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神経科学:軸索初節でのエンドサイトーシスがニューロンの細胞極性を維持する

Nature 609, 7925 doi: 10.1038/s41586-022-05074-5

ニューロンは高度に極性化した細胞であり、膨大な数の多様なタンパク質群を適切な機能を果たすよう区画に分けるという基本的な難題に直面している。軸索初節(AIS)は、1個のニューロン内で形態的・生化学的・機能的に異なる軸索区画と樹状突起区画とを分けている特殊化した領域である。AISがどのようにしてこれら区画間の極性を維持しているかは、十分に解明されていない。今回我々は、線虫の一種Caenorhabditis elegans、マウス、ラット、ヒトのニューロンで、樹状突起と軸索に分極する膜貫通タンパク質類が、AISのエンドサイトーシス装置によって認識され、エンドサイトーシスによってロバストに取り込まれて、分解のために後期エンドソームに送られることを見いだした。AISのマスターオーガナイザーであるアンキリンGとの受容体相互作用を強制すると、AISでの受容体エンドサイトーシスは阻害され、AISに受容体が蓄積し、極性の異常に続いて形態および行動の異常が生じた。従って、AISに拡散した極性を持つ受容体のエンドサイトーシスによる除去が、膜貫通タンパク質の除去機構として働き、既知のAISの拡散障壁機構と協働して、形質膜上のニューロン極性を維持しているのだろう。今回の結果から、進化的に保存されたAISでのエンドサイトーシスによる膜貫通タンパク質除去機構が、軸索区画と樹状突起区画間の膜の境界を強化してニューロンの極性を維持していることが明らかになった。

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