに対するセロコンバージョンのパターンと抗がん治療との関連性

Patterns of seroconversion for SARS-CoV-2 IgG in patients with malignant disease and association with anticancer therapy

doi:10.1038/s43018-021-00191-y

HalmosとGoelたちは、がん患者でSARS-CoV-2セロコンバージョン率の特性を解析し、 特定のがんタイプや治療手段に関連して、より高いIgG陽性率が見られることを確認した。

Article: ネオアジュバント療法中のHER2陽性乳房腫瘍の空間的プロテオーム特性は応答を予測する

Spatial proteomic characterization of HER2-positive breast tumors through neoadjuvant therapy predicts response

doi:10.1038/s43018-021-00190-z

Curtisたちは、ネオアジュバント療法期間中の縦断的なHER2陽性乳房腫瘍生検に対して、マルチプレックスの空間的プロテオミクス解析を行い、治療下のCD45を単独のバイオマーカーとして用いて病理学的完全奏効を予測する判別法を開発した。

Article: 乳がんの脳転移には脂肪酸合成が必要とされる

Fatty acid synthesis is required for breast cancer brain metastasis

doi:10.1038/s43018-021-00183-y

Ferraroたちは、脂肪酸合成が脳へのがん転移に必要であることを報告する。彼らはまた、脂肪酸合成酵素の抑制によりこの過程を阻害すると、脳での乳がん細胞の転移性増殖が減少することを示している。

Article: 異なるCDK6複合体がCDK4/6の阻害薬や分解誘導薬に対する腫瘍細胞の応答を決定する

Distinct CDK6 complexes determine tumor cell response to CDK4/6 inhibitors and degraders

doi:10.1038/s43018-021-00174-z

Poulikakosたちは、熱安定性のCDK6複合体が、CDK4/6を標的としたがん治療に対する抵抗性を促進することを明らかにした。

Article: EZH2阻害はdsRNA–STING–インターフェロンストレス軸を活性化することで、前立腺がんにおけるPD-1チェックポイント阻害応答を増強する

EZH2 inhibition activates a dsRNA–STING–interferon stress axis that potentiates response to PD-1 checkpoint blockade in prostate cancer

doi:10.1038/s43018-021-00185-w

Ellisたちは、EZH2阻害と抗PD-1の組み合わせが、EZH2が調節するdsRNA–STING–ISG応答シグナル伝達を増加させることで、通常は「免疫学的に冷たい」前立腺がんでの抗腫瘍免疫応答を高められることを示す。

Article: IRENA lncRNAは乳がんにおいて化学療法により極性化された腫瘍抑制マクロファージを腫瘍促進表現型に変換する

The IRENA lncRNA converts chemotherapy-polarized tumor-suppressing macrophages to tumor-promoting phenotypes in breast cancer

doi:10.1038/s43018-021-00196-7

Songたちは、乳がんで化学療法はIRENA lncRNAを誘導し、腫瘍抑制マクロファージを腫瘍促進性表現型に再プログラム化して、化学療法抵抗性を促進することを報告する。

Review Article: 転移性がん治療の新たな戦略

Emerging strategies for treating metastasis

doi:10.1038/s43018-021-00181-0

この総説でKangたちは、転移性がんの治療法開発における最近の進展と課題に加えて、転移性疾患に対する進行中と完了した試験の臨床的意義ついて論じている。

Review Article: RAS誘導性がんの代謝全体像に関する生物学的特性から治療まで

The metabolic landscape of RAS-driven cancers from biology to therapy

doi:10.1038/s43018-021-00184-x

Mukhopadhyay、Vander HeidenおよびMcCormickは、RAS誘導性がんの代謝的全体像、RAS指向性の代謝再プログラム化の効果、および、これらのがんを標的とする治療機会について概説する。

Article: ネットワークに基づくシステム薬理学から明らかになった、LCKとBCL2シグナル伝達における不均一性とT細胞急性リンパ芽球性白血病の治療感受性

Network-based systems pharmacology reveals heterogeneity in LCK and BCL2 signaling and therapeutic sensitivity of T-cell acute lymphoblastic leukemia

doi:10.1038/s43018-020-00167-4

Yangたちは、ネットワークシステム薬理学的手法と臨床データ統合を行い、LCK とBCL2シグナル伝達が、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の小児患者と成人患者におけるダサチニブ奏効性の分子的決定要因であることを明らかにした。

Article: 組織常在型と循環血中の記憶T細胞は、免疫療法に対して持続的奏効を示す黒色腫患者で数年にわたり持続している

Resident and circulating memory T cells persist for years in melanoma patients with durable responses to immunotherapy

doi:10.1038/s43018-021-00180-1

Turkたちは、黒色腫でのチェックポイント阻害に対して例外的な奏効を示した患者を解析し、治療から最長9年たっても、皮膚の組織常在型記憶T細胞と血中のエフェクター記憶T細胞のクロノタイプが検出されることを報告している。

Article: Aurora-A阻害とATRキナーゼ阻害の併用はMYCN増幅型の神経芽細胞腫の退縮を引き起こす

Combined inhibition of Aurora-A and ATR kinases results in regression of MYCN-amplified neuroblastoma

doi:10.1038/s43018-020-00171-8

Eilersたちは、Aurora-AがMYCN誘導型神経芽細胞腫で転写と複製の競合を抑制しており、これはAurora-A阻害剤とATRキナーゼ阻害剤の併用による標的化が可能な脆弱性であることを報告する。

Article: 骨髄のNG2+/Nestin+間葉系幹細胞はTGF-β2を介して播種性腫瘍細胞の休眠を促す

Bone marrow NG2+/Nestin+ mesenchymal stem cells drive DTC dormancy via TGF-β2

doi:10.1038/s43018-021-00179-8

Aguirre-Ghisoたちは、骨髄常在型の間葉系幹細胞は、TGF-βファミリーの因子を介してがんの休眠を促すことを報告している。

Article: XIAPとBCL2の併用阻害は、遺伝的に多様な高悪性度の急性骨髄性白血病において最大の治療効果を促す

Combined inhibition of XIAP and BCL2 drives maximal therapeutic efficacy in genetically diverse aggressive acute myeloid leukemia

doi:10.1038/s43018-021-00177-w

石川文彦(理化学研究所)たちは今回、広範なPDXモデル化と組み合わせたゲノムと薬剤感受性の統合的スクリーニングを行い、XIAPとBCL2に対する併用阻害が、急性骨髄性白血病(AML)の遺伝的変化全体にわたる脆弱性のハブであることを示す。

Article: MSK-IMPACTを用いたがん種横断的な生殖系列の前向き試験から得られた、751人の小児固形腫瘍患者における臨床トランスレーションに関する情報

