Nature Climate Change に掲載された一次研究論文(ArticlesおよびLetters)について、その概要を日本語で紹介しています。
Nature Climate Change は、気候変化とその影響に関するテーマ(大気科学、生物地球化学、地理学、地形学、生態学、環境経済学、地球工学、モデル作成と予測、海洋学、古気候学、古生態学)はもちろん、気候と社会の相互作用、政治的影響、環境評価と環境管理などの関連テーマについても取り上げています。
Public division about climate change rooted in conflicting socio-political identities
doi: 10.1038/nclimate2507
気候変動の真実性に対するコンセンサスは高まっているが、今でも一般市民は、人間が原因だと考える人とそうではない人に分かれている。今回、こうした相違は、これらの相反する集団間の社会政治的対立という観点から説明できることが明らかになった。気候変動緩和策への支持を集める取り組みでは、集団間の関係を変える方法も含めるべきである。
Biomass enables the transition to a carbon-negative power system across western North America
doi: 10.1038/nclimate2488
バイオエネルギーを炭素回収・隔離とともに展開すれば、北米西部でカーボンネガティブな電力体系を2050年までに実現するのに役立つと考えられる。
Complementing carbon prices with technology policies to keep climate targets within reach
doi: 10.1038/nclimate2514
今回、炭素価格の設定、低炭素技術、エネルギー政策の政治的に実行可能な組み合わせによって、温暖化対策の目標値を2030年までに達成する方法が、モデルによって示された。
Unabated planetary warming and its ocean structure since 2006
doi: 10.1038/nclimate2513
国際アルゴ計画(2006年~現在)の結果から、地球表面の温暖化が「中断」しているにもかかわらず、海洋の熱含有量は増加していることが明らかになった。
Attribution of Arctic temperature change to greenhouse-gas and aerosol influences
doi: 10.1038/nclimate2524
今回、北極の温暖化に対する自然の強制要因と人為起源の強制要因(温室効果ガスとエアロゾル)の相対的な寄与が調べられた。温室効果ガスによる温暖化の約60%は、他の人為起源の強制力によって相殺されることが分かった。これは全球規模での観測結果よりも大きい。
The changing nature of flooding across the central United States
doi: 10.1038/nclimate2516
気候モデルでは、暖かい大気はより多くの水分を保持するため、豪雨事象が増加すると予測されている。今回、米国中部の観測結果を調べ、洪水の発生頻度は増大しているが、洪水ピークが大きくなっていることを示す証拠はほとんどないことが報告された。
The environmental impact of climate change adaptation on land use and water quality
doi: 10.1038/nclimate2525
気候変動適応策の促進を目指す政策は、環境の質の保護を目的とした規制と対立する可能性がある。今回、農業由来の供給サービスと淡水の水質という形での調整サービスという、気候変動の影響を受ける2つの基本的な生態系サービス間のトレードオフが調べられた。
Arctic warming will promote Atlantic–Pacific fish interchange
doi: 10.1038/nclimate2500
今回、気候変動下での将来の北極の状態について、北大西洋と北太平洋の魚類群集間での交流の可能性がモデル化された。
The carbon footprint of traditional woodfuels
doi: 10.1038/nclimate2491
全世界で収穫された木材の半分以上が、燃料として使用されている。持続不可能な収穫は木質バイオマスを減少させ、森林劣化、森林破壊、気候変動の一因となる可能性がある。今回、汎熱帯の木質燃料の需要と供給に関する空間的に明確な評価を用いて、収穫が再成長を上回っている場所と、その結果として生じた2009年のGHG排出量が見積もられた。
Saturation-state sensitivity of marine bivalve larvae to ocean acidification
doi: 10.1038/nclimate2479
今回、飽和状態は海洋炭酸塩の化学的性質の重要な要素であり、商業的に重要な2種類の二枚貝種では、幼生の外殻の発達と成長に影響を及ぼすことが明らかになった。
Temperature impacts on economic growth warrant stringent mitigation policy
doi: 10.1038/nclimate2481
統合評価モデルは、現在の経済生産高に対する気候変動の影響を見積もっているが、成長率に対する影響は見積もっていない。今回、気候変動が総GDP成長率に影響を直接及ぼすように、標準的な統合評価モデルが修正された。その結果、気候変動は、貧しい地域のGDP成長を大幅に減速させるが、裕福な国では減速はせず、短期的な緩和のレベルに影響を与えることが明らかになった。
Increased frequency of extreme La Niña events under greenhouse warming
doi: 10.1038/nclimate2492
極端なラニーニャ現象は、太平洋中部の海面水温が低下し、西部の海洋大陸に対する温度勾配が強くなった時に発生する。今回、陸域は海洋より早く温暖化するため、極端なラニーニャ現象の発生頻度が増加し、極端なエルニーニョ現象の後に発生する可能性が高くなると予測された。
Nonlinear regional warming with increasing CO2 concentrations
doi: 10.1038/nclimate2498
気候変動が地域的スケールで気温に及ぼす影響についての知識は、効果的な計画と準備のために必要である。今回、5つの気候モデルを用いて地域的な温暖化が調べられた。その結果、温暖化は大気中の二酸化炭素濃度の倍増に対して非線形であり、二酸化炭素濃度が高くなると非線形性が増加することが示された。
Rising temperatures reduce global wheat production
doi: 10.1038/nclimate2470
今回、野外実験を対照としたコムギの作物モデルの系統的検証に基づく研究から、多くのコムギモデルは収穫量をうまくシミュレートしているが、気温が高くなると精度が低下することが明らかになった。モデルアンサンブルの応答を外挿すると、世界のコムギ生産量は気温が1℃上昇するごとに6%低下することが示された。
Geographic range predicts photosynthetic and growth response to warming in co-occurring tree species
doi: 10.1038/nclimate2497
気候変動に対する集団の感受性は、その気候域のどこに存在するかによって異なる可能性がある。今回、高温分布限界に最も近い場所で成長する樹木種は、温暖化に応答して正味の光合成と成長が低下するが、低温分布限界に近い樹木種は機能の向上を示すことが、実験から明らかになった。
Flood risk of natural and embanked landscapes on the Ganges–Brahmaputra tidal delta plain
doi: 10.1038/nclimate2472
堤防の決壊を制御すれば、海水準上昇によるガンジス川–ブラマプトラ川潮汐三角州平野の洪水リスクを減らすことができる可能性がある。
Barrier island bistability induced by biophysical interactions
doi: 10.1038/nclimate2474
防波島は世界の海岸線の約10%を占め、海岸保全など多くの役割を果たしている。今回、防波島は環境の変化に対して双安定応答を示すことが明らかになった。こうした機構の解明が進めば、将来の防波島の状態の推移を予測するのに役立つ可能性がある。
Adaptive potential of a Pacific salmon challenged by climate change
doi: 10.1038/nclimate2473
水温上昇に適応する能力が限られていることを考慮すると、太平洋サケ個体群の存続性は気候変動の影響によって危険にさらされる可能性がある。
Responding to rising sea levels in the Mekong Delta
doi: 10.1038/nclimate2469
ベトナムのメコンデルタは海面上昇に直面しており、農地への塩水侵入という現在進行中の問題が悪化すると予想されている。今回、水文、農業、ヒトの行動を評価し、メコンデルタで生活する人々にとって最も効果的な結果をもたらす可能性が高い適応戦略の組み合わせが特定された。
Acting green elicits a literal warm glow
doi: 10.1038/nclimate2449
一般に、環境に配慮した行動は、外的報酬の提供によって誘発されると考えられている。今回、環境に配慮した行動をとることで肯定的な感情が生まれ、人々がより暖かいと感じるようになることが明らかになった。実験では、自分の行動が環境にやさしいことを知った人々は自身に肯定的な気持ちを抱き、環境にやさしくない行動をしていると知った人々よりも室温を高く感じていた。
A large ozone-circulation feedback and its implications for global warming assessments
doi: 10.1038/nclimate2451
気候モデルには、単純化して計算時間を節約できる可能性があるプロセスが多く含まれている。今回、上層大気のオゾンのモデル表現が、気候感度の予測に影響を及ぼす可能性が示された。
Dramatically increasing chance of extremely hot summers since the 2003 European heatwave
doi: 10.1038/nclimate2468
2003年に、ヨーロッパを夏の熱波が襲い、数万人の死者をもたらした。今回、観測結果とモデルデータを用いた研究によって、ヨーロッパではヒトの影響によって猛暑になる確率が増大し、2000年代初頭に予測された100年に2回と比べて、今回の予測では10年に2回猛暑が起こると予想されることが示された。
Supraglacial lakes on the Greenland ice sheet advance inland under warming climate
doi: 10.1038/nclimate2463
グリーンランド氷床の表面に融解湖が毎年形成されているが、現在は氷河下に十分な排水系がある地域に発生している。今回、気候温暖化の影響を調べ、融解湖が氷床の排水系の効率が低い高地に広がり、潤滑作用の増大と氷床底の温暖化をもたらす可能性があることが分かった。
Weaker soil carbon–climate feedbacks resulting from microbial and abiotic interactions
doi: 10.1038/nclimate2438
土壌炭素分解の温度感受性と微生物の炭素利用効率のパラメーター化は、土壌炭素–気候応答における不確実性の大きな原因となっている。今回、温度、微生物の生物地球化学的性質、鉱物表面の吸着反応の相互作用によって生じる土壌炭素–気候フィードバックは、静的な温度感受性を用いた従来の基質特性評価と比べて、変化しやすいがより弱い可能性があることが明らかになった。
Physiological plasticity increases resilience of ectothermic animals to climate change
doi: 10.1038/nclimate2457
