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熱物理学:非平衡フォノンポラリトンが媒介する非常に大きな熱伝導

Nature 623, 7986 doi: 10.1038/s41586-023-06598-0

表面波は、興味深い輸送現象につながる可能性がある。特に、赤外光と光学フォノンの結合によって生じる表面フォノンポラリトン(SPhP)は、極性薄膜やナノワイヤーに沿った熱伝導に寄与すると予測されている。しかし、これまでの実験的な試みでは、非常に限定的なSPhPの寄与しか示唆されていない。今回我々は、同一の3C-SiCナノワイヤーの(両)端部にSPhPを放出する働きをする金コーティングを施したものと施していないものの熱輸送を系統的に測定することによって、熱励起されたSPhPが、こうしたナノワイヤーのコーティングされていない部分の熱伝導率を大幅に向上し得ることを示す。得られた減衰前SPhPの熱伝導率は、平衡状態のボース・アインシュタイン分布に基づいて予測されるランダウアーの限界より2桁以上高い。この大きなSPhP伝導率は、金コーティングされた部分からコーティングされていないSiCナノワイヤーへの非平衡SPhPの効率的な放出に起因すると考えられ、これは、SPhPに媒介される熱伝導率が金コーティングの長さに比例するという観測結果によって強く裏付けられている。今回報告した発見は、SPhPの導入によって固体中のエネルギー輸送を調節する道を開き、多くの技術的に重要な膜における古典的なサイズ効果を効果的に相殺し、固体デバイスの設計を改善できる。

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