Prospective pan-cancer germline testing using MSK-IMPACT informs clinical translation in 751 patients with pediatric solid tumors

doi:10.1038/s43018-021-00172-1

Walshたちは、固形腫瘍の小児患者の大規模コホートで前向き塩基配列解読を用いて、がんの素因遺伝子で変異を検出し、下流の臨床ケアを導き出した。

Article: 経路に基づくグリオブラストーマ分類から治療脆弱性を持つミトコンドリアサブタイプが見つかった

Pathway-based classification of glioblastoma uncovers a mitochondrial subtype with therapeutic vulnerabilities

doi:10.1038/s43018-020-00159-4

Garofanoたちは、単一細胞RNA塩基配列解読データを用いて、代謝軸(ミトコンドリアと解糖系/多重代謝の状態)と神経発生軸(増殖/前駆細胞とニューロンの状態)に沿ってグリオブラストーマを分類している。

Article: 発生と損傷応答の転写状態の勾配から明らかになったグリオブラストーマの不均一性の根底にある機能的脆弱性

Gradient of Developmental and Injury Response transcriptional states defines functional vulnerabilities underpinning glioblastoma heterogeneity

doi:10.1038/s43018-020-00154-9

Pughたちは、単一細胞RNA塩基配列解読、CRISPRスクリーニング、機能アッセイを用いて、グリオブラストーマ幹細胞における発生と創傷応答での細胞状態の勾配を明らかにし、グリオブラストーマの起源や治療標的候補に関する洞察を示している。

Article: 単一細胞解析によりYAP/TAZがグリオブラストーマにおける幹細胞性と細胞可塑性の調節因子であることが明らかになった

Single-cell analyses reveal YAP/TAZ as regulators of stemness and cell plasticity in glioblastoma

doi:10.1038/s43018-020-00150-z

Piccoloたちは統合された単一細胞解析を行い、YAP/TAZによるグリオブラストーマ幹細胞分化の調節が、腫瘍を維持する上で中心的な依存性となっていることを明らかにした。

Article: GLS1阻害によるグルタミン依存性の標的化はARID1A不活性型卵巣明細胞腺がんを抑制する

Targeting glutamine dependence through GLS1 inhibition suppresses ARID1A-inactivated clear cell ovarian carcinoma

doi:10.1038/s43018-020-00160-x

Zhangたちは、GLS1の標的化はARID1A変異型の卵巣明細胞腺がんのグルタミン依存性を弱め、その結果として、このがんの増殖が抑制されることを報告している。

Article: LXRαの活性化とRafの抑制は肝臓がんで致死的な脂肪毒性を引き起こす

LXRα activation and Raf inhibition trigger lethal lipotoxicity in liver cancer

doi:10.1038/s43018-020-00168-3

ZenderとDauchたちは、LXRαの活性化とRafの抑制により薬理学的に誘導された脂肪毒性が、肝細胞がんに対する代謝治療戦略となることを実証している。

Article: レクチン経路によって促進される補体の活性化がC3aR依存的な肉腫のプログレッションと免疫抑制を仲介する

Complement activation promoted by the lectin pathway mediates C3aR-dependent sarcoma progression and immunosuppression

doi:10.1038/s43018-021-00173-0

Magriniたちは、補体を欠損したマウス宿主での肉腫の発生と抗腫瘍免疫について調べ、免疫抑制マクロファージの促進におけるC3a–C3aR軸の役割を明らかにした。

Analysis: 少ないデータによる学習でハイスループットスクリーニングから個々の患者へトランスレーションするための薬剤応答の予測モデルを作り出す

Few-shot learning creates predictive models of drug response that translate from high-throughput screens to individual patients

doi:10.1038/s43018-020-00169-2

Maたちは、少ないデータによる学習(few-shot learning)を用いて、細胞株の薬剤抵抗性データに対するニューラルネットワークモデルを訓練し、続いてこれをさまざまな組織や、患者由来の腫瘍細胞や異種移植片などの異なる生物学的状況に対して適用した。

Article: 免疫刺激抗体複合体はロバストな骨髄の活性化と持続的な抗腫瘍免疫を引き起こす

Immune-stimulating antibody conjugates elicit robust myeloid activation and durable antitumor immunity

doi:10.1038/s43018-020-00136-x

Alonsoたちは今回、TLR7/8アゴニストを腫瘍へ特異的に送達できる免疫刺激抗体複合体(ISAC)を開発した。このISACは持続的な抗腫瘍免疫を誘導する。

Article: CDK4/6の阻害はAP-1転写活性を刺激して乳がんのエンハンサー全体像を再プログラム化する

CDK4/6 inhibition reprograms the breast cancer enhancer landscape by stimulating AP-1 transcriptional activity

doi:10.1038/s43018-020-00135-y

CDK4/6の阻害はAP-1因子群を介して広範囲のクロマチン変化を誘導し、これによって主要な生物学的効果や臨床的効果が起こることが、Goelたちによって明らかにされた。

Article: 炎症誘導性の化生性前駆細胞において、変異型Krasはがん原遺伝子エンハンサーネットワークを利用して膵臓がんのイニシエーションを引き起こす

Mutant Kras co-opts a proto-oncogenic enhancer network in inflammation-induced metaplastic progenitor cells to initiate pancreatic cancer

doi:10.1038/s43018-020-00134-z

Davidたちは、炎症によって活性化される前駆細胞由来のエンハンサーネットワークが、膵臓がんのイニシエーション時に変異型Krasによって乗っ取られることを明らかにした。

Article: 免疫抑制性マクロファージの標的化は<>BRCA1関連トリプルネガティブ乳がんのPARP阻害剤抵抗性を打開する

Targeting immunosuppressive macrophages overcomes PARP inhibitor resistance in BRCA1-associated triple-negative breast cancer

doi:10.1038/s43018-020-00148-7

Mehtaたちは今回、PARPを阻害するとCSF1R依存的な免疫抑制性マクロファージが誘導され、このマクロファージを阻害すると、トリプルネガティブ乳がんでのPARP阻害剤の有効性が回復し、CD8+ T細胞依存的な抗腫瘍免疫が増強されることを示している。

Article: PAK4を標的化して血管微小環境を再プログラム化し、グリオブラストーマに対するCAR-T免疫療法を改善する

Targeting PAK4 to reprogram the vascular microenvironment and improve CAR-T immunotherapy for glioblastoma

doi:10.1038/s43018-020-00147-8

PAK4の阻害が腫瘍血管微小環境を正常化し、グリオブラストーマをCAR-T細胞免疫療法に対して感受性にすることを、Fanたちが報告している。

Article: FYN–TRAF3IP2はNF-κBシグナル伝達誘導性の末梢性T細胞リンパ腫を誘発する

FYN–TRAF3IP2 induces NF-κB signaling-driven peripheral T-cell lymphoma

doi:10.1038/s43018-020-00161-w

Ferrandoたちは今回、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫と末梢性T細胞リンパ腫を促進する頻発性の発がん性遺伝子融合として、FYN–TRAF3IP2を明らかにした。この融合遺伝子は他に特定されないNF-κBシグナル伝達の活性化を介して働く。