順化は生理的可塑性の一形態で、生物が温度変動に対して生理的に順応する能力のことである。こうした変化は、気候変動が動物集団に及ぼす影響を緩和できる可能性がある。今回、外温動物の生理的可塑性に関する現状の知識を統合し、淡水動物と海洋動物は、陸生動物よりも順化能力が大きいと思われることが示された。
Permafrost collapse after shrub removal shifts tundra ecosystem to a methane source
doi: 10.1038/nclimate2446
永久凍土の融解後に起こる北極の土壌分解による炭素の放出は、重要な気候フィードバックである可能性がある。今回、灌木植生が永久凍土の炭素貯蔵庫を保護する仕組みが明らかになった。操作的実験によって、灌木植生が失われると、ツンドラがメタンを放出する水浸しの状態に変わることが示された。
Biological ramifications of climate-change-mediated oceanic multi-stressors
doi: 10.1038/nclimate2441
一般に、気候変動が植物プランクトンに及ぼす影響のモデル化研究では、一般的に個々の特性を検討しており、海洋環境の複雑な性質は無視されている。今回、相互作用を含む複数の特性を用いた海域別の評価が行われ、植物プランクトンの生理的速度の変化は20%以下から300%であることが分かった。
Household electricity access a trivial contributor to CO2 emissions growth in India
doi: 10.1038/nclimate2414
現代的エネルギーを誰でも利用できるようにすることと、気候を変化させる温室効果ガス排出量の削減という2つの目標の関連性が、インドの場合について評価された。
The impacts of temperature anomalies and political orientation on perceived winter warming
doi: 10.1038/nclimate2443
気候条件が人為起源の気候変動に関する考えに影響を及ぼすという証拠には、一貫性がない。今回、米国の州レベルの冬季の異常気温が、気温が平年より高いという認識と、こうした気温の原因は地球温暖化だとする考え方にどの程度影響するのかが分析された。その結果、異常気温は気温が平年より高いという認識に強く影響するが、その原因に関する考え方は、主に科学的コンセンサスと政治的志向によって決まることが明らかになった。
Rapid increase in the risk of extreme summer heat in Eastern China
doi: 10.1038/nclimate2410
中国東部の夏の平均気温は1950年代から0.82℃上昇し、最も暑かった5回の夏は2000年以降に起きている。今回、人為的な影響で夏が極端に暑くなる可能性は60倍以上になっていると見積もられ、暑い夏になる頻度が増加し続けると予測された。
Effects of elevated CO2 on fish behaviour undiminished by transgenerational acclimation
doi: 10.1038/nclimate2400
海洋の酸性化は海水魚の感覚能力と行動に悪影響を及ぼすと懸念されている。今回、魚の行動に対する二酸化炭素濃度上昇の悪影響は、継代順化では軽減されないことが明らかになった。
Global disparity in the ecological benefits of reducing carbon emissions for coral reefs
doi: 10.1038/nclimate2439
極端な水温上昇によるサンゴ礁の大規模白化は、温室効果ガス排出量が削減されなければ激化する可能性が高い。今回、太平洋のサンゴ礁は、カリブ海のサンゴ礁より排出量削減の恩恵を早く受ける可能性がモデル化によって示唆された。
Land-use protection for climate change mitigation
doi: 10.1038/nclimate2444
森林伐採による炭素排出の削減を目的とする政策では、国際的な炭素の漏出の回避が重要な課題となっている。しかし今回、世界的に実施されている森林保全計画でも、耕作地の非森林地域への拡大によって別の種類の炭素の漏出が生じる可能性が明らかになった。
Microbe-driven turnover offsets mineral-mediated storage of soil carbon under elevated CO2
doi: 10.1038/nclimate2436
気候変動に対する土壌有機炭素(SOC)の応答に関する不確実性の大半は、微生物によるプライミングと無機物による保護の相対的な影響と関連している。今回、炭素の保護は微生物によるプライミングの重要な制約要因となるが、SOC貯蔵量の減少を防ぐには不十分なことがほとんどの陸域で示された。
A local coastal adaptation pathway
doi: 10.1038/nclimate2383
今回、海水準上昇への適応方法を地域社会と共に開発するプロジェクトが報告された。その結果、理論的な情報に基づいて経験的に検証され、地域に支持された適応経路が得られた。
Delays in reducing waterborne and water-related infectious diseases in China under climate change
doi: 10.1038/nclimate2428
中国では、非常に多くの人々が清潔な上下水道を簡単に利用できずにいる。上下水道や衛生設備に起因する感染症の負担減少へ向けた中国の進歩は、予測されている気候変動の影響のために遅れる可能性がある。
Effectiveness of US state policies in reducing CO2 emissions from power plants
doi: 10.1038/nclimate2385
米国各州の気候変動政策では、発電所からの二酸化炭素排出量削減が重要な目標となっている。今回、個々の発電所からの二酸化炭素排出量は、特定の総合的政策によって大きく左右されることが明らかになった。
Linearity between temperature peak and bioenergy CO2 emission rates
doi: 10.1038/nclimate2399
今回、「2℃以内」という温暖化対策の目標値に関連するさまざまな前提と排出シナリオに従って、バイオエネルギー生産システムに対する全球平均気温の応答の特徴が調べられた。
Recent geographic convergence in diurnal and annual temperature cycling flattens global thermal profiles
doi: 10.1038/nclimate2378
今回、地球気温の高分解能データセットの解析から、温帯域と極域では気温変動プロファイルの熱帯化が進んでおり、生物に影響を及ぼし、ヒトの農業と健康に悪影響を与える可能性が明らかになった。
Modelled glacier response to centennial temperature and precipitation trends on the Antarctic Peninsula
doi: 10.1038/nclimate2369
南極半島の氷河では気温上昇によって急速な融解が起きているが、将来の融解の一部は降水量の変化によって相殺される可能性がある。今回、氷河と気候の関係を調べ、ある代表的な氷河は、降水量の変化より気温の変化の影響を受けやすいことが分かった。このことは、温暖化による融解の増加が、降水量の増加によって相殺される可能性は低いことを示している。
Quantifying underestimates of long-term upper-ocean warming
doi: 10.1038/nclimate2389
海洋には、人為的温暖化による熱の90%以上が貯蔵されている。今回、衛星観測結果と気候モデルを用いて海洋上層(水深0~700 m)の温暖化が調べられ、温暖化が小さい方に偏っていることが分かった。これは、南半球でのサンプリング不足が原因である可能性が最も高く、調整を行うと、海洋上層の熱含有量の見積もりは大きく増加した。
Time of emergence for regional sea-level change
doi: 10.1038/nclimate2397
今回、地域的な海水準上昇の人為的シグナルが、自然変動を超えて出現する時期が調べられた。熱膨張および密度と循環の変化を考慮すると、2040年代初期から中頃までに全球海洋の50%で人為的シグナルが出現するが、すべての変数を考慮すれば、2020年までに全球海洋の50%以上で人為的シグナルが出現することが示された。これは、表面気温よりもかなり早く、排出シナリオにはほとんど依存していなかった。
Detection and impacts of leakage from sub-seafloor deep geological carbon dioxide storage
doi: 10.1038/nclimate2381
今回、管理された状況で海底下に放出された二酸化炭素の漏出による生物学的影響と漏出範囲は、数十メートルに限定されることが明らかになり、本格的な炭素貯留事業での監視戦略が特定された。
Determinants of stagnating carbon intensity in China
doi: 10.1038/nclimate2388
今回、体系的な解析によって、炭素集約度の低減に関する中国の気候政策は中国の全ての地域の効率化には役立たず、実際には国全体の経済構造を長期的で排出集約的な構造にとどめる可能性が明らかになった。
Adaptation of a globally important coccolithophore to ocean warming and acidification
doi: 10.1038/nclimate2379
気候変動によって海洋の温暖化と酸性化が進行している。今回、全球的に重要な植物プランクトンであるEmiliania huxleyiの適応進化を調べ、進化によって海洋環境の変化に適応できることが明らかになった。
Deep-ocean contribution to sea level and energy budget not detectable over the past decade
doi: 10.1038/nclimate2387
全球海洋は、気候システムの重要な熱の貯蔵庫である。今回、海水準上昇と地球のエネルギー収支に関連付けて2005~2013年の海洋温暖化を調べ、どちらに対しても深海(水深2000 m以上)の寄与はごくわずかであることが明らかになった。
Recent Walker circulation strengthening and Pacific cooling amplified by Atlantic warming
doi: 10.1038/nclimate2330
1990年代後半から太平洋貿易風が強くなっており、これに関連して大気のウォーカー循環が強まっている。こうした変化の影響は知られるようになってきてはいるが、その原因は特定されていない。今回、観測結果とモデルを用いて、大西洋の海面の温暖化とそれに伴う気圧の中心の移動が、重要な駆動因であることが明らかになった。
Contribution of natural decadal variability to global warming acceleration and hiatus
doi: 10.1038/nclimate2355
地球温暖化の鈍化における10年規模の自然変動の役割は、示唆されてはいるが、定量化されていない。今回、1980年代、1990年代、2000年代について10年平均の地表気温の偏差が調べられた。その結果、10年変動は気温の変化傾向の大きな要因の1つとなっているが、その影響は、1980年代の47%から2000年代には27%と、人為起源の温暖化の進行に伴って低下していることが分かった。
Climate model simulations of the observed early-2000s hiatus of global warming
doi: 10.1038/nclimate2357
10年規模の自然変動を考慮すれば、短期的な傾向をより正確に予測できる。今回、太平洋数十年規模振動に同期している個々のモデルについて、現在の地球温暖化の鈍化をシミュレートする能力が調べられた。その結果、この手法を用いて1990年代に現在の傾向を予測できた可能性があり、信頼できる10年規模の予測には、一貫性のあるハインドキャスト(再予報)が必要であることが明らかになった。
