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化学:プロトン共役電子移動を経るタンデム型電極触媒的N2固定

Nature 609, 7925 doi: 10.1038/s41586-022-05011-6

新しい電気化学的なアンモニア(NH3)合成技術は、分散型肥料生産のためにハーバー・ボッシュ法を補完する手段として、また、再生可能エネルギー由来の電気によって生産されるゼロカーボン燃料としてのアンモニアの利用に向けて注目されている。これらの目標については、窒素還元反応(N2RR)の電極触媒として不均一材料を対象とする基礎研究が活発化している。一般的にこうした不均一触媒系は、安定性とNH3選択性に乏しく、水素生成反応(HER)がN2RRより勝るという問題を抱えている。分子触媒系は、精巧な調整が可能で代替戦略をもたらし得るが、同じくHERが支配的になるという選択性の問題によって進歩が阻まれている。今回我々は、この難問を解決できるタンデム型触媒反応戦略について報告する。N2還元サイクルを媒介できる分子錯体と、電極と酸を結び付けてプロトン共役電子移動ステップを媒介する共触媒を組み合わせることで、好ましい印加電位(−1.2 V vs. Fc+/0)と総熱力学効率でN–H結合形成が促進された。それ以外の場合、N2RRサイクルの特定の中間体は、非共役電子移動ステップやプロトン移動ステップを通して反応しないと思われる。構造的に多様ないくつかの金属(W、Mo、Os、Fe)の錯体も、このメディエーターの存在下で同じ電位でN2RR電極触媒反応を媒介することから、このタンデム型手法の一般性が示されている。

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