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材料:単一の膜貫通窒化ホウ素ナノチューブにおいて測定された巨大な浸透エネルギー変換

Nature 494, 7438 doi: 10.1038/nature11876

ナノスケールで液体を閉じ込めることができれば、限外ろ過や脱塩、エネルギー変換への応用の可能性が考えられる新しい流体輸送モデルが得られると期待されている。だが、最小スケールの流体輸送に関する基本的理解を深めるには、多くの細孔にわたる平均化を避けるために、質量やイオンのダイナミクスを個々のチャネルにわたって根本的に評価する必要がある。したがって、ナノ流体力学の主な難問の1つは、特性の体系的調査がしやすく十分制御された個別のナノチャネルを構築することにある。今回我々は、非常に薄い膜を貫通して2つの流体貯留槽をつなぐ1本の窒化ホウ素ナノチューブでできた階層的ナノ流体デバイスを作製・利用したことについて報告する。このような膜貫通形状によって、電場、圧力降下、化学勾配など、さまざまな力を受けた1本のナノチューブを通る流体輸送を詳細に研究できるようになる。我々はこのデバイスを用いて、塩分勾配によって発生する非常に大きい浸透圧誘起電流を発見した。この電流は圧力駆動電流より2桁大きい。また、高pHの水中でナノチューブ内壁面によって運ばれる表面電荷が異常に高いのが、この結果の原因であることがわかり、これをコンダクタンス測定で独立に定量化した。構成要素としてナノ構造体を用いた今回のナノアセンブリー法は、ナノスケールでの流体、イオン、分子の輸送研究への道を開くものであり、これにより生体模倣機能が得られるようになるかもしれない。さらに我々の結果は、塩分勾配下における浸透圧発電用の膜として窒化ホウ素ナノチューブが利用できる可能性を示唆している。

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