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神経科学:多発性硬化症におけるニューロンの脆弱性と多系譜多様性

Nature 573, 7772 doi: 10.1038/s41586-019-1404-z

多発性硬化症(MS)は神経炎症性疾患で、初期段階には再発と寛解を繰り返す疾患経過をとり、皮質灰白質と皮質下白質で病変特性が異なり、慢性期では神経変性が起こる。今回我々は、単一核RNA塩基配列解読によってMS病変内の複数の細胞系譜における発現の変化を調べ、多重in situハイブリダイゼーションによって得られた結果を検証した。その結果、髄膜炎の原因となっている皮質上層での選択的な脆弱性と、CUX2を発現する興奮性投射ニューロンの喪失が明らかになった。このようなMSニューロン集団では、ストレス経路遺伝子群や長鎖ノンコーディングRNAの発現上昇が見られた。ストレスを受けたオリゴデンドロサイト、反応性アストロサイトおよび活性化ミクログリアのシグネチャーは、MS斑の周縁部で最も強く認められた。特に、単一核RNA塩基配列解読から、ミエリン転写産物の取り込みや核周囲への輸送によりファゴサイトーシスを行うミクログリアおよび/あるいはマクロファージが特定されたことは重要であり、この結果はマウスとヒトの機能的培養アッセイにより確認された。今回の知見は、選択的な皮質ニューロンの損傷やグリアの活性化と関連する、系譜特異的および領域特異的なトランスクリプトームの変化がMS病変の進行に関与していることを示している。

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