Article: スーパーエンハンサーは神経芽細胞腫における調節性サブタイプと細胞アイデンティティーを規定する

Super enhancers define regulatory subtypes and cell identity in neuroblastoma

doi:10.1038/s43018-020-00145-w

Westermannたちは、患者の原発性腫瘍試料中のスーパーエンハンサーのプロファイルに基づいて、神経芽細胞腫の4つのサブタイプを明らかにした。これらはそれぞれ異なる臨床転帰や細胞アイデンティティーの特性に関連づけることができた。

Review Article: 低中所得国において肺がんスクリーニングの低線量コンピュータ断層撮影を行う上での課題

The challenges of implementing low-dose computed tomography for lung cancer screening in low- and middle-income countries

doi:10.1038/s43018-020-00142-z

Edelman Saulたちは、低中所得国で低線量コンピュータ断層撮影スクリーニングを行うための課題と戦略について総説する。

Article: エフェクターT細胞に対するIL-2シグナル伝達を維持するCD25-Treg細胞枯渇抗体はエフェクター活性と抗腫瘍免疫を増強する

CD25-Treg-depleting antibodies preserving IL-2 signaling on effector T cells enhance effector activation and antitumor immunity

doi:10.1038/s43018-020-00133-0

Quezadaたちは今回、改良型の抗CD25抗体を開発した。この抗体はIL-2シグナル伝達を持続させ、特異的かつ効率的にTreg細胞を枯渇させて、単剤の抗腫瘍免疫と免疫療法を強化する。

Article: 変異全体像はヒト白血球抗原B44スーパータイプを有する非小細胞肺がん患者での免疫療法の結果に影響を与える

Mutational landscape influences immunotherapy outcomes among patients with non-small-cell lung cancer with human leukocyte antigen supertype B44

doi:10.1038/s43018-020-00140-1

Garonたちは、黒色腫ではヒト白血球抗原(HLA)B44スーパータイプは免疫チェックポイント阻害応答と関連するが、非小細胞肺がん(NSCLC)では関連しない原因は、ネオエピトープのHLAの結合に影響する異なる変異特性と関係があることを実証している。

Article: 急性骨髄性白血病幹細胞におけるベネトクラクス抵抗性の根底にある脂肪酸代謝

Fatty acid metabolism underlies venetoclax resistance in acute myeloid leukemia stem cells

doi:10.1038/s43018-020-00126-z

Jordanたちは、ベネトクラクスとアザシチジンの併用に対する内因性と獲得性の抵抗性におけるAML幹細胞での脂質酸代謝増加の役割を明らかにしている。彼らはまた、脂肪酸酸化の阻害によって、細胞を再び感受性にできることを示す。

Article: 免疫チェックポイント療法に対してBRCA1変異とBRCA2変異が示す異なる影響

Mutations in BRCA1 and BRCA2 differentially affect the tumor microenvironment and response to checkpoint blockade immunotherapy

doi:10.1038/s43018-020-00139-8

BRCA1変異とBRCA2変異は、それぞれ異なる変異ゲノム全体像をもたらし、腫瘍免疫微小環境と免疫チェックポイント療法応答に対して異なる影響を引き起こす。

Article: Flt3リガンドは樹状細胞の部分集団を増加させることで抗DEC-205-NY-ESO-1ワクチンに対する免疫応答を増強する

Flt3 ligand augments immune responses to anti-DEC-205-NY-ESO-1 vaccine through expansion of dendritic cell subsets

doi:10.1038/s43018-020-00143-y

Bhardwajたちは、黒色腫抗原NY-ESO-1に対するDCを標的とするワクチンの無作為化第II相試験において、Flt3リガンドを治療戦略に追加すると、樹状細胞(DC)集団が効率よく増加し、T細胞応答が高まることを報告している。

Perspective: 転移性前立腺がんにおけるプレシジョン・メディシンの加速

Accelerating precision medicine in metastatic prostate cancer

doi:10.1038/s43018-020-00141-0

Beltranたちは、転移性前立腺がんの治療における取り組みや、プレシジョン・オンコロジーを加速してこの設定で治療と臨床決定を改良する戦略について考察する。

Article: CD1dとNKT T細胞受容体を標的とする単一ドメイン二重特異性抗体は強力な抗腫瘍応答を誘導する

A single-domain bispecific antibody targeting CD1d and the NKT T-cell receptor induces a potent antitumor response

doi:10.1038/s43018-020-00111-6

Rossjohnとvan der Vlietたちは、特異的な抗腫瘍免疫サブセットを誘導するCD1dとNKT T細胞受容体抗原に結合する複合単一ドメイン抗体を開発した。

Article: 増殖の履歴はB細胞腫瘍のDNAメチロームを形作り臨床転帰を予測する

The proliferative history shapes the DNA methylome of B-cell tumors and predicts clinical outcome

doi:10.1038/s43018-020-00131-2

Martin-Suberoたちは、B細胞腫瘍とその起源となった正常細胞におけるDNAメチル化パターンを解析し、また、予後と関連するメチル化に基づく有糸分裂時計であるepiCMITを開発した。

Article: 限局性前立腺がんのMYCとRASの共活性化シグネチャーは、骨転移と去勢抵抗性を促進する

A MYC and RAS co-activation signature in localized prostate cancer drives bone metastasis and castration resistance

doi:10.1038/s43018-020-00125-0

Abate-Shenたちは、細胞系譜の追跡と分子プロファイリングを用いて、限局性前立腺がんにおける転移と去勢抵抗性を予測するRasとMycの共活性化シグネチャーを特定した。

Resource: ヒトすい臓がんにおける腫瘍と末梢血に関する免疫全体像の多様なマッピング

Multimodal mapping of the tumor and peripheral blood immune landscape in human pancreatic cancer

doi:10.1038/s43018-020-00121-4

Steeleたちは今回、単一細胞RNA塩基配列解読、CyTOF、マルチプレックス免疫組織化学を用いて、すい臓がんや隣接組織、血液の免疫全体像について調べ、患者における免疫チェックポイント受容体の不均一な発現を観察した。

