2024年1月号Volume 21 Number 1
忘れられた古いリンゴを蘇らせる
米国では、かつて栽培されていた数百品種のリンゴが姿を消している。そうした中で、育種家たちは、次の大ヒットリンゴの風味や食感を生み出すような遺伝的バリアントを見つけるために、半ば忘れられた古い品種のリンゴのゲノムを探索し、この比類なき果実を未来につなごうとしている。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「難しい材料の3D印刷の問題を接着剤が解決」「ひび割れを自己修復する合成ダイヤモンド」「乳幼児の新型コロナウイルス感染後の免疫応答」「オゾンホールの修復で低温に戻る南極海」、他
News in Focus
遺伝子編集したブタの腎臓を移植されたサルが2年間生存
この生存期間は異種間移植の中でも最長クラスであり、ブタ臓器のヒトへの移植に一歩近づいた。
反物質も重力によって下向きに落ちる
「反物質も物質と同様に落下するのか?」今回、数十年にわたり捉えることのできなかった現象がついに観測され、この素朴な疑問への答えが得られた。
ヒツジのドリーの遺産は今も生き続ける
現在のCRISPR家畜を支えているのは、ドリーを作製した技術である体細胞核移植であるが、この分野に変化が迫っている。
AIを活用し次のパンデミックに備える
機械学習プログラムを用いてウイルスの進化を予測し、ワクチンを設計するという研究が行われている。
論文中の問題画像を特定するAIツールの現状
人工知能アルゴリズムは1本の論文中の重複画像をわずか数秒でチェックできる。
抗肥満薬の副作用:これまでに分かったこと
セマグルチドとチルゼパチドなどの薬の需要が増えるにつれ、その潜在的な副作用に対する関心が高まってきている。研究者たちは、2023年10月に発表された論文を通じて、いくつかの知見を共有した。
認知症予防に関係する脳細胞
リーリン発現ニューロンやソマトスタチン発現ニューロンが豊富に存在すると認知機能の低下から逃れられるかもしれない。
問われ始めた生態学の再現性
同じデータセットを与えられた246人の生物学者が異なる結果を導き出し、データ解析における選択が研究の結論を左右することが明らかになった。
小惑星探査機が採取した破片に生命の構成要素
NASAの探査機オシリス・レックスが地球に持ち帰った小惑星ベンヌのサンプルには炭素と水が含まれていた。
Features
太陽を間近で調べる2機の探査機
2機の太陽観測探査機が、活発な活動を続ける太陽を至近距離から見つめ、太陽科学を書き換えつつある。
忘れられた古いリンゴを蘇らせる
育種家たちは、半ば忘れられた古い品種のリンゴのゲノムを探索し、この比類なき果実を未来につなごうとしている。
環状RNAが開くRNA治療の新境地
直鎖状RNAよりも安定な環状RNAは、RNA治療の新たな扉を開くかもしれない。
News & Views
ヒト族による既知最古の木製構造物
今回アフリカで、ヒト族が約47万6000年前に木材で構造物を作っていたことを示す証拠が発見され、中期更新世のヒト族に関する貴重な手掛かりが得られた。
最初の心拍を調整する
計算モデルと生きたゼブラフィッシュ