Letter
細胞:TRF2を介した染色体末端保護の2段階機構
Nature 494, 7438 doi: 10.1038/nature11873
哺乳類のテロメアは、DNA損傷装置の特異的阻害因子を誘導することで、正常な染色体末端でのDNA損傷機構活性化を抑制しており、こうした阻害因子はシェルタリン(shelterin)と呼ばれる保護複合体を形成する。TRF2(別名TERF2)は、この複合体内で末端保護に非常に重要な役割を担っており、ATMの活性化と染色体の末端どうしの融合を抑制している。本研究では、マウスの胚性繊維芽細胞における染色体末端の保護に必要十分であるTRF2の分子特性について調べた。得られたデータは、TRF2を介した末端保護が2段階からなる機構で行われていることを裏付けている。まず、TRF2の二量体化ドメインが、DNA損傷応答(DDR)の活性化にかかわる最初の主要な段階であるATM活性化の阻害に必要とされる。次いで、TRF2はATM活性化の下流にあるDNA損傷シグナルの伝播を独立に抑制する。テロメアにおけるこの新規なDDR調節は、E3ユビキチンリガーゼRNF168のレベルで起こる。テロメアでのRNF168の阻害には、脱ユビキチン化酵素BRCC3とユビキチンリガーゼUBR5が関与し、RNF168阻害は染色体末端同士の融合を抑制するのに十分であった。TRF2が介在し、2段階からなるこの末端保護機構は、正常な機能を持つテロメアにDDRタンパク質の局在がしばしば見られるが、有害なDNA修復活性の誘導が同時に起こることがないという、見かけ上の矛盾を説明するのに役立つ。