Resource: 再発性の急性リンパ芽球性白血病における化学療法抵抗性機構に関する変異と機能の遺伝学的マッピング

Mutational and functional genetics mapping of chemotherapy resistance mechanisms in relapsed acute lymphoblastic leukemia

doi:10.1038/s43018-020-00124-1

Ferrandoたちは今回、診断時と再発時の対応付けした急性リンパ性白血病の全ゲノム塩基配列解読により解析し、in vitroゲノム規模CRISPRスクリーニングを行って、化学療法抵抗性と関連した変化を調べている。

Review Article: COVID-19の免疫腫瘍学的課題

The immuno-oncological challenge of COVID-19

doi:10.1038/s43018-020-00122-3

Zitvogelたちはこの総説で、患者のリスクと予後、免疫応答、そして取り得る治療法の観点から、がんとCOVID-19の相互作用について考察する。

Article: SARS-CoV-2に感染したがん患者の転帰を決定する要因:ギュスターブ・ルーシー・コホートからの結果

Determinants of the outcomes of patients with cancer infected with SARS-CoV-2: results from the Gustave Roussy cohort

doi:10.1038/s43018-020-00120-5

Barlesiたちは、ギュスターブ・ルーシーがんセンターで対応を受けたがん患者における、COVID-19の重篤な転帰の決定要因について報告している。

Article: 加齢に関連したミトコンドリアDNA変異は、腸の腫瘍形成の加速に関与する代謝リモデリングを引き起こす

Age-associated mitochondrial DNA mutations cause metabolic remodeling that contributes to accelerated intestinal tumorigenesis

doi:10.1038/s43018-020-00112-5

Smithたちは、加齢に関連したミトコンドリアDNAの変異は、酸化的リン酸化の異常を引き起こすことを報告している。この変化は代謝の再配線につながり、結果として、大腸がん発生の加速に関与する。

Article: 注射可能なハイドロゲルに封入されたGD2特異的CAR T細胞は、網膜芽細胞腫を抑制し、視力を維持する

GD2-specific CAR T cells encapsulated in an injectable hydrogel control retinoblastoma and preserve vision

doi:10.1038/s43018-020-00119-y

Hanたちは、GD2に対するCAR T細胞を開発した。GD2は網膜芽細胞腫で高発現する分子であり、このCAR T細胞とIL-15をハイドロゲル送達システムにおいて併用すると、マウスの網膜芽細胞腫に対する有効性が認められた。

Article: 急性リンパ芽球性白血病の中枢神経系微小環境への代謝適応は、ステアロイル-CoAデサチュラーゼに依存する

Metabolic adaptation of acute lymphoblastic leukemia to the central nervous system microenvironment depends on stearoyl-CoA desaturase

doi:10.1038/s43018-020-00115-2

Gottliebたちは今回、ステアロイル-CoAデサチュラーゼが急性リンパ芽球性白血病の中枢神経系微小環境への代謝的適応を促進することを明らかにした。この結果は、このがんが持つ潜在的な部位特異的代謝脆弱性を示している。

Article: FoxM1の機能不全はEct2–RhoA–mDia1シグナル伝達を過剰活性化し、がんを促進する

FoxM1 insufficiency hyperactivates Ect2–RhoA–mDia1 signaling to drive cancer

doi:10.1038/s43018-020-00116-1

Limzerwalaたちは、FoxM1の機能不全がRhoAの調節を介して染色体分離エラーを引き起こし、さまざまな組織タイプにわたって腫瘍プログレッションの原因となることを示す。

Review Article: 明らかになりつつある、がんのノンコーディングゲノム

Illuminating the noncoding genome in cancer

doi:10.1038/s43018-020-00114-3

ZhangとMeyersonは、がんでのノンコーディング変異を研究するための方法論やモデル、データセットの目覚ましい進展、疾患におけるそれらの役割に関する新たな洞察、そしてトランスレーションの可能性を総説する。

Article: ペムブロリズマブ治療を受けた固形腫瘍患者における、予測バイオマーカーとしての循環血中腫瘍DNAの個別化解析

Personalized circulating tumor DNA analysis as a predictive biomarker in solid tumor patients treated with pembrolizumab

doi:10.1038/s43018-020-0096-5

Siuたちは、個別化した循環血中腫瘍DNA(ctDNA)アッセイを用い、ペムブロリズマブ治療を受けた複数の固形腫瘍タイプの患者で行われた第II相臨床試験において、縦断的ctDNA解析が予測に有用であることを示す。

Article: 多機能性の腫瘍溶解性ナノ粒子は、自己複製するIL-12 RNAを送達して定着した腫瘍を消滅させ、全身免疫をプライミングする

Multifunctional oncolytic nanoparticles deliver self-replicating IL-12 RNA to eliminate established tumors and prime systemic immunity

doi:10.1038/s43018-020-0095-6

Irvineたちは、自己複製するインターロイキン12のRNAを含んだ脂質ナノ粒子プラットフォームについて報告している。この粒子は免疫原性細胞死の促進とCD8+ T細胞のプライミングを介して、in vivoで治療効果を示した。

Article: ASS1を発現する腫瘍におけるプリン合成の標的化は、免疫チェックポイント阻害因子に対する応答を増強する

Targeting purine synthesis in ASS1-expressing tumors enhances the response to immune checkpoint inhibitors

doi:10.1038/s43018-020-0106-7

Erezたちは、グルコース欠乏下でのアルギニノコハク酸合成酵素(ASS1)の発現上昇は、糖新生とプリン合成増加を引き起こし、ASS1の標的化は、免疫チェックポイント阻害に対する応答を増強できることを明らかにした。

Article: ARID1A/ARID1Bの二重欠失は、急速な発がんを引き起こし、BAF複合体の破壊的な再分布を引き起こす

Dual ARID1A/ARID1B loss leads to rapid carcinogenesis and disruptive redistribution of BAF complexes

doi:10.1038/s43018-020-00109-0

ARID1A/Bの欠失は、発がん性BAF複合体の再分布を引き起こす。Zhuたちは、ARID1AとARID1Bを同時に欠失させると、発がんを誘導し、残りの因子からなるcBAFサブ複合体の破壊的な再分布を引き起こし、pBAF機能を障害することを明らかにした。