Accelerated microbial turnover but constant growth efficiency with warming in soil
doi: 10.1038/nclimate2361
温度の上昇によって全球の土壌炭素貯蔵量が減少し、気候温暖化が強まるかどうかは明確になっていないが、その理由の1つは、温暖化に対する土壌の微生物の応答機構がほとんど解明されていないことである。今回、微生物の成長効率は温度変化に敏感ではなく、温暖化に対する微生物の呼吸の応答は、微生物の代謝回転と酵素反応速度の加速によって駆動されることが明らかになった。
Human land-use-driven reduction of forest volatiles cools global climate
doi: 10.1038/nclimate2347
歴史的な耕作地拡大の全球的な放射効果は、土地の炭素貯蔵量の減少(温暖化の原因となる)と地表面アルベドの増加(寒冷化の原因となる)のトレードオフとして推定されることが多い。今回、正味の大気化学的影響(−0.11 ± 0.17 W m−2)はこれらと同程度であり、こちらも考慮すべきであることが明らかになった。
Seasonal aspects of the recent pause in surface warming
doi: 10.1038/nclimate2341
全球的な温暖化の減速は、主に太平洋での変化を通して明らかになっている。今回、減速に関連するテレコネクションと季節的変化が調べられた。熱帯太平洋からの現在の強制力によって、大気循環の変化の多くが生じていることが明らかになった。例えば、上部対流圏の波動パターンの変化によって、ヨーロッパにおける厳冬の可能性が増している。
A systems approach to evaluating the air quality co-benefits of US carbon policies
doi: 10.1038/nclimate2342
温室効果ガス排出量削減の短期コストは、気候変動緩和政策によって同時に得られる大気環境に対する利益によって相殺される可能性がある。今回、米国の炭素削減政策による大気環境の改善が、ヒトの健康にもたらす利益の金銭的価値を見積もったところ、緩和政策のコストの26~1,050%が、この利益によって相殺されることが明らかになった。
Importance of food-demand management for climate mitigation
doi: 10.1038/nclimate2353
食料需要が倍増することになれば、将来の温室効果ガス総排出量の大きな割合を農業が占めることになるだろう。しかし、世界の食料生産と土地利用シナリオの気候変動の緩和との関連性は、比較的注目されていない。今回、農業の持続可能な強化自体では十分でないので、危険な気候変動を避けるには、食料需要に取り組まねばならないことが明らかになった。
Impact of the Keystone XL pipeline on global oil markets and greenhouse gas emissions
doi: 10.1038/nclimate2335
カナダのオイルサンド油田と米国内の精製施設および港湾施設を結ぶキーストーンXLパイプライン(計画中)は、大きな論争を巻き起こしてきた。今回、経済モデルに基づいて、このパイプラインが温室効果ガス排出量に及ぼす最大の影響は、国際石油価格の低下と、それに伴う世界の石油消費量(および関連する排出量)の増加によるものである可能性が明らかとなった。この分析により、キーストーンXLプロジェクトに関する既存の評価の欠陥が指摘された。
Uncovering an anthropogenic sea-level rise signal in the Pacific Ocean
doi: 10.1038/nclimate2307
気候システムの内部変動のため、地域的な海水準の上昇速度の確定が難しくなっている。今回、衛星海面高度計データを用い、自然変動を補正して、熱帯太平洋域における海水準上昇に対する人為的な寄与が調べられた。
Response of El Nino sea surface temperature variability to greenhouse warming
doi: 10.1038/nclimate2326
エルニーニョ/南方振動(ENSO)のいくつかの側面に対する気候変動の影響は確立されている。しかし、ENSO振幅を表わすのに一般的に用いられている海面水温の変化は、まだよく分かっていない。今回、海面の応答は時間的に変化し、2040年までは増大傾向で、その後は減少傾向となることが示された。挙動の方向が変わらないと予想していたこととモデル表現が非現実的であったことが、これまでの不確実性の原因であると考えられる。
Recent trends in African fires driven by cropland expansion and El Nino to La Nina transition
doi: 10.1038/nclimate2313
アフリカは景観の管理に火が広く用いられるため、「燃える大陸」と呼ばれることがある。今回、エルニーニョ/南方振動(ENSO)に伴う降水量の変化が、2001~2012年のアフリカにおける火災の傾向の説明に役立つことが分かった。しかし、サバンナから農地への土地利用の変化によっても、アフリカ大陸北部での火災は減少している。
The emerging anthropogenic signal in land–atmosphere carbon-cycle coupling
doi: 10.1038/nclimate2323
現在の地球システムモデルでは、人為的に強制された気候と大気の変化に対する陸域の炭素循環の応答をシミュレートする際に、人為的な強制によらない大気と陸面のCO2フラックスの変動が評価されていない。今回、世界の多くの地域では、この強制によらない変動が強制に対する応答より大きいために、数十年間の炭素循環の強制された変化の検出が妨げられていることが明らかになった。
Recently identified microbial guild mediates soil N2O sink capacity
doi: 10.1038/nclimate2301
二酸化窒素(N2O)は温室効果ガスであり、重要なオゾン層破壊物質である。農業土壌における微生物による窒素循環は、大気中のN2Oの主要な発生源である。今回、土壌のN2O吸収能力の大部分が、新たに報告されたN2O還元微生物群の存在量と多様性によって説明されることが分かった。
Increasing forest disturbances in Europe and their impact on carbon storage
doi: 10.1038/nclimate2318
風やキクイムシ、森林火災によるヨーロッパの森林攪乱は、気候変動に伴って増加しているが、将来の攪乱とそれに対する応答については、ほとんど分かっていない。今回、気候変動シナリオのアンサンブルに基づく研究から、今後数十年間で森林攪乱が増加し、森林の炭素貯蔵に影響を与える可能性が高いことが示された。
Combined speeds of climate and land-use change of the conterminous US until 2050
doi: 10.1038/nclimate2337
リスク評価、種の曝露の評価、適応計画には、地球規模の変化を示す生物学的に関連した測定基準が必要である。今回、気候変動と土地利用変化の両方を組み込んだ、地球規模での変化速度の新たな尺度が示され、観測された速度が米国の保全計画に及ぼす影響が調べられた。
Threat to future global food security from climate change and ozone air pollution
doi: 10.1038/nclimate2317
今回、気候変動によって栄養不良率が大きく増加し、作物被害を通して開発途上国の食料安全保障が脅かされる可能性があるが、シナリオによってはオゾン規制で気候の影響をかなり相殺できることが明らかになった。この結果は、政策立案者が、全球的気候変動の下での食料生産のために最適戦略を考案するのに役立つはずである。
Warming-related increases in soil CO2 efflux are explained by increased below-ground carbon flux
doi: 10.1038/nclimate2322
温暖化に応答した土壌炭素貯蔵量の減少は、気候変動を増強する強化フィードバックとなっている可能性がある。今回、熱帯山地多雨林では、(標高勾配で表される)長期的温暖化は地下の炭素プロセスを加速するが、土壌有機炭素の貯蔵量には明確な影響を及ぼさないことが明らかになった。
Technology transfer for adaptation
doi: 10.1038/nclimate2305
技術は気候変動適応策で重要な役割を果たすと期待されているが、実際に開発途上国への技術移転が行われているかどうかはほとんど分かっていない。今回、地球環境ファシリティーによるほとんどの適応プロジェクトでは、技術移転は主に既存の技術の早期展開という形で行なわれていることが明らかになった。
Well-estimated global surface warming in climate projections selected for ENSO phase
doi: 10.1038/nclimate2310
最近の全球的な温暖化の鈍化によって、気候モデルの予測の正確さに疑問が生じている。今回、エルニーニョ/南方振動(ENSO)における気候システムの自然変動とほぼ同期したモデルが選択された。選ばれたモデルは、最近の太平洋の海面水温と空間的傾向を予測できる。
Potential contribution of wind energy to climate change mitigation
doi: 10.1038/nclimate2269
風力タービンによる発電の増加は、気候変動緩和活動において重要な役割を果たす可能性がある。今回、温室効果ガス排出量が抑制され、エネルギー利用効率が向上すると仮定すると、今後数十年間で風カエネルギーをどれくらい積極的に取り入れるかによって、2℃という温暖化の閾値を超える時期を大幅に遅らせるか、完全に回避すらできる可能性が示された。
Potential for concentrating solar power to provide baseload and dispatchable power
doi: 10.1038/nclimate2276
発電の間欠性は、化石燃料を基盤とする電力体系から再生可能エネルギーを基盤とする電力体系へ移行する際の、唯一にして最大の障害とされることが多い。今回、砂漠に設置された太陽熱発電所網が、世界の4地域の重要なベースロード電源となり得る可能性が明らかになり、新技術が出現しなくても、あまり費用をかけずに電力体系を脱炭素化できる可能性が示された。
Insights from Antarctica on volcanic forcing during the Common Era
doi: 10.1038/nclimate2293
大規模な火山噴火による歴史的なエアロゾル強制は、氷床コアで測定された硫酸塩堆積物から再構築されている。今回、こうした記録が、南極の氷床コアをより幅広く集めて更新されて、新しい記録が得られるとともに公表されている記録の年代が正確に決定された。その結果、1500年より前の再構築結果は、全球的なエアロゾル強制をこれまで20~30%過大評価していたか、20~50%過小評価していたことが明らかになった。このことは、気候感度の見積もりに大きな影響を及ぼす。
Occurrence and persistence of future atmospheric stagnation events
doi: 10.1038/nclimate2272
大気の停滞は、大気汚染への曝露を増加させるため、健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある。今回、地球温暖化によってどのように今後の大気循環が変化し、大気停滞事象の頻度と持続時間にどのような変化がもたらされるか調べられた。その結果、こうした事象に曝される人口が全体的に増加することが明らかになり、大気汚染管理を評価する必要性が明らかになった。
Amplified mid-latitude planetary waves favour particular regional weather extremes
