Nature ハイライト
Cover Story:チャネルの切り替え:オルガノイドやアセンブロイドによって、ティモシー症候群の治療候補を検証するモデルが得られた
Nature 628, 8009
ティモシー症候群は、心臓の障害、自閉症、てんかんを特徴とするまれな遺伝性疾患で、変異型のCACNA1Cが原因である。この遺伝子は、カルシウムイオンチャネルをコードしている。今回S Pașcaたちは、この変異によって生じた欠陥を修正してティモシー症候群を治療できる可能性がある戦略を提示している。彼らは、変異を持つタンパク質コード配列が使われるのを減らし、他の塩基配列が使われるようにすることを目的とした、アンチセンスオリゴヌクレオチドを開発した。次に、ティモシー症候群の患者から集めた幹細胞から得た三次元(3D)組織モデル(皮質オルガノイドと前脳アセンブロイド)で、この方法を検証した。著者たちは、この方法が機能することを確かめた後、新生仔ラットの大脳皮質に皮質オルガノイドを移植し、欠陥遺伝子によって生じたカルシウムの問題とニューロンの構造的な問題がアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療によって修正されたことを示すことができた。表紙は、ニューロンの成長によく似た氷のパターンを、ドローンで撮影した写真である。
2024年4月25日号の Nature ハイライト
天体物理学:外層を剥ぎ取られた超新星における放射性崩壊以外のエネルギー源
計測学:海上でも使える光時計
超高速材料科学:バルク材料でも可能なバレー自由度制御
ナノスケール材料:高性能デバイス向けの新たなグラフェンナノリボン成長戦略
分析ナノ科学:コロイドを用いた表面増強ラマン分光法による超高感度定量化
生物地球化学:溶存態有機物の多様性の原因となる酸化的脱芳香族化
テクトニクス:大洋中央海嶺軸における部分的な圧縮
生態学:生物多様性の変化の評価における不確実性に目を向ける
生体力学:機械学習で明らかになった昆虫の翅の動作
進化学:ドクチョウの同所的な雑種種分化
神経科学:暑いと食欲が落ちる仕組み
医学研究:重症インフルエンザに有効なネクロトーシス阻害剤
健康科学:DNAポリメラーゼガンマの変異が自然免疫応答を低下させる
免疫学:腸の粘膜固有層における免疫寛容の空間的機構
生物工学:タンパク質の分解と安定化に関わるエフェクターの網羅的解析
分子生物学:mRNA転写終結のクライオ電子顕微鏡像
生化学:天然の酵素分子が形成するフラクタル複合体
生物物理学:ABC輸送体が細菌の莢膜多糖を運ぶ仕組み
構造生物学:内壁に脂質が結合しているイオンチャネルが見つかった