Article: オートファジーはT細胞免疫応答を抑制して、高い変異負荷を持つ腫瘍の増殖を促進する

Autophagy promotes growth of tumors with high mutational burden by inhibiting a T-cell immune response

doi:10.1038/s43018-020-00110-7

Whiteたちは、T細胞依存的免疫応答の抑制において宿主オートファジーが持つ、変異負荷の高い腫瘍に特異的な役割を明らかにした。

Review Article: がん生物学とプレシジョン・メディシンに対するオルガノイドの応用

Applications of organoids for cancer biology and precision medicine

doi:10.1038/s43018-020-0102-y

がん生物学の研究や、臨床トランスレーションやプレシジョン・メディシン(精密医療)の達成に向けたオルガノイドの応用について、Kuoたちが総説している。

Review Article: 腫瘍学におけるクリニカルシーケンシングによる発見

Discovery through clinical sequencing in oncology

doi:10.1038/s43018-020-0100-0

腫瘍の分子特性からは、がん治療のための情報が得られる。臨床ゲノムスクリーニングからの前向きデータを用いた、科学的およびトランスレーショナルな発見の進展、機会、挑戦について、Taylorたちが総説する。

Brief Communication: イタリアのヴェネト地域におけるSARS-CoV-2の感染:がん患者での有害転帰

SARS-CoV-2 infection in the Italian Veneto region: adverse outcomes in patients with cancer

doi:10.1038/s43018-020-0104-9

Ruggeたちの報告によれば、がん患者(特に高齢男性)は、SARS-CoV-2感染の有害転帰リスクの有意な上昇に直面している。

Article: 臨床で実行可能な、がん種横断的な画像ベースによる遺伝学的変化の検出

Pan-cancer image-based detection of clinically actionable genetic alterations

doi:10.1038/s43018-020-0087-6

KatherたちとGerstungたちの2つのグループによる研究で、がん種横断的なデジタル病理スライドから、広範な分子的変化を予測するワークフローが開発された。

Article: がん種横断的なコンピューター組織病理学解析で、変異、腫瘍組成、予後予測を示す

Pan-cancer computational histopathology reveals mutations, tumor composition and prognosis

doi:10.1038/s43018-020-0085-8

KatherたちとGerstungたちの2つのグループによる研究で、がん種横断的なデジタル病理スライドから、広範な分子的変化を予測するワークフローが開発された。

Article: 脱ユビキチン化酵素USP25は大腸炎症と細菌感染に加担し、大腸がんを促進する

The deubiquitinase USP25 supports colonic inflammation and bacterial infection and promotes colorectal cancer

doi:10.1038/s43018-020-0089-4

Zhongたちは、脱ユビキチン化酵素USP25は、腸の炎症と腸内細菌を制御して大腸がんの重要な調節因子として働くことを見出した。

Article: 患者試料の統合的解析から特定された、急性骨髄性白血病におけるベネトクラクスの奏効性と併用戦略に対するバイオマーカー

Integrated analysis of patient samples identifies biomarkers for venetoclax efficacy and combination strategies in acute myeloid leukemia

doi:10.1038/s43018-020-0103-x

Zhangたちは、BCL2阻害剤であるベネトクラクス(急性骨髄性白血病の治療に承認された)に曝露された患者試料のデータを解析し、治療抵抗性とMCL1阻害との合成致死性が生じる様式を明らかにした。

Article: ソニックヘッジホッグはDNA複製を加速させて、髄芽腫におけるがんイニシエーションを促進する複製ストレスを引き起こす

Sonic hedgehog accelerates DNA replication to cause replication stress promoting cancer initiation in medulloblastoma

doi:10.1038/s43018-020-0094-7

Charronたちは、ソニックヘッジホッグにより誘導される複製ストレスの機構について報告している。これはCdc7依存的な複製起点の発火を介して起こり、髄芽腫の腫瘍発生に関与する。

Perspective: 播種性腫瘍細胞の休眠に対する現在のパラダイムと課題

The current paradigm and challenges ahead for the dormancy of disseminated tumor cells

doi:10.1038/s43018-020-0088-5

休眠中のがんの監視や標的化に対する課題や機会をはじめとする、がんの休眠に関する研究分野の現状について、Aguirre-Ghisoたちが考察している。

Article: 樹状細胞によるPD-L1の発現は、がんにおけるT細胞免疫の主要な調節因子である

PD-L1 expression by dendritic cells is a key regulator of T-cell immunity in cancer

doi:10.1038/s43018-020-0075-x

Mellmanたちは、樹状細胞が腫瘍微小環境におけるPD-L1の主要な供給源となっており、その結果として、CD8+ T細胞による腫瘍浸潤と抗腫瘍応答が制限されることを示している。

Article: 乳がんのプログレッションに伴うがん関連繊維芽細胞(CAF)の組成の変化は、S100A4+とPDPN+のCAF比を臨床転帰に結びつける

Cancer-associated fibroblast compositions change with breast cancer progression linking the ratio of S100A4+ and PDPN+ CAFs to clinical outcome

doi:10.1038/s43018-020-0082-y

Scherz-Shouvalたちは、乳がんのプログレッション中に起こる、がん関連繊維芽細胞(CAF)亜集団の動的変化の特性を解析し、S100A4+ CAFとPDPN+ CAFサブセットの比が、臨床転帰と関連することを見出した。

Article: ナチュラルキラー細胞の免疫監視に対する抵抗性は、ポリクローナル転移に選択的な利益をもたらす

Resistance to natural killer cell immunosurveillance confers a selective advantage to polyclonal metastasis

doi:10.1038/s43018-020-0068-9

Zhangたちは、循環血中の腫瘍細胞の多細胞クラスターは、ナチュラルキラー(NK)リガンドの発現を変化させることで、NK細胞による殺傷に対する抵抗性を高め、結果としてポリクローナル転移を起こすことを報告している。

Article: TNF阻害を用いた腸炎症の標的化による微生物相の修正は、大腸がんの発生を軽減する

Amending microbiota by targeting intestinal inflammation with TNF blockade attenuates development of colorectal cancer

doi:10.1038/s43018-020-0078-7

Jobinたちは、TNF療法を用いた炎症の標的化は、大腸炎関連大腸がんのマウスモデルにおける微生物相の発がん活性に対して予防効果を持つことを明らかにした。

Article: アルドラーゼBはG6PDとペントースリン酸経路を阻害して肝細胞がんの発生を抑制する

Aldolase B suppresses hepatocellular carcinogenesis by inhibiting G6PD and pentose phosphate pathways

doi:10.1038/s43018-020-0086-7

Yinたちは、肝臓のアルドラーゼBは、G6PDの阻害を介した腫瘍の代謝再プログラム化の制御によって肝細胞がんを抑制することを示している。

Perspective: 理論から現実へ、がん進化の動態を描き出す

Delineating the evolutionary dynamics of cancer from theory to reality

doi:10.1038/s43018-020-0079-6

BozicとWuは、前がん状態から悪性がんへのプログレッションまでの腫瘍進化におけるさまざまな段階や、治療への応答が、定量的な数理モデルによってどのように明らかにされるかを考察している。