doi: 10.1038/nclimate2271
北半球中緯度域での極端な気象事象の増加は、この地域における大気の惑星波の増幅の結果であると提唱されている。今回、数か月に及ぶ極端な気象は惑星波の増幅と関連しており、程度の異なるさまざまな種類の極端事象を伴うことが見いだされた。
Drought survival of tropical tree seedlings enhanced by non-structural carbohydrate levels
doi: 10.1038/nclimate2281
地球上の多くの地域で干ばつの頻度と強度が増加し、立ち枯れが広範に生じていることから、樹木の耐乾機構が注目されている。今回、干ばつ前の高い非構造性炭水化物濃度が水力学的機能の維持に役立つため、10種類の熱帯樹木の実生で耐乾性が長期間持続することを示す直接的な実験的証拠が得られた。
Projected continent-wide declines of the emperor penguin under climate change
doi: 10.1038/nclimate2280
絶滅の危機にひんしている種の分類に用いられている基準は、全球的な個体数の見積もりに基づいており、保全のためには全球スケールの分析が重要になっている。今回、コウテイペンギン(Aptenodytes forsteri)の既知のコロニー全45か所について個体群動向を予測した研究によって長期的な減少が示されたが、その主な原因は南極の海氷状態の変化であった。
Skeletal trade-offs in coralline algae in response to ocean acidification
doi: 10.1038/nclimate2273
無節サンゴモ(CCA)は海洋酸性化ストレスの「申し子」となる可能性があるが、そのストレス応答については、自然な、つまり生態学的な状況ではほとんど調べられていない。今回、30年間にわたってpHが下降傾向にある海域の歴史的標本と現代の標本が比較され、4種のCCAで、炭酸カルシウムの利用に関わる骨格特性における、海洋酸性化に応答したトレードオフが明らかになった。
Interdependency of tropical marine ecosystems in response to climate change
doi: 10.1038/nclimate2274
気候変動に対する生態学的応答を予測しようとする際、隣接する生態系の間の関連性はほとんど考慮されていない。しかし、気候変動が藻場に及ぼす影響には、隣接するサンゴ礁生息地の応答が介在しているという知見から、生態系に対する気候変動の影響には、より幅広い考え方が必要であることが明らかになった。
Primary forest cover loss in Indonesia over 2000–2012
doi: 10.1038/nclimate2277
森林破壊は、気候や、生物多様性などの生態系サービスに影響を及ぼす。今回、インドネシアの原生林の減少速度が定量化され、ブラジルでの減少速度の鈍化とは反対に上昇していることが示された。この結果は、森林の変化を追跡する際の、主題の一貫した空間的・時間的に明確な情報の有用性を強調している。
Evolution of the Southern Annular Mode during the past millennium
doi: 10.1038/nclimate2235
南半球の気候変動は、降水量の緯度分布と気温に影響を及ぼす南半球環状モードに支配されている。今回、1000年以降の南半球環状モードの年変動が再構築された。その結果、1940年代以降の正の傾向は、典型的な温室効果ガスの強制力とオゾン層破壊を含む気候モデルシミュレーションによって再現されることが分かった。初期の傾向は熱帯太平洋の気候とのテレコネクションを示しており、気候変動下の予測に熱帯太平洋の気候を考慮に入れる必要があると考えられる。
Heavier summer downpours with climate change revealed by weather forecast resolution model
doi: 10.1038/nclimate2258
気候変動の下で極端な降水に変化が起きているが、それらが1日以下の時間スケールでどのように現れるのかはよく分かっていない。今回、気象予報で一般的に使われている高分解能モデルを用いて、2100年の英国における1時間ごとの降水量がシミュレートされた。その結果、冬季の降水量の増加に関するこれまでの知見が確認され、夏季の短時間の降水量が増加し、鉄砲水のリスクが高まっていることが分かった。
Arctic amplification decreases temperature variance in northern mid- to high-latitudes
doi: 10.1038/nclimate2268
北極温暖化増幅によって寒帯ジェット気流が変化し、北半球中緯度域の気温変動が増大すると考えられている。今回、中緯度域での極端な低温を調べ、最近の数十年間は、寒い季節の準季節的な変動が大きく減少していることが明らかになった。変動が減少した要因の1つは、北風とそれに伴う寒い日の方が、南風と暖かい日に比べてより急速に温暖化していることである。
A precipitation shift from snow towards rain leads to a decrease in streamflow
doi: 10.1038/nclimate2246
地表面温度が上がると、雪による降水量が減ると予想されている。これまでは、降雪量が減っても河川流量に大きな影響はないと考えられていた。今回、水収支の枠組みを米国内の集水域に適用し、降水量に占める降雪量の割合が増えると、平均河川流量が増加することが明らかになった。
Consistent increase in High Asia's runoff due to increasing glacier melt and precipitation
doi: 10.1038/nclimate2237
高地アジアの水資源と水文に対する気候変動の影響はよく分かっていない。今回、雪氷圏の水文モデルを用いて、この地域の5本の主要河川の水文を定量化し、将来利用できる水量が予測された。その結果、4本の河川の上流集水域の降水量増加と5本目の河川に流れ込む融解水の増加によって、少なくとも2050年までは河川流量が増加すると予想された。
Biomineralization control related to population density under ocean acidification
doi: 10.1038/nclimate2241
海洋環境に吸収される二酸化炭素は、底生の石灰化生物に対する海洋酸性化の影響を調べる「自然の研究室」となっている。今回、二酸化炭素濃度の上昇が個体群密度と生体鉱物化に及ぼす影響に注目した研究が行われた。この研究結果は、海洋酸性化に対する種特異的な応答を説明し、低pH条件での海洋生物種の存続を改善する可能性がある表現型可塑性の証拠を明らかにするのに役立つと考えられる。
Net carbon uptake has increased through warming-induced changes in temperate forest phenology
doi: 10.1038/nclimate2253
生活史事象の時機は生態系に強い影響を及ぼす。今回、米国東部の温帯林のフェノロジーが分析され、春が早く来た場合と秋が遅く来た場合には、炭素取り込み量(光合成)が炭素放出量(呼吸)よりかなり大きく増加することが示された。
Payback time for soil carbon and sugar-cane ethanol
doi: 10.1038/nclimate2239
バイオエネルギーを得るためにサトウキビの栽培が増加している。今回、世界最大の生産国であるブラジルで、自然植生や放牧地、既存の耕作地をサトウキビ農園に転換したときの土壌炭素収支に対する影響が調べられた。この研究で得られた知見は、バイオ燃料需要の増加に伴う、ブラジルでのより持続可能なサトウキビ生産の実現を目的とする政策の形成に役立つはずである。
Adaptation potential of European agriculture in response to climate change
doi: 10.1038/nclimate2228
農場の適応は、農業に対する気候変動の悪影響の緩和に、重要な役割を果たす可能性がある。今回、3種類の主要作物(トウモロコシ、コムギ、オオムギ)に注目して統計的方法を適用し、ヨーロッパの農業の適応能力が評価された。
Effects of double cropping on summer climate of the North China Plain and neighbouring regions
doi: 10.1038/nclimate2266
農地を拡大せずに食料需要の増加に対応するため、華北平原の多くの地域は一毛作から二毛作へ移行している。今回、こうした農業管理法の変化によって気候への生物物理学的フィードバックが変化し、東アジアの夏季の気候変動が増幅される可能性が明らかになった。
Invasive hybridization in a threatened species is accelerated by climate change
doi: 10.1038/nclimate2252
侵入種と在来種の間の異種交配(交雑)は、気候変動が生物多様性に影響を及ぼす過程の1つだが、残念なことに、この現象に関するデータはほとんどない。今回、急速な気候温暖化が、北米西部での侵略的交雑を通して在来種のカットスロートトラウト(Oncorhynchus clarkii lewisi)と外来種のニジマス(Oncorhynchus mykiss)の相互作用に悪影響を及ぼしていることが明らかになった。
Climate fails to predict wood decomposition at regional scales
doi: 10.1038/nclimate2251
気候は、地球システムモデルにおける有機物の分解速度の主な制御要因だと考えられている。今回、空間スケールに対するこの関係の感度が調べられ、地域的な分解動態の制御における地域的スケールの要因の重要な役割が明らかになった。
Optimal CO2 mitigation under damage risk valuation
doi: 10.1038/nclimate2249
現在の炭素排出量による長期的な経済的損失の試算や、気候変動対策の評価に用いられている統合評価モデルのほとんどは、決定論的なものである。今回、こうしたモデルに損害リスクを含めると、最適な排出量削減率と炭素課税率の見積りは、標準的な手法を用いて得られるレベルの2倍となることが明らかになった。
Adverse weather conditions for European wheat production will become more frequent with climate change
doi: 10.1038/nclimate2242
作物収量に対する気候変動の影響に関する研究は、気候の平均的状態に注目する傾向があった。今回、ヨーロッパでのコムギ収量に対する悪天候の影響が調べられ、ある季節に悪天候が1回以上起こる確率は、2060年までにかなり増加するという予測が示された。
A bargaining game analysis of international climate negotiations
doi: 10.1038/nclimate2229
気候変動に関する国際的合意に向けた進展はあまりに遅く、困難に満ちている。今回、現在の国際交渉における重要な障害の一部を概念的に明確化することを目的とする、新しいゲーム理論モデルが開発された。さらに、このモデルを用いて、こうした障害に対する実行可能な解決策が示唆された。
Air-pollution emission ranges consistent with the representative concentration pathways
doi: 10.1038/nclimate2178
代表濃度経路(RCP)は、気候モデリングの分野で行われる評価において中心的な役割を担っている。今回、さまざまなRCPにおける大気汚染物質排出量が包括的に評価され、21世紀の大気汚染物質が予測された。こうした予測によって、大気汚染物質が気候に及ぼすと考えられる影響の範囲についての理解が深まるはずである。
Ice plug prevents irreversible discharge from East Antarctica
doi: 10.1038/nclimate2226
