Nature ハイライト
Cover Story:アリの「乳」:動けない蛹が栄養のある液体を分泌してコロニーの生存を助ける
Nature 612, 7940
表紙は、蛹と小さな幼虫の世話をしているクビレハリアリ(Ooceraea biroi)である。アリは社会性昆虫で、そのコロニーは、洗練されたコミュニケーション、行動、協働を伴う複雑な生物系である。今回D Kronauerたちは、この昆虫の生活環における動けない蛹の段階に関わる、これまで知られていなかった社会的行動を明らかにしている。彼らは、羽化する直前の蛹が、哺乳類の乳に似た栄養豊富な脱皮液を分泌することを見いだした。この液体は、成虫と、成虫が蛹の上に置いた若い幼虫によってすぐに摂食される。著者たちは、この液体を摂取できない幼虫は成長障害を示し、生存率が低くなると指摘している。同様に、分泌物が蛹から除去されないと、蛹は真菌感染症を発症して死ぬ。著者たちはさらに、この液体にはホルモンや精神活性物質が含まれており、コロニー全体の生理や行動に影響を及ぼしている可能性があることも見いだしている。
2022年12月15日号の Nature ハイライト
神経免疫学:神経免疫の中心としての脳境界領域
天文学:可視光で確認された潮汐破壊事象
量子物理学:量子回路に形成される光の強相関流体
半導体:平行スピンの電子によるクーパー対の直接的証拠
ナノスケールデバイス:電子スピンの相関を調べる
エレクトロニクス:導電性界面強誘電体における蓄積分極
光学材料:キラル金ナノ粒子アレイによる分子のキラリティーの検出
大気科学:メタン増加は湿地からの放出と大気シンクの変化で説明される
生態学:窒素固定樹の食害が熱帯林への窒素供給を制限する
がんゲノミクス:ファンコニ貧血関連扁平上皮がんのゲノム全体像
神経科学:ニューロンを並べて働かせる分子
神経科学:睡眠の量と深さを調節するシグナル経路
微生物学:熱帯熱マラリア原虫の性決定に関与する転写スイッチ
微生物学:熱帯熱マラリア原虫の生活環をin vitroで再現
コロナウイルス:SARS-CoV-2オミクロン変異株のBA.4/BA.5系統をBA.2系統と比較する
生物工学:植物の光合成系を使って軟骨細胞の代謝を改善
がん:腫瘍へのプログレッションの際には、がん幹細胞とその微小環境とのクロストークが起こっている
がんゲノミクス:がんの3Dゲノム構造が変化した変異体はがん遺伝子の活性化に影響を及ぼす