Research press release

【物理学】雷による放射性同位体の生成

Nature

雷が引き金となって大気中で核反応が起こり、放射性同位体が生成されることを明らかにした論文が、今週掲載される。

雷雲の中で生じるガンマ線のエネルギーにより大気中で光核反応が起こり、その結果、中性子が放出され、究極的には陽電子(電子の反物質)が放出されるという仮説が提示されている。しかし、この光核反応の観測は十分になされていなかった。

京都大学の榎戸輝揚(えのと・てるあき)たちの研究グループは、4台の放射線検出器を使って、2017年2月6日に日本国内で雷雨が発生した際に中性子と陽電子の信号を検出した。榎戸たちは、この観測データを基に以下の考えを示している。雷が引き金となって生成されたガンマ線光子のバーストが大気中の原子核と衝突して、光核反応が起こり、その結果、中性子と不安定な放射性同位体が生成され、この放射性同位体が崩壊する際に陽電子が放出されたというのだ。13C、14C、15Nなどの同位体の自然の生成経路については、大気中での宇宙線の相互作用のみが判明しているが、榎戸たちは、雷もその生成経路であることが今回の発見によって分かったと考えている。

Lightning can trigger an atmospheric nuclear reaction that leads to the production of radioactive isotopes, according to a study in this week’s Nature.

It has been proposed that the energy from gamma-rays within lightning can cause photonuclear reactions in the atmosphere, which would produce neutrons and, eventually, positrons (the antimatter counterpart of electrons). However, the reaction had yet to be conclusively observed.

Using four radiation detectors, Teruaki Enoto and colleagues were able to detect neutron and positron signals during a thunderstorm on 6 February 2017 in Japan. From their data, the authors propose that a burst of lightning-triggered gamma-ray photons collided with atmospheric nuclei and initiated nuclear reactions. The atmospheric photonuclear reactions generated neutrons and unstable radioactive isotopes, which generated positrons during decay. The authors suggest that this discovery makes lightning only the second known natural channel on Earth, after the atmospheric cosmic-ray interaction, in which isotopes such as 13C, 14C and 15N are produced.

doi: 10.1038/nature24630

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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