海面より低い岩盤上にある東南極のウィルクス氷床は気候変動の影響を受けやすいが、この氷床の安定性と海水準上昇に対する潜在的寄与が包括的に評価されたことはなかった。今回、地形データと氷の動的シミュレーションを用いて、海岸から一定の量の氷が除かれると氷床は不安定になり、ウィルクス海盆全体の氷が流出して海水準が3~4 m上昇することが示された。
Observed changes in extreme wet and dry spells during the South Asian summer monsoon season
doi: 10.1038/nclimate2208
南アジアの夏の雨季は10億人以上に影響を及ぼしている。今回、1951年から2011年にわたる降水量の観測結果に統計的手法を適用し、日々の降水量変動、少雨期の頻度、多雨期の強さはかなり増加したが、少雨期の強さは減少したことが明らかになった。
Evolution of land surface air temperature trend
doi: 10.1038/nclimate2223
地球温暖化は時間的・空間的に均一ではないが、その潜在的影響を解明するには、温暖化の進行に関する理解を深める必要がある。今回、温暖化の傾向が分析され、温暖化は北半球の亜熱帯域と亜極域で始まり、南半球の亜熱帯域がそれに続いたことが明らかになった。北半球の温暖化地帯は1950年から1985年の期間に拡大し、合体して北半球全体に及んだ。
Greenhouse gas production in low-latitude lake sediments responds strongly to warming
doi: 10.1038/nclimate2222
陸水は、周囲の土地から有機物を集め、その一部が蓄積して有機炭素の重要な堆積物貯蔵庫となる。今回、熱帯域の気温上昇によって、湖沼堆積物の無機化速度と温室効果ガスの産生速度が、亜北極域の湖の2.4~4.5倍に増加することが明らかになった。
Nutrient availability as the key regulator of global forest carbon balance
doi: 10.1038/nclimate2177
今回、さまざまな気候帯の92か所の森林で得られた知見を統合した研究から、主に呼吸速度への影響を介して、栄養素の利用可能性が森林の炭素収支の決定に極めて重要な役割を果たしていることが明らかになった。こうした知見は、ほとんどの全球炭素循環気候結合モデルで用いられている前提の妥当性に疑問を投げかけるものである。
Nitrate assimilation is inhibited by elevated CO2 in field-grown wheat
doi: 10.1038/nclimate2183
高い大気中CO2濃度の下で栽培した植物ではタンパク質と窒素含有量が減少し、将来栽培される食物の品質に悪影響を及ぼす可能性があるが、この変化の機構はまだよくわかっていない。今回、野外条件の下での高い大気中CO2濃度に対する植物の応答を調べた研究から、高CO2濃度でのコムギの硝酸同化は、標準CO2濃度より遅くなることが明らかになった。
Hydrological effects of forest transpiration loss in bark beetle-impacted watersheds
doi: 10.1038/nclimate2198
北米ロッキー山脈の森林では、キクイムシの蔓延が気候変動によって悪化し、悪影響が生じている。今回、広範囲にわたる樹木の枯死による蒸散量の減少が、流域スケールでの水流発生過程に影響しており、水質に影響を及ぼす可能性が明らかになった。
Behavioural impairment in reef fishes caused by ocean acidification at CO2 seeps
doi: 10.1038/nclimate2195
室内実験によって、今世紀末までに海洋で生じると予測されるCO2濃度は、サンゴ礁の魚類の行動に障害を与える可能性があることが示されている。今回、天然の火山性CO2湧出域にあるサンゴ礁の魚類も行動異常を示し、高濃度のCO2に長時間曝されても行動の順応は見られないことが明らかになった。したがって、海洋の酸性化が拡大すると、CO2による行動異常という深刻な脅威に魚類群集が将来直面する可能性が高い。
Oyster reefs can outpace sea-level rise
doi: 10.1038/nclimate2216
海水準上昇は潮間帯のカキ礁にとって脅威であり、その危険性を定量化するにはカキ礁の成長速度に関する知識が必要である。今回、潮間帯のカキ礁の成長を直接測定した研究から、礁形成の経験的モデルが開発された。その結果、これまでの測定では成長が過小評価されており、今回調べたカキ礁は予測されている海水準上昇に適応できると考えられることが明らかになった。
Increased local retention of reef coral larvae as a result of ocean warming
doi: 10.1038/nclimate2210
今回、動的モデルを用いて、サンゴ幼生の生存と分散に対する海洋温暖化の影響が調べられた。その結果、全球的にほとんどのサンゴ礁で幼生の局所的滞留が大きく増加し、保全活動に対する個体群の応答性が高くなることが明らかになった。しかし、幼生の滞留によって個体群間の連結性も低下するため、局所的な個体群が深刻な攪乱を受けた場合の回復に影響を及ぼす可能性がある。
Cheap carbon and biodiversity co-benefits from forest regeneration in a hotspot of endemism
doi: 10.1038/nclimate2200
炭素貯蔵と生物多様性に寄与する、経済的に実行可能な森林管理戦略の選定は、難しい課題となることがある。今回、コロンビアのアンデス山脈西部における研究によって、自然に再生する森林が迅速に炭素を蓄積し、多様な生態学的群集を最小のコストで維持できることが明らかになった。
The interpretation of IPCC probabilistic statements around the world
doi: 10.1038/nclimate2194
IPCCは、確率的な表現を用いてモデル予測の不確実性を説明している。今回、17言語にわたる多国間研究によって、人々がIPCCの表現を、著者の意図とは違って50%に近い確率を示唆していると解釈していることが分かった。数字で表した範囲を添えると、人々の解釈はIPCCのガイドラインをより反映したものになった。
Effects of rising temperature on the viability of an important sea turtle rookery
doi: 10.1038/nclimate2236
温暖化する世界は、温度に依存して性が決まる種に困難をもたらす。ウミガメの重要な繁殖地では性比の偏りが大きくなりつつあり、今回、その影響が評価された。この研究は、子の性比を将来の実効性比に換算し個体群の評価につなげる方法を特定しており、保全活動の指針として役立つと考えられる。
Low-carbon infrastructure strategies for cities
doi: 10.1038/nclimate2160
気候変動を緩和する取り組みでは、都市が主導的役割を果たさなければならないことは広く認識されている。今回、以前のインベントリー研究に基づいて、世界の主要都市の温室効果ガス削減策が検討された。今回特定された削減策には、気候、産業、都市化密度、電力供給など、さまざまな都市の独自の特徴が反映されていた。
Climate impacts of energy technologies depend on emissions timing
doi: 10.1038/nclimate2204
天然ガスとバイオ燃料の利用は急速に広がっている。今回、温暖化対策の目標値に対してさまざまなエネルギー技術が評価され、メタンと二酸化炭素の両方を排出する技術の影響は、それらの利用時間に左右されることが明らかになった。気候に対する長期的な影響の変化が大きいため、緩和策として広く認められているいくつかの技術は、20年以内に不利になると考えられる。
September Arctic sea-ice minimum predicted by spring melt-pond fraction
doi: 10.1038/nclimate2203
気候変動による開水域の拡大に伴い、季節的な北極圏の海氷域面積の予測が注目を集めている。今回、春の融氷池面積を用いて、9月の北極圏の海氷最小値が予測された。融氷池の増加によって地表面アルベドが低下し、さらなる融解が起きて正のフィードバック機構が生じることから、この予測が正しいことが分かる。
The rate of sea-level rise
doi: 10.1038/nclimate2159
近年、海水準上昇と全球表面温度上昇はともに鈍化している。今回、海水準データを解析し、長期的な自然変動と海水準に対する人為的な影響が切り離された。自然変動を補正した結果、近年の海水準上昇は、それより前の期間に比べて鈍化していないことが明らかになった。
Inter-hemispheric temperature variability over the past millennium
doi: 10.1038/nclimate2174
古気候の気温記録は北半球での再構築が大部分を占めている。今回、陸域と海洋の代理指標記録から、南半球の1,000年間の気温が新たに再構築された。その結果、両半球の気温変動の非同時性が明確に示された。気候モデルと気候予測は、この結果を考慮に入れるべきである。
Distinct effects of anthropogenic aerosols on tropical cyclones
doi: 10.1038/nclimate2144
温室効果ガスとエアロゾルが熱帯低気圧の頻度と強度に及ぼす人為的な影響は、よくわかっていない。今回、エアロゾルによって熱帯低気圧の発達が遅れ、強度が弱くなり、暴風雨が早めに消滅するが、降雨帯が広くなり、降水量が増加することが示された。
The missing aerosol response in twentieth-century mid-latitude precipitation observations
doi: 10.1038/nclimate2173
大気中の微粒子の濃度増加は、北半球中緯度域の降水量と気温に影響すると予測されている。今回、エアロゾル濃度がこの領域の陸域降水量に影響することを示す証拠はほとんどないことが明らかになり、観測技術の変化によって、エアロゾルが降水量を抑制すると予想されていた時期の測定値が増加したことが原因であると考えられている。
Arctic ecosystem structure and functioning shaped by climate and herbivore body size
doi: 10.1038/nclimate2168
生態系内の単一種ではなく、生態系全体に対する気候変動の影響を解明することは、いまだに困難である。今回、北極圏の陸域生態系の機能に対する気候の直接的、間接的影響の研究から、ツンドラの一次生産、食物網構造、種の相互作用の強さに対する影響が明らかになった。
Consequences of warming on tundra carbon balance determined by reindeer grazing history
doi: 10.1038/nclimate2147
トナカイは北極付近の大半の地域で放牧されているが、放牧圧が気候変動および関連する気候フィードバックに及ぼす影響は、まだよく分かっていない。今回、長期的な環境操作実験を用いた研究によって、放牧圧の低いツンドラでは温暖化によって炭素シンクが減少するが、放牧圧の高いツンドラでは、影響は見られないことが明らかになった。
Land management and land-cover change have impacts of similar magnitude on surface temperature
doi: 10.1038/nclimate2196
土地被覆の変化が地表気候に及ぼす直接的影響については理解が進んでいるが、より集約的な土地利用への変化傾向の結果を調べた研究は少ない。今回、温帯の土地利用の変化の生物物理学的影響を調べた研究によって、正味の温暖化効果は、土地被覆の変化によるものと同程度であることが明らかになった。
Greater ecosystem carbon in the Mojave Desert after ten years exposure to elevated CO2