Article: Keap1変異は肺腺がんをSlc33a1依存的にする

Keap1 mutation renders lung adenocarcinomas dependent on Slc33a1

doi:10.1038/s43018-020-0071-1

肺がんの前臨床モデルにおいて機能検証後のドラッガブルなCRISPR-Cas9によるゲノムスクリーニングから、Slc33a1Keap1変異特異的な標的化可能な依存性として明らかになった。

Article: p38αストレス活性化タンパク質キナーゼの活性化は、肺の前転移ニッチ形成を促す

Activation of p38α stress-activated protein kinase drives the formation of the pre-metastatic niche in the lungs

doi:10.1038/s43018-020-0064-0

Guiたちは、腫瘍細胞に由来する因子が肺の繊維芽細胞でp38αの活性化を誘導し、これがI型インターフェロンシグナル伝達の不活性化や、マトリックスのリモデリング、好中球の浸潤を引き起こし、その結果として転移を受け入れるニッチが作られることを報告する。

Article: Zeb2は微生物相依存的な浸潤性の大腸がんを促進する

Zeb2 drives invasive and microbiota-dependent colon carcinoma

doi:10.1038/s43018-020-0070-2

van Looたちは、上皮間葉転換の調節因子であるZeb2が失われると、炎症や腸管透過性の上昇、大腸がん発生につながり、これは常在性の腸マイクロバイオームにより増強されることを報告している。

Article: マルチオミクス解析により、皮膚黒色腫において有意に変異した遺伝子が特定され、DDX3Xが性特異的腫瘍抑制因子であることが明らかになった

Multi-omic analysis reveals significantly mutated genes and DDX3X as a sex-specific tumor suppressor in cutaneous melanoma

doi:10.1038/s43018-020-0077-8

Alkallasたちは、ゲノム、トランスクリプトーム、DNAメチル化のデータを統合的に解析し、皮膚黒色腫の大規模コホートにおいて、RNAヘリカーゼDDX3Xをはじめとする新しい有意に変異した遺伝子(SMG)を見出した。

Article: セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ-2(SHMT2)は、エピジェネティックな腫瘍抑制のサイレンシングを介してリンパ腫発生を開始させる

The serine hydroxymethyltransferase-2 (SHMT2) initiates lymphoma development through epigenetic tumor suppressor silencing

doi:10.1038/s43018-020-0080-0

Parsaたちは、BCL2と代謝酵素SHMT2活性の上昇の連携によるリンパ腫のイニシエーション機構を報告している。この過程でSHMT2 はDNAとヒストンメチル化を変化させる。

Review Article: ゲノミクスに基づくがん治療の前臨床開発

Genomics-guided pre-clinical development of cancer therapies

doi:10.1038/s43018-020-0067-x

Garnettたちは今回、ゲノミクスに基づくがん医療の前臨床開発を支える原理や、その効果を制限する課題、およびその利用を改良し拡張するためのCRISPRによるスクリーニングなどの新たな機会について総説する。

Article: 単一細胞RNA塩基配列解読により、多発性骨髄腫の前駆段階では免疫微小環境の障害が起きていることが明らかになった

Single-cell RNA sequencing reveals compromised immune microenvironment in precursor stages of multiple myeloma

doi:10.1038/s43018-020-0053-3

GhobrialとGetzたちは、多発性骨髄腫のプログレッションに関連した、腫瘍免疫微小環境における変化の特性を解析した。

Article: c-Relはがん免疫療法に対する骨髄性のチェックポイントである

c-Rel is a myeloid checkpoint for cancer immunotherapy

doi:10.1038/s43018-020-0061-3

NF-κB転写因子ファミリーに属するc-Relが抗腫瘍免疫として働くことを、Liたちが報告している。c-Relは骨髄由来免疫抑制細胞の産生を促進し、骨髄細胞でc-Relを阻害すると腫瘍増殖が抑制された。

Article: 乳がん組織と正常な乳房組織における加齢と相関したタンパク質や転写産物の発現は、宿主の内分泌作用により支配されている

Age-correlated protein and transcript expression in breast cancer and normal breast tissues is dominated by host endocrine effects

doi:10.1038/s43018-020-0060-4

Aparicioたちは、加齢関連の内分泌作用による影響が推測される乳がんデータセットにおいて、遺伝子発現の変化を特定した。この結果は、患者の年齢が、特定のバイオマーカーによる予後予測の可能性に影響し得ることを示唆している。

Article: eIF5Bは肺がんにおける統合的ストレス応答依存的なPD-L1の翻訳を促す

eIF5B drives integrated stress response-dependent translation of PD-L1 in lung cancer

doi:10.1038/s43018-020-0056-0

O’Donnellたちは、非小細胞肺がん細胞において、ヘム産生の障害による統合的ストレス応答の活性化が、eIF5B依存的な様式でPD-L1翻訳の亢進を引き起こすことを報告している。

Resource: T細胞分化の全体像は肺がんの腫瘍変異により形作られる

The T cell differentiation landscape is shaped by tumour mutations in lung cancer

doi:10.1038/s43018-020-0066-y

Ghoraniたちはマルチオミクス手法を用いて、非小細胞肺がんにおけるCD4 T細胞とCD8 T細胞の亜集団の分化に腫瘍変異量が及ぼす影響の特徴を解析した。

Article: PTENESR1の変異はアルペリシブへの臨床抵抗性とアロマターゼ阻害剤を促進する

Alterations in PTEN and ESR1 promote clinical resistance to alpelisib plus aromatase inhibitors

doi:10.1038/s43018-020-0047-1

以前のホルモン受容体陽性転移性乳がんに対するPI3K阻害剤とアロマターゼ阻害剤の第I/II相試験では抵抗性が認められた。Chandarlapatyたちは今回、この抵抗性に関連するゲノム変異を特定するためにctDNAの縦断的試料を用いて、PTENESR1にゲノム変異を特定した。

Article: EGFR阻害は抗ウイルスシグナル伝達経路を借用して、肺がんにおける適応応答を引き起こす

EGFR inhibition triggers an adaptive response by co-opting antiviral signaling pathways in lung cancer

doi:10.1038/s43018-020-0048-0

Habibたちは、EGFR阻害は非小細胞肺がんモデルにおいてI型IFNシグナル伝達を誘発することを明らかにし、EGFR阻害とIFN中和抗体の併用が有望な治療法になる可能性を示している。

Article: in vivoのゲノム規模CRISPRスクリーニングから、RNA結合タンパク質Staufen2が骨髄性白血病の主要調節因子であることが明らかになった

An in vivo genome-wide CRISPR screen identifies the RNA-binding protein Staufen2 as a key regulator of myeloid leukemia

doi:10.1038/s43018-020-0054-2

Reyaたちは、in vivo CRISPRスクリーニングを行い、RNA結合タンパク質であるStau2が、骨髄性白血病の増殖とプログレッションの主要な調節因子であることを明らかにした。

