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環境:中国全土にわたる窒素蓄積量の増加

Nature 494, 7438 doi: 10.1038/nature11917

中国では、人為起源の活性窒素の放出が大きな原因となり、深刻な大気汚染が起こっている。こうした放出の結果、陸域や水域の生態系で大気窒素の沈着が起こり、ヒトの健康や生態系の健全性、温室効果ガス収支、生物学的多様性に影響を及ぼしている。しかし、中国における窒素沈着の規模や環境への影響についての情報は限られている。本論文では、バルク窒素の沈着、植物の葉の窒素、長期間未施肥の土壌における穀物の窒素吸収に関する中国全土のデータセットを用いて、1980〜2010年の中国全土の窒素沈着の動態と、それらの生態系への影響を見積もっている。我々は、年間当たりのバルク窒素の平均沈着量が、1980年代(1ヘクタール当たり13.2 kg)から 2000年代(1ヘクタール当たり21.1 kg)の間に、1ヘクタールにつき約8 kg増加した(P < 0.001)ことを見いだしている。中国の工業化した地域と農業化が進行している地域における窒素沈着速度は、緩和施策を導入する前の1980年代の北西ヨーロッパにおける最大レベルの沈着と同程度である。アンモニウム(NH4+)由来の窒素がバルク沈着における窒素の主な形態であるが、増加速度は、硝酸塩(NO3)由来の窒素沈着が最大であり、これは、NOxに対するNH3の比が1980年以来減少していることと一致している。さらに、中国の生態系における窒素沈着の影響は、自然生態系と半自然(すなわち非農業的)生態系における植物の葉の窒素濃度のかなりの増加と、長期間未施肥の耕作地における穀物の窒素吸収の増加にも及んでいることも見いだしている。中国などの経済圏は、活性窒素の放出、窒素沈着、ヒトや環境に対するそれらの悪影響を減らすという継続的な難題に直面している。

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