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物性物理学:ファンデルワールス超格子における層内電荷移動モアレ励起子

Nature 609, 7925 doi: 10.1038/s41586-022-04991-9

ヘテロ2層遷移金属ジカルコゲニドのモアレパターンは、異常な相関電子相、新規磁性、相関励起子物理のホストとなる理想的なプラットフォームであることが分かっている。光学的測定を通して新しいモアレ励起子状態の存在が確認されているが、こうした状態の微視的性質はまだほとんど理解されておらず、経験的に合わせ込んだモデルに依存することが多い。今回我々は、大規模な第一原理GWGは1粒子グリーン関数、Wは遮蔽クーロン相互作用を示す)+Bethe–Salpeter計算と、顕微反射分光法を組み合わせることによって、WSe2/WS2モアレ超格子における励起子共鳴の性質を特定し、主流の連続体モデルでは捉えることができない一連の豊富なモアレ励起子を発見した。我々の計算によって、変調ワニエ励起子やこれまで特定されていなかった層内電荷移動励起子など、独自の特性を持つモアレ励起子が示された。こうした独自の励起子特性の特徴は、異なるモアレ励起子共鳴の特有のキャリア密度依存性や磁場依存性によって実験的に裏付けられた。今回の研究結果は、遷移金属ジカルコゲニドモアレ超格子において出現し得る高度に非自明な励起子状態を浮き彫りにするとともに、特定の空間特性を持つ励起状態を操作することよってモアレ系における多体物理を調整する新しい方法を示唆している。

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