Article: 単一細胞解析が明らかにする、小細胞肺がんにおける治療抵抗性が生じた後の腫瘍内不均一性の上昇

Single-cell analyses reveal increased intratumoral heterogeneity after the onset of therapy resistance in small-cell lung cancer

doi:10.1038/s43018-019-0020-z

Stewartたちは、小細胞肺がん患者の循環血中腫瘍細胞に由来する異種移植片を用いて、治療抵抗性の開始後に見られる腫瘍の不均一性について調べている。

Resource: 小細胞肺がんCDXモデルのバイオバンクにより、腫瘍間および腫瘍内の表現型不均一性が解明された

A biobank of small cell lung cancer CDX models elucidates inter- and intratumoral phenotypic heterogeneity

doi:10.1038/s43018-020-0046-2

Simpsonたちは、小細胞肺がん(SCLC)38例の循環血中腫瘍細胞に由来する外植片の生体試料バイオバンクと、これらを用いた腫瘍不均一性の研究について報告している。これらのモデルは、SCLCの生物学的性質やプログレッション、治療応答性に関するさらなる研究に利用可能である。

Resource: 進行がん患者のがん種横断的解析により、治療とゲノム全体像の間に見られる相互作用を明らかにする

Pan-cancer analysis of advanced patient tumors reveals interactions between therapy and genomic landscapes

doi:10.1038/s43018-020-0050-6

Marraたちは、POG570コホートでのがん種横断的な、全ゲノム、トランスクリプトームおよび臨床のデータセットについて報告している。これらのデータから治療後の進行がん患者における分子的相互作用が明らかにされた。

Review Article: 腫瘍学における循環血中腫瘍DNAと液体生検

Circulating tumor DNA and liquid biopsy in oncology

doi:10.1038/s43018-020-0043-5

循環血中に含まれる腫瘍DNAの評価は、腫瘍学研究における強力な技術として台頭してきた。L Siuたちは今回、液体生検の将来的な活用について総説し、臨床利用の確立に向けた臨床試験設計にハイライトを当てている。

Article: CD8+ T細胞が分泌したIFN-γによるバイスタンダー腫瘍細胞の遠距離調節

Long-distance modulation of bystander tumor cells by CD8+ T-cell-secreted IFN-γ

doi:10.1038/s43018-020-0036-4

少数の腫瘍細胞によるIFN-γの感知が、腫瘍の大部分にわたってIFN-γ感知と応答の伝播を引き起こすことを、SchumacherたちとBoussoたちによる2報の論文が示している。

Article: バイスタンダーIFN-γ活性は、腫瘍微小環境を変化させる広範囲で持続的なサイトカインシグナル伝達を促進する

Bystander IFN-γ activity promotes widespread and sustained cytokine signaling altering the tumor microenvironment

doi:10.1038/s43018-020-0038-2

少数の腫瘍細胞によるIFN-γの感知が、腫瘍の大部分にわたってIFN-γ感知と応答の伝播を引き起こすことを、SchumacherたちとBoussoたちによる2報の論文が示している。

Article: BAXの低分子アロステリック阻害剤はドキソルビシンによって誘導される心筋症を保護する

A small-molecule allosteric inhibitor of BAX protects against doxorubicin-induced cardiomyopathy

doi:10.1038/s43018-020-0039-1

Amgalanたちの研究で、ドキソルビシンの抗腫瘍作用には影響を与えずに化学療法誘導性の心筋症を防ぐ治療標的としてBAXが見つかった。

Article: 統合的ゲノム解析から明らかになった、急性リンパ芽球性白血病におけるグルココルチコイド抵抗性機構

Integrative genomic analyses reveal mechanisms of glucocorticoid resistance in acute lymphoblastic leukemia

doi:10.1038/s43018-020-0037-3

Aurtyたちは、複数のゲノムに対する統合的研究手法において、ゲノム規模のゲノム解析、エピジェネティック解析、トランスクリプトーム解析を組み合わせて、急性リンパ芽球性白血病におけるグルココルチコイド抵抗性の機構を特定した。

Article: α-ケトグルタル酸はWntシグナル伝達を弱め、大腸がんでの分化を促進する

α-Ketoglutarate attenuates Wnt signaling and drives differentiation in colorectal cancer

doi:10.1038/s43018-020-0035-5

グルタミンが制限された環境はWntシグナル伝達と腸の腫瘍形成を促進するが、代謝物α-ケトグルタル酸の補充は、この作用を打ち消し、腫瘍増殖を弱め、生存を延長することが、T Tranたちにより示された。

Technical Report: CRISPR-Cas9を用いた患者由来異種移植片の直接的なゲノム編集により迅速なin vivo機能ゲノミクスを可能にする

Direct genome editing of patient-derived xenografts using CRISPR-Cas9 enables rapid in vivo functional genomics

doi:10.1038/s43018-020-0040-8

誘導性CRISPR-Cas9を用いて患者由来異種移植でin vivoゲノム編集を行うためのシステムを、Poirierたちが開発した。彼らは、遺伝子依存性や薬剤抵抗性のモデルを作製するための利用法も示している。

Article: 画像化マスサイトメトリーとマルチプラットフォームゲノミクスにより乳がんのフェノゲノミクス全体像を規定する

Imaging mass cytometry and multiplatform genomics define the phenogenomic landscape of breast cancer

doi:10.1038/s43018-020-0026-6

Bodenmillerたちは、画像化マスサイトメトリーとMETABRICコホートからのデータを組み合わせて、乳がんにおける単一細胞の表現型とゲノムの特性を空間的に明らかにした。この結果から乳がんサブタイプと予後の関連が見えてきた。

Article: 血中の腫瘍DNAの動態から、局所的に進行した非小細胞肺がんにおいて強化免疫療法で得られる恩恵を予測する

Circulating tumor DNA dynamics predict benefit from consolidation immunotherapy in locally advanced non-small-cell lung cancer

doi:10.1038/s43018-019-0011-0

化学放射線療法を受けた非小細胞肺がん患者における血中DNAのアッセイによって、強化免疫療法の恩恵を最も得られるだろう患者を特定可能であることを、Diehnたちは報告している。

Article: 細胞外cGAMPはがん細胞によって産生される免疫トランスミッターであり、放射線誘発性の抗がん免疫に関与する

Extracellular cGAMP is a cancer-cell-produced immunotransmitter involved in radiation-induced anticancer immunity

doi:10.1038/s43018-020-0028-4

がん細胞により産生された細胞外cGAMPは免疫トランスミッターとして働き、電離放射線と組み合わせることで腫瘍容積を減少させられるいう結果を、Liたちは報告している。

