Perspective
ゲノミクス:ヒト遺伝子カタログの現状
Nature 622, 7981 doi: 10.1038/s41586-023-06490-x
2001年にヒトゲノムの最初の概要配列が発表されて以降、研究者たちはヒトゲノム内の全遺伝子の特定を試みてきた。それ以来、タンパク質をコードする遺伝子の特定はかなり進み、現在、タンパク質をコードする遺伝子の数は2万未満と推定されているが、異なるタンパク質をコードするアイソフォームの数は増え続けている。本論文で我々は、ヒト遺伝子カタログの現状と、その完成を目指した近年の取り組みについて概説する。現在、タンパク質をコードする遺伝子やそれらのアイソフォーム、および偽遺伝子のアノテーションが進行中であることに加えて、ハイスループットRNA塩基配列解読の発明や他の技術の画期的進歩により、報告されるノンコーディングRNA遺伝子の数が急速に増加している。これらのノンコーディングRNAのほとんどについては、現在のところ、機能的な意義は分かっていない。そのため我々は、こうした遺伝子の機能の特定を進め、最終的にはヒト遺伝子カタログの完成に向けた道筋を示す最近の進歩に注目する。さらに、臨床現場においてヒト遺伝子カタログを使用するために、医学的に重要な全ての遺伝子を含み、異なる参照ゲノムとの関係を維持する、普遍的なアノテーション基準の必要性を検討する。