Nature ハイライト
Cover Story:細胞ナビ:組織の発生と疾患の進行を記す、ヒト細胞アトラスの概要地図
Nature 635, 8039
ヒト細胞アトラス(HCA)イニシアチブは、全てのヒト細胞の包括的な参照マップを作製する目的で設立された。細胞は生命の基本単位であり、こうしたマップはヒトの健康の理解だけでなく、疾患の診断・観察・治療の基礎となる。今週、HCAコンソーシアムは、分析ツールと共に、いくつかの初期概要マップを、ネイチャーポートフォリオの出版誌およびGenome Biologyの一連の論文で発表している。Natureでは、K Toたちが、胎児の骨格形成の初期段階をマッピングして、骨形成を促進する遺伝子ネットワークを突き止め、B Zhangたちが、ヒト胚の四肢発生マップから、骨、筋肉、神経組織の分化を調節する遺伝子プログラムを明らかにしている。また、N Gopeeたちは、胎児の皮膚発生をマッピングして、毛包と血管ネットワークの形成における免疫細胞の役割を突き止めている。そして、Z Heたちは、脳オルガノイドの統合的細胞アトラスを作製し、発達中の脳を再現するオルガノイドの能力に関する洞察を得ている。さらにA Oliverたちは、消化管をマッピングしてアトラスを作製し、クローン病や潰瘍性大腸炎などの疾患に関連する細胞変化を明らかにしている。N Yayonたちによる詳細な胸腺地図は、免疫細胞の発達を追跡している。表紙の画像は、詳細な細胞地図上に地下鉄のような生物学的システムのネットワークを重ね合わせることで、HCAイニシアチブの幅広さを表現している。
2024年11月21日号の Nature ハイライト
惑星科学:トランジットする若い巨大系外惑星の発見
量子ホール効果:分数チャーン絶縁体でバルク–エッジ対応を可視化
量子ホール効果:分数チャーン絶縁体の直接磁気イメージング
量子ホール効果:トリオンによるゼロ磁場複合フェルミ液体のセンシング
エネルギー科学:ショックレイ–クワイサー限界を超えたペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池
化学:光触媒を用いるPFASの分解法
気候科学:20世紀初頭の海面水温の低過ぎる見積もり
環境社会科学:プラネタリーバウンダリー超過の防ぎ方
生態学:生態系と大気の間の交換は土性に依存する
神経科学:蚊は味でヒトを認識する
植物科学:糖ブレーキの解除で大きくて甘いトマトを作る
微生物学:細菌防御系を無効化するファージタンパク質
微生物学:複数のファージ因子を同時に感知する細菌防御系
免疫学:腸管粘膜以外でのリンパ球の化学向性制御
がん:トリプルネガティブ乳がんにおける阻害剤併用療法の作用機序
構造生物学:ヒトTIP60ヒストンアセチルトランスフェラーゼ複合体の構造