Article: 原発性黒色腫T細胞の分子解析から、転移再発のリスクがある患者を特定する

Molecular analysis of primary melanoma T cells identifies patients at risk for metastatic recurrence

doi:10.1038/s43018-019-0019-5

Kupperたちは、原発性黒色腫におけるT細胞を介した抗腫瘍応答の分子的評価としてT細胞分画を取り入れ、転移再発性の予測を可能にした。

Article: 1回目の免疫治療サイクル後の末梢T細胞動態が示す免疫系の覚醒

Immune awakening revealed by peripheral T cell dynamics after one cycle of immunotherapy

doi:10.1038/s43018-019-0022-x

黒色腫患者のチェックポイント阻害療法は、末梢T細胞に対して動的な変化と免疫エフェクター細胞の増殖を引き起こすことを、Maraisたちが報告している。この免疫系の覚醒は治療後早期に起こり、臨床に活用できる可能性がある。

Article: MTSS1はRBCK1を介したp65のユビキチン化を亢進して乳房の腫瘍開始細胞を抑制する

MTSS1 suppresses mammary tumor-initiating cells by enhancing RBCK1-mediated p65 ubiquitination

doi:10.1038/s43018-019-0021-y

MTSS1はユビキチンを介したNF-κB経路の抑制を促進して、乳がんのイニシエーションを抑制することを、Congたちが明らかにした。この調節機構が失われると、腫瘍開始細胞の活性化と増殖が促進される。

Resource: 体系的な生存率プロファイリングによる非がん治療薬の抗がん作用の発見

Discovering the anticancer potential of non-oncology drugs by systematic viability profiling

doi:10.1038/s43018-019-0018-6

Golubたちは、もともとはがん治療用に開発されたわけではない数千種類の薬剤を、578種類のヒトがん細胞株において調べた。増殖抑制効果が見つかった他、がんに転用できる可能性のある薬剤を探し出すための研究リソースが得られた。

Analysis: 変異シグネチャー解析のための実践的フレームワークとオンラインツールにより明らかになった組織間のばらつきとドライバー依存性

A practical framework and online tool for mutational signature analyses show intertissue variation and driver dependencies

doi:10.1038/s43018-020-0027-5

Degasperiたちは今回、実践的フレームワークとオンラインツールのSignalを導入して、変異シグネチャーを解析した。変異シグネチャーには組織特異的なばらつきがある証拠が見つかり、この結果は腫瘍の分類や臨床応用に影響を及ぼし得る。

Article: L1CAMは大腸がんにおける転移開始細胞の再生関連起源を特徴付ける

L1CAM defines the regenerative origin of metastasis-initiating cells in colorectal cancer

doi:10.1038/s43018-019-0006-x

L1CAM陽性の細胞集団によって、上皮完全性の喪失後に腸組織の再生が促され、大腸がんでの転移開始と化学療法抵抗性が仲介されることが明らかになった。

Article: 膵管腺がんにおける転写不均一性と扁平上皮特性を一元化するパラダイム

A unifying paradigm for transcriptional heterogeneity and squamous features in pancreatic ductal adenocarcinoma

doi:10.1038/s43018-019-0010-1

C Iacobuzio-Donahueたちは、トランスクリプトーム、組織学、変異データを用いて、膵管腺がん(PDAC)の扁平上皮の特性を解析し、PDACの不均一性と進化に関する理解をさらに深めた。

Article: 短期間の飢餓はIGF-1レベルを低下させ、肺腫瘍をPD-1免疫チェックポイント阻害に対して感受性にする

Short-term starvation reduces IGF-1 levels to sensitize lung tumors to PD-1 immune checkpoint blockade

doi:10.1038/s43018-019-0007-9

短期間の飢餓には抗PD-1阻害との相乗作用があり、肺腫瘍の増殖と転移を低下させることを、D Ajonaたちが報告している。この抗腫瘍効果は、血漿中のIGF-1レベルと腫瘍細胞上のIGF-1Rの減少を介して起こる。

Article: 多様なゲノム特性は非小細胞性肺がんでの免疫チェックポイント阻害の転帰を予測する

Multimodal genomic features predict outcome of immune checkpoint blockade in non-small-cell lung cancer

doi:10.1038/s43018-019-0008-8

V Anagnostouたちは、免疫チェックポイント阻害に対する改良された奏効予測因子について示している。この因子は、腫瘍純度を補正するための腫瘍変異量の推定、RTKゲノム変異、喫煙に関連した変異シグネチャー、HLAの状態を統合したものである。

Article: アフリカ系アメリカ人ではヨーロッパ系アメリカ人に比べて腫瘍における相同組換え欠損が多い

Higher prevalence of homologous recombination deficiency in tumors from African Americans versus European Americans

doi:10.1038/s43018-019-0009-7

B Ryanたちは、アフリカ系アメリカ人とヨーロッパ系アメリカ人の腫瘍のゲノム特性を解析し、相同組換えの欠損がアフリカ系アメリカ人でより多く見られることを見出した。

Article: PAK4の阻害はPD-1遮断免疫療法を改善する

PAK4 inhibition improves PD-1 blockade immunotherapy

doi:10.1038/s43018-019-0003-0

A Ribasたちは、PAK4を阻害すると、Wnt経路活性が低下してT細胞の腫瘍浸潤が増加するために、抗PD-1免疫療法への応答が改善されることを報告している。

Analysis: ユビキチンタンパク質分解系の変化の体系的解析から、この系ががんのドライバー変異に関与することが明らかになった

Systematic analysis of alterations in the ubiquitin proteolysis system reveals its contribution to driver mutations in cancer

doi:10.1038/s43018-019-0001-2

F Martínez-Jiménezたちは、ユビキチン–プロテアソーム系の破壊が、がんにどのように影響を及ぼすかを報告している。ドライバー変異の10%以上が、E3リガーゼ群やそれらの標的をはじめとした、ユビキチンを介するタンパク質分解に関連した遺伝子の変化を含むと、彼らは推定している。

Article: 三重特異性抗体はT細胞受容体を共刺激して腫瘍指向性T細胞の治療奏効性を高める

Trispecific antibodies enhance the therapeutic efficacy of tumor-directed T cells through T cell receptor co-stimulation

doi:10.1038/s43018-019-0004-z

CD38、CD3およびCD28を認識し、T細胞の活性化と共シグナル伝達を誘導する三重特異性抗体を、L Wuたちが開発した。彼らはマウスや非ヒト霊長類において、これらの抗体は複数の標的へ関与することで、腫瘍細胞に対する強化された殺傷力を持つことを示している。

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