Letter
微生物学:バクテリオファージは、宿主の自然免疫を回避するために自身のCRISPR/Cas適応応答をコードしている
Nature 494, 7438 doi: 10.1038/nature11927
バクテリオファージ(あるいはファージ)は、地球上に最も豊富に存在する生物学的構成体であり、その被食者である細菌の数の10倍存在すると推定されている。ファージによる捕食の脅威に常にさらされている細菌では、広範な免疫機構の進化がこれまでに起こっており、その結果、ファージ側でもさまざまな免疫回避戦略が進化し、それが動的な共進化的軍拡競走につながっている。ファージに対する細菌の自然免疫機構は多く存在するが、細菌の適応免疫系で唯一報告されているのはCRISPR/Cas(clustered regularly interspaced short palindromic repeat/CRISPR-associated protein)系で、この系は、ファージなどの侵入核酸に対して塩基配列特異的な防御を提供する。本論文では、ファージにコードされるCRISPR/Cas系が、細菌宿主の染色体に存在するファージ抑制性のアイランドを無効にするために用いられるという、注目に値する事態の展開を示す。ファージによる溶菌感染の成功は、CRISPRスペーサーと染色体上の標的アイランドの間の塩基配列同一性に依存している。そのようなターゲティングができない場合、ファージにコードされるCRISPR/Cas系は、新しいスペーサーを獲得して速やかに進化し、染色体上のアイランドの効果的なターゲティングを確実にし、ファージの複製を復活させることができる。