doi: 10.1038/nclimate2184
気候変動に対する陸域生態系の応答は、全球炭素収支の不確実性の大きな原因となっている。今回、モハーヴェ砂漠での10年間の生態系操作実験の結果から、CO2肥沃化によって、乾燥生態系での生態系炭素貯蔵がかなり増加することを示す直接証拠が得られた。
Biofuels from crop residue can reduce soil carbon and increase CO2 emissions
doi: 10.1038/nclimate2187
バイオ燃料による二酸化炭素排出量のライフサイクル・アセスメントでは、作物残渣の除去によって土壌炭素が減少する可能性を考慮しないことが多かった。今回、米国のコーンベルト(トウモロコシ栽培地域)全体における、トウモロコシ残渣の除去によるCO2排出量が見積もられ、土壌炭素の減少による排出量が総排出量を押し上げ、米国の法的義務を上回る可能性が示された。
Increasing stress on disaster-risk finance due to large floods
doi: 10.1038/nclimate2124
ヨーロッパの洪水による経済リスクの傾向の評価から、リスクファイナンス制度に対する現在と将来のストレスが高いことが明らかになった。洪水防護への投資、保険の適用範囲の拡大、公的補償基金の拡大によって、損害の規模や分布を抑制することができる。しかし、こうした気候変動適応策は、効率性、公平性、許容可能性の意味合いが大きく異なっている。さらに、災害リスクには空間的なばらつきがあるため、欧州連合内での各国間の相互支援が必要になると考えられる。
Vulnerability to the mortality effects of warm temperature in the districts of England and Wales
doi: 10.1038/nclimate2123
地域レベルの気温変化に対する脆弱性に関する情報によって、気候変動による健康リスクの評価が改善されると考えられる。今回、ジオコーデッドデータと空間的方法を用いた研究により、イングランドとウェールズの全ディストリクトでの死亡率に対する高温の影響が定量化された。南のディストリクトでは気温が1°C上昇すると死亡リスクが10%以上増加するのに対し、北のディストリクトでは大きな影響は見られなかった。
Inhomogeneous forcing and transient climate sensitivity
doi: 10.1038/nclimate2136
気候変動の予測には、さまざまな強制力に対する気候感度の解明が不可欠である。気候モデル相互比較プロジェクトの結果を解析したところ、二酸化炭素と比べてエアロゾルやオゾンに対する気候感度がより高いことが明らかになった。この結果は、二酸化炭素に対する気候応答を1.3°C未満とする低い範囲の予測は、可能性が低いことを意味している。
Cessation of deep convection in the open Southern Ocean under anthropogenic climate change
doi: 10.1038/nclimate2132
南大洋は、外洋で表層から深層まで達する深い鉛直対流が生じる主な海域である。観測データとモデルシミュレーションを用いて、1950年代以降は表層水が淡水化しており、この淡水化の結果、深い鉛直対流が弱まっていて、停止する可能性もあることが明らかになった。これは、底層水の形成や、海洋における熱と炭素の貯蔵に影響を与える。
Fewer large waves projected for eastern Australia due to decreasing storminess
doi: 10.1038/nclimate2142
大きな海洋波は、主に温帯低気圧に伴う風によって生じている。しかし、現在の全球気候モデルでは、こうした風は十分に表されていないため、波の予測が難しくなっている。今回、オーストラリア東部での大きな海洋波の発生に関する統計的研究をさまざまな気候モデルに適用し、人為的な影響に関する結論を導きだすことができ、海洋波の予測が改善された。
A meta-analysis of crop yield under climate change and adaptation
doi: 10.1038/nclimate2153
今回、農業に対する気候変動の影響をシミュレートした研究の包括的な概要が、メタ解析で報告されている。今回の知見は、条件の変化に対する適応対策がなければ、局所的な温暖化が比較的緩やかな場合でも、温帯と熱帯の栽培地帯でコムギ、イネ、トウモロコシの総収量の減少が予測されることを示唆している。
Sustained mass loss of the northeast Greenland ice sheet triggered by regional warming
doi: 10.1038/nclimate2161
グリーンランド氷床は南東部と北西部の氷河の速度が増加しているため、海水準上昇の大きな要因の1つとなっている。今回、グリーンランド北東部のこれまで安定していた氷流を調べ、地域的な温暖化による薄化が起きていることが明らかになった。この地域はグリーンランド氷床全体の16%に相当する氷を流出させているが、海水準上昇のモデル予測では考慮されていないため、グリーンランドの寄与が過小評価されていることが示された。
Integrating emissions transfers into policy-making
doi: 10.1038/nclimate2102
炭素排出量の移転の大部分は、国際貿易によるものであり、主に開発途上国から先進国へ移転されている。今回、排出量の移転に取り組むさまざまな政策の分析が行なわれた。環境面と経済面の両方で最も有望な選択肢は、先進国が開発途上国のクリーン開発プロジェクトに資金を提供し、貿易に関連する排出量を相殺することである。
Heat stress increases long-term human migration in rural Pakistan
doi: 10.1038/nclimate2103
住民の移動と気候事象の関係についての証拠は限られている。今回、パキスタン農村部での長期的な調査で得られた情報と、観測衛星で得られた気候変動の測定結果を結びつける研究が行われた。その結果、熱ストレスが収入に影響を及ぼすため、男性の長期的移住が常に増加することが明らかになった。
Economic development and the carbon intensity of human well-being
doi: 10.1038/nclimate2110
経済発展によって人間の生活状況は改善されるが、自然環境には負担がかかっている。今回、経済発展と、人間の幸福に伴う炭素集約度、すなわち人為的な二酸化炭素排出量と出生時平均余命の比率の40年にわたる関係が世界的に見積もられた。最近の数十年間のアフリカ諸国を含めて、研究対象となったほとんどの国が、持続不可能な開発経路をたどっていた。
Climate warming will not decrease winter mortality
doi: 10.1038/nclimate2121
最近の報告では、温暖な国々では人為的な気候変動による冬季の温暖化が進むにつれて、冬季の死者数が減少する可能性が高いことが示唆されている。今回、冬季の気温と英国のイングランドとウェールズにおける1951~2011年の冬季の過剰死亡者数の関係を調べた研究から、この関係に有意性が見られたのは1970年代中頃までであり、それ以降の冬季の過剰死亡者数の変動はどれも、他の要因で説明できることが明らかになった。
Taming hurricanes with arrays of offshore wind turbines
doi: 10.1038/nclimate2120
世界の多くの沿岸地域で、ハリケーンによる損害が増加している。今回、大型の風力タービン群によって、ハリケーンの地表付近の最大風速と高潮を著しく軽減できることが明らかになった。タービン群の正味費用は、現在の化石燃料発電や、高潮の損害を避けるための護岸の正味費用よりも低くなった。
A global perspective on CMIP5 climate model biases
doi: 10.1038/nclimate2118
将来の気候条件の予測には、モデルが一般的に使用されている。今回、22の気候モデルの海域別海面水温の偏りを調べ、こうした偏りは大西洋の大規模な循環系と関係していることが明らかになった。気候モデルの改良では、遠隔域の偏りが海域的な過程に及ぼす影響の考慮が必要になる。
Ecological stability in response to warming
doi: 10.1038/nclimate2134
気候温暖化に対する種レベルでの応答については数多く報告されているが、温暖化の下での生態系レベルの安定性についてはあまり解明されていない。今回、気温が代謝率、摂食率、集団の大きさに及ぼす影響に関するメタ分析と、機械論的な捕食者・被食者モデルを用いた研究から、温暖化によって捕食者・被食者動態は安定化するものの、捕食者が飢餓にさらされるリスクが明らかになった。
Impacts of climate change on marine ecosystem production in societies dependent on fisheries
doi: 10.1038/nclimate2119
世界の漁業の将来的な持続可能性は解明されていない。今回、全世界の漁獲高の60%を占める67の排他的経済水域に、気候変動に対する物理学的応答、生物学的応答、人的応答のモデルを適用した。この結果、漁業への依存度が異なる国々に対する気候変動の影響を予想することができた。
Life history and spatial traits predict extinction risk due to climate change
doi: 10.1038/nclimate2113
生物多様性の保全が気候変動によって根本から変化し、脆弱性評価で用いられている方法など、多くの確立された方法が有効でなくなる可能性がある。今回、シミュレーション研究によって、測定可能な空間的変数と人口統計学的変数を用いて、気候変動による絶滅リスクを予想できることが明らかになった。興味深いことに、重要であると確認された変数のほとんどは、すでに種の保全評価で利用されていた。
Recent intensification of wind-driven circulation in the Pacific and the ongoing warming hiatus
doi: 10.1038/nclimate2106
地球表面の温暖化が遅くなっているが、最近、これが太平洋東部の海面の寒冷化と結び付いていることが明らかになった。今回、貿易風が強くなったために、2012年の全球平均表面気温が0.1~0.2℃低下したことがわかった。これは、温暖化の中断の大半を説明できる可能性があり、海洋表層の下での熱の取り込みが増加した結果である。
A quantitative evaluation of the public response to climate engineering
doi: 10.1038/nclimate2087
気候工学によって従来の気候変動緩和政策を支援できるかもしれないが、この方法は議論を呼ぶ可能性がある。従って、意思決定の前に、気候工学の採用に対する公衆の懸念を理解しておくことが重要である。今回、企業がブランド評価に用いる方法を利用した研究から、気候工学に対する一般の評価は全体的に否定的であることが明らかになった。
Increasing frequency of extreme El Niño events due to greenhouse warming
doi: 10.1038/nclimate2100
極端なエルニーニョ現象は気象パターンの全球的な崩壊をもたらし、降水量の変化を通して生態系と農業に影響を及ぼす。今回、モデル予測によって、東部赤道太平洋での海面温暖化の進行によって極端なエルニーニョ現象の発生に必要な大気条件が生じ、こうした事象の頻度が倍増することが明らかになった。
Retreat of Pine Island Glacier controlled by marine ice-sheet instability
doi: 10.1038/nclimate2094
現在、西南極のパイン島氷河は薄くなりつつあり、接地線が後退している。今回、3つの氷流モデルを用いてこの氷河の安定性を調べた研究から、接地線がさらに40 km後退する可能性が示された。これは、20年間で3.5~10 mmの海水準上昇に相当する。
El Niño–La Niña cycle and recent trends in continental evaporation
doi: 10.1038/nclimate2068
気候変動によって水循環が強化されると予想されているが、これについてはまだ明確になっていない。今回、衛星観測結果を利用して陸域の蒸発量の変化が調べられ、北半球高緯度域では予想通りに増加していることが示された。しかし、全球の数十年スケールの変動はエルニーニョ/南方振動サイクルに支配されている。
Abundance changes and habitat availability drive species’ responses to climate change
doi: 10.1038/nclimate2086
種が気候温暖化に応答して地理的な生息範囲を拡大する速度は、さまざまである。今回、英国の蝶類に関する研究から、個体数の安定または増加が、生息範囲拡大の必要条件であることがわかった。この結果は、個体数の変動傾向の評価が、気候変動に対する種の応答に関する予測の改善に役立つ可能性があることを示唆している。
Genetic diversity in caribou linked to past and future climate change
doi: 10.1038/nclimate2074
比較的安定な気候史を経験してきたカリブー個体群は遺伝的多様性が高く、気候の安定性が持続すると予想される地域に生息している。分子データの分析、予測される種の分布、拡散モデルに基づくこうした知見から、種の遺伝子構造と進化の潜在能力の制御において、過去と未来の気候変動が果たす役割に関する手がかりが得られた。
Carbon stock corridors to mitigate climate change and promote biodiversity in the tropics
doi: 10.1038/nclimate2105
生物多様性の保全と土地利用に基づく気候変動の緩和を最大にするための保護地域の優先順位付けは、重要な政策であり研究課題である。今回、生息地の連結性を維持しつつ、熱帯域の保護地域の間にあるバイオマス量が最も多い地域を保護している回廊が特定された。
How warm days increase belief in global warming
doi: 10.1038/nclimate2093
異常気温が気候変動に関する人々の考え方にどのように影響を及ぼすかは、ほとんど分かっていない。今回、意見形成に用いられるのは、今日の気温についての利用可能な情報であることが明らかになった。しかしながら今日の気温についての利用可能な情報は、全球パターンが示す証拠より関連性が低い。異常気温を経験すると、人々は、過去の同じような事象の頻度を過大評価し、地球温暖化が進行しているという確信を高めている。
Sensitivity of collective action to uncertainty about climate tipping points
doi: 10.1038/nclimate2059
今回、気候が転換点に近づいていることを示す早期警報に関する研究から、破局を避けるための共同行動は、危険な気候変動の閾値に関する不確実性が低下したときしか行われないことが示唆された。今回実験によって、閾値の不確実性の境界線の両側で、ふるまいが劇的に変化し、不確実性がわずかでも大きいときには破局を避けられないことが明らかになった。
Continued global warming after CO2 emissions stoppage
doi: 10.1038/nclimate2060
人為的な二酸化炭素の排出が止まっても、気温がにわかに低下することはないであろう。今回、地球システムモデルを用いて、当初は気温が低下するが、その後は温暖化が進む可能性が明らかになった。これは、海洋の熱吸収の減少によるフィードバックが、大気中の二酸化炭素の減少による寒冷化を上回る結果である。
Extreme summer weather in northern mid-latitudes linked to a vanishing cryosphere
doi: 10.1038/nclimate2065
北半球では、高緯度域において夏季の海氷面積と積雪面積の記録的な減少がみられ、近年は中緯度域においても夏季の極端な気象事象が増えている。これらの関係は明らかになっていないが、雪氷圏の減少に起因する大気循環の変化が夏季の極端な気象事象と関係していることが、今回明らかになった。
High Arctic wetting reduces permafrost carbon feedbacks to climate warming
doi: 10.1038/nclimate2058
グリーンランド北西部で行なわれた長期的な気候操作実験によると、高緯度北極圏の半砂漠地域の二酸化炭素シンク強度は、気候の温暖化と湿潤化が組み合わさると1桁増加する可能性がある。こうした知見は、将来の地球温暖化の下でも、高緯度北極圏の一部の地域が強力な炭素シンクであり続ける可能性を示唆している。
Partial offsets in ocean acidification from changing coral reef biogeochemistry
doi: 10.1038/nclimate2050
サンゴ礁系の水化学は、外洋の水化学とは大きく異なっていると考えられる。今回、バミューダでの観測に基づく研究で、海洋酸性化に対するサンゴ礁生物群集の応答によって海水のpHとアラゴナイト飽和度の変化が部分的に相殺される可能性が示された。
Resilience and signatures of tropicalization in protected reef fish communities
doi: 10.1038/nclimate2062
海洋環境は気候変動の脅威にさらされている。今回、海洋保護区では、温暖化した環境でも生物多様性と大型個体の個体数を維持できることが明らかになった。さらに、漁場に比べて生息範囲を変化させる種の定着からも守られていた。
Mid-latitude westerlies as a driver of glacier variability in monsoonal High Asia
doi: 10.1038/nclimate2055
熱帯モンスーンは、高地アジアの氷河変動に重要な役割を果たしていると考えられている。今回、チベット高原南部の氷河の質量収支は、中緯度域の気候と熱帯モンスーンによって調節される5~6月の降水量によって決まることが明らかになった。従って、氷河変動を理解するには、中緯度域の気候にさらに注目していくべきである。
Intra- and intergenerational discounting in the climate game
doi: 10.1038/nclimate2024
集団意思決定における遅延割引の役割は、ほとんど解明されていない。今回、協力による利益について理解するため、気候変動に関連する集合的リスクについての集団実験を用いて、さまざまな時間枠における協力行動が分析された。その結果、利益がずっと先の未来まで得られない場合、つまり世代間割引では、協力が大きく減少することが分かった。
Water–CO2 trade-offs in electricity generation planning
doi: 10.1038/nclimate2032
発電に必要な水の量は、二酸化炭素排出量の削減に伴って増加すると予測されている。今回、米国テキサス州の電力網の容量拡大モデルによって、電源構成の設計における二酸化炭素排出量と水使用量のトレードオフが示された。「水資源とエネルギーの関連」についての理解が深まれば、エネルギー部門の緩和計画と適応計画の協調に役立つと考えられる。
Robust spatially aggregated projections of climate extremes
doi: 10.1038/nclimate2051
極端な気候の予測には、大きな不確実性が伴っている。今回、気候システムの内部変動がこうした不確実性の主な原因であることが明らかになった。しかし、地域全体で平均すると、モデルによる予測が一致し、将来の極端事象に関する確かな予測が可能になる。
Hybridization may facilitate in situ survival of endemic species through periods of climate change
doi: 10.1038/nclimate2027
気候変動の下で種が生き残る可能性を予測するには、その種の適応可能性について理解する必要がある。今回、適応を促進する可能性がある機構の1つである交雑に関する研究から、最終氷期極大期を生き残った Pachycladon 属の植物種は、交雑による遺伝情報の移動の恩恵を受けていたことが明らかになった。
Digestion in sea urchin larvae impaired under ocean acidification
doi: 10.1038/nclimate2028
幼生期の生物は環境の変化に対して特に脆弱である。今回、海洋酸性化は、ウニの幼生の消化過程に、胃内pHの低下による消化効率の低下という影響を及ぼすことが明らかになった。補償摂餌を行っても、幼生のエネルギー収支が影響を受ける可能性が高い。
Attributing mortality from extreme temperatures to climate change in Stockholm, Sweden
doi: 10.1038/nclimate2022
極端な気候事象が増加しつつある。今回、ストックホルムでの猛暑による死者数の研究から、1980~2009年の死者数は、気候変動が起きなかった場合の2倍に達していたことが明らかになった。さらに、冬季の平均気温が上昇しているにもかかわらず、極端な低温の頻度がやや増加しており、冬季の数か月の死者数がわずかに増加した一因となった。
Observed and predicted effects of climate change on species abundance in protected areas
doi: 10.1038/nclimate2035
保護地域ネットワークは気候変動の下でも有効であろうか。今回、気候変動に対する鳥類個体群の応答を調べ、この問題を明らかにしようという試みがなされている。その結果、調べた多くの種で個体数の減少が予測されるにもかかわらず、英国におけるEUの特別保護地域に指定されたほとんどの地域で、保全価値と法的地位が維持されると予測できることが示唆された。
Challenges in quantifying Pliocene terrestrial warming revealed by data–model discord
doi: 10.1038/nclimate2008
今回、代理指標に基づく気温推定値とバイオームの復元に関する全球データセットを用いて、8つの気候モデルの鮮新世の温暖環境をシミュレートする能力が評価された。モデルの結果から、北半球における大きな低温バイアスが明らかになった。感度試験によって、モデルとデータの不一致の重要な要因として、時間的変動、つまり代理指標の時間範囲での気温差が特定され、将来の比較では軌道強制力が等しい時間断面に焦点を絞るべきであることが示された。
Global warming amplified by reduced sulphur fluxes as a result of ocean acidification
doi: 10.1038/nclimate1981
今回、コンピューターシミュレーションを用いて、海洋酸性化が海洋の生物起原硫黄の放出に及ぼす影響と、それに起因する将来の気候へのフィードバック機構が定量化された。この結果は、人為的な二酸化炭素排出の削減は、海洋酸性化が海洋生物に及ぼす悪影響を抑えるためだけでなく、生物起源硫黄の生産量の変化による気候温暖化の増幅を避けるためにも必要なことを強調している。
The impact of temperature on marine phytoplankton resource allocation and metabolism
doi: 10.1038/nclimate1989
今回、海洋性植物プランクトンの成長戦略、代謝、組成に対する水温の影響について、さまざまな技術を用いた調査が行なわれた。この取り組みにより、資源配分と海洋性植物プランクトンの元素組成比に、これまで知られていなかった重要な役割を水温が果たしており、海洋での生物地球化学的循環に大きな影響を与えることが示された。
Crop pests and pathogens move polewards in a warming world
doi: 10.1038/nclimate1990
気候変動に応答して作物の害虫と病原体の緯度範囲がどの程度変化するかは、まだほとんど解明されていない。今回、数百種類の害虫と病原体の観察結果から、1960年以降、平均で1年に2.7±0.8 kmの速度で極地に向かって移動していることが明らかになり、気候によって害虫が移動するという仮説が裏付けられた。
Mapping vulnerability and conservation adaptation strategies under climate change
doi: 10.1038/nclimate2007
気候影響のリスクマップは、生態系の損失を最小限に抑える取り組みの目標を定めるのに役立つ可能性がある。しかし、ほとんどのリスクマップで特定されているのは、気候災害の危険がある地域のみである。今回、適応能力の尺度として無傷の自然植生の割合も明確にした研究から、気候変動に対する世界の生態地域の脆弱性の見積もりが得られた。
Sensitivities of extant animal taxa to ocean acidification
doi: 10.1038/nclimate1982
海洋酸性化が生態系におよぼす脅威の厳しさには、まだほとんど解明されていない。今回、広範囲の二酸化炭素濃度に対する5つの動物分類群の感受性を解析したところ、分類群内と分類群間での応答の多様性が見いだされ、酸性化によって今世紀中に海洋生態系に大きな変化が起こる可能性が示された。
Co-benefits of mitigating global greenhouse gas emissions for future air quality and human health
doi: 10.1038/nclimate2009
温室効果ガス排出量を削減すると、同時に放出されている大気汚染物質も減少することが多く、ヒトの健康にとっても有益である。二酸化炭素の削減によって同時に得られる利益の1つは大気汚染による死亡を防げることであり、地球温暖化緩和シナリオを基にその利益を推定すると、二酸化炭素削減量1トンあたり約50~380ドル(約5000~38000円)になった。この値は、2030年と2050年の温室効果ガス排出量削減の予想費用を上回っており、2100年の予想費用でも低い範囲に入る。
Long-term CO2 production following permafrost thaw
doi: 10.1038/nclimate1955
今回、堆積物のサンプリングと培養を繰り返し行って、1996~2008年のグリーンランド北東部における、融解による永久凍土の炭素貯蔵量の長期的減少が定量化された。永久凍土の活動層は1年当たり1センチメートル以上増加していたが、炭素貯蔵量の減少は検出できなかった。実験室での研究から、好気条件下では急速な炭素放出が起きる可能性が明らかになったが、炭素が飽和状態に近い場合には、数十年にわたって炭素がほとんど放出されない可能性も示された。
Observed changes in the albedo of the Arctic sea-ice zone for the period 1982-2009
doi: 10.1038/nclimate1963
アルベドは、北極域のエネルギー収支の重要な要素であり、気候のモデル化には、アルベドの十分な解明が不可欠である。今回、1980~2009年の北極海氷域の変化を分析したところ、夏の終わりの海氷域のアルベドが低下していることが明らかになった。調べた期間にわたってアルベドの低下率が加速していることも分かった。
Adapted conservation measures are required to save the Iberian lynx in a changing climate
doi: 10.1038/nclimate1954
スペインオオヤマネコの個体数は20世紀に大きく減少した。今回、生態モデル研究によって、気候変動や餌動物の入手可能性、管理的介入の影響が明らかになり、野生のスペインオオヤマネコが今後50年間で絶滅する可能性が示された。しかし、入念に計画された再導入プログラムがあれば、今世紀中の絶滅が避けられる可能性がある。
Prediction of seasonal climate-induced variations in global food production
doi: 10.1038/nclimate1945
食品市場の価格変動が大きくなったり極端な気候の発生率が高くなったりすれば、食料価格の急上昇がより頻繁に起こる可能性がある。主要な穀物の過去の不作事象を再現する穀物シミュレーションの信頼性を世界規模で評価したところ、世界の食物生産の監視に季節予報が役立ち得ることが示唆された。
Global soil carbon projections are improved by modelling microbial processes
doi: 10.1038/nclimate1951
地球システムモデル(ESM)では、気候変動に対する土壌炭素の応答はおおまかにしか表されていないことが多い。今回、微生物による土壌炭素の循環メカニズムを明確に記述するESMで炭素プールをシミュレートしたところ、観測結果と極めてよく一致した。このモデルでは、従来のEMSより広い範囲の21世紀の気候変動に対する土壌炭素の応答が予測される。
Coastal habitats shield people and property from sea-level rise and storms
doi: 10.1038/nclimate1944
極端な気象、海水準上昇、沿岸部の生態系の劣化はどれも、沿岸地域がさらされているリスクを増大させる要因となっている。今回、アラスカとハワイを除く米国本土が直面している危険に関する研究から、手つかずの礁や沿岸部の植生によって、被害の可能性や大きさを低減できることが明らかになった。
Global imprint of climate change on marine life
doi: 10.1038/nclimate1958
地域的、世界的な気候変動に対する生物学的応答に関する、利用できる全ての研究を組み合わせた調査から、全観察結果の81~83%が予想された気候変動の影響と一致することが示された。今回の結果はさまざまな分類群や海盆で再現された。
Attributing the increase in atmospheric CO2 to emitters and absorbers
doi: 10.1038/nclimate1942
大気中の二酸化炭素濃度を上昇させた責任を特定する正確な手順は存在しないが、これは、炭素シンクを明らかにし排出と関連付ける方法に、結果が密接に依存するからである。今回、地理的制約のある炭素シンクを仮定する方法と、制約のない炭素シンクを仮定する方法の2つを用いた研究から、二酸化炭素の歴史的増加の大部分は先進国が原因であることが明確となった。
Future distribution of tundra refugia in northern Alaska
doi: 10.1038/nclimate1926
北極の気候変動が進んでツンドラの生物群集が後退するにつれ、北方種の群集が北に広がっている。これと同時に北極におけるヒトの活動が増加している。今回、学際的アプローチによって、ツンドラにおける将来の種の分布が調べられ、待避地域の位置とアラスカ北部の異なる土地利用慣行が関連付けられた。
A bottom-up institutional approach to cooperative governance of risky commons
doi: 10.1038/nclimate1927
合意を守らない国を取り締まる仕組みがないため、気候変動に関する協力には限界があった。今回、世界機関の設立という従来のトップダウン方式とは対照的に、ただ乗りを罰する地域的な国際機関を関係国が作るというボトムアップ型のプロセスにより、幅広い協力が促進されることが示された。
Future flood losses in major coastal cities
doi: 10.1038/nclimate1979
沿岸都市部の洪水による被害費用は、人口や資産が増加するため今後さらに大きくなるだろう。今回、最大級の沿岸都市圏136か所の平均被害額が定量化された。2005年には約60億ドル(約6000億円)と見積もられていた平均年間被害額が、予測される社会経済的変化によるものだけでも、2050年には520億ドル(約5兆2000億円)に増加する可能性がある。気候変動や地盤沈下も考慮に入れると、許容できない損害を避けるには、現在の洪水防護対策を改善する必要がある。
Anthropogenic impact on Earth’s hydrological cycle
doi: 10.1038/nclimate1932
気候変動が全球水循環におよぼす影響は明らかになっておらず、陸域の降水量と河川流量は予想されたほど増加してない。この食い違いについて調べたところ、1950年代から1980年代にかけて、対流圏エアロゾルによって水循環が弱まっていたことがわかった。1980年代以降は温室効果ガスの増加によって水循環が強化されており、現在の傾向が続けば降水量はさらに増加することが示された。
Changes in rainfall seasonality in the tropics
doi: 10.1038/nclimate1907
気候変動によって、降水量の季節分布や経年変動、総降水量が変化している。今回、降水の季節性の新たな全球的尺度が提案され、熱帯域の観測結果に適用したところ、変動の増大とともに季節的な降水量、降水の時機や継続時間が変動していたことが明らかになった。
Global flood risk under climate change
doi: 10.1038/nclimate1911
気候温暖化に伴い、洪水リスクが増加すると予想されている。今回、複数の気候モデルを用いて、21世紀末の世界の洪水リスクが初めて推定された。この推定結果から、一部の地域では洪水の頻度が大きく増加するが、他の地域では減少すること、脆弱性は温暖化の程度と降水量の経年変動に左右されることがわかった。
El Niño modulations over the past seven centuries
doi: 10.1038/nclimate1936
エルニーニョ/南方振動(ENSO)は、数十年から数百年の時間スケールのかなり大きな自然変動を示すため、気候変動がどのように影響を及ぼしているのかわかりにくい。今回、過去のENSOが再構築され、過去7世紀と比べて20世紀後半のENSO活動は異常に活発だったことが明らかになった。この結果は、地球温暖化に対する応答を示唆するものであり、気候モデルや予測を改良する上で制約を与える。
Uncertainty in simulating wheat yields under climate change
doi: 10.1038/nclimate1916
標準化モデルの大規模な相互比較プロジェクトによって、気候変動の影響を予測する際の不確実性の定量化が可能になった。今回の研究はこれまでで最も大規模なものの1つであり、個々の収穫モデルはさまざまな環境でのコムギの収穫量を正確にシミュレートできるが、収穫モデル間の相違が不確実性の主な原因であることを示している。
Woody plant encroachment facilitated by increased precipitation intensity
doi: 10.1038/nclimate1904
気候変動は、多くの地域で降水強度を増大させると予想されている。実験によって、総降水量ではなく降水強度のわずかな増加で、水が土壌により深く浸透するようになり、サバンナ系では草に換わって大きな木本植物が成長する可能性が示された。
Clouds and temperature drive dynamic changes in tropical flower production
doi: 10.1038/nclimate1934
気温、日射量、降水量の変化などが熱帯林の生産性に及ぼす競合的な影響は、解明が難しい。今回、雲、気温、降水量が2つの対照的な熱帯林における開花量におよぼす影響を分析したところ、気温が熱帯林の開花量の極めて重要な変数であることが示された。
Risk maps for Antarctic krill under projected Southern Ocean acidification
doi: 10.1038/nclimate1937
ナンキョクオキアミは食物連鎖の重要な要素だが、海洋酸性化に対する感受性についてはほとんどわかっていない。今回、予測されている海洋酸性化レベルに対する南極周辺のオキアミのふ化成功率のリスクマップが作成された。オキアミの重要な繁殖域は21世紀中にリスクが高くなり、二酸化炭素排出量が削減されなければ、オキアミの個体群は2300年までに崩壊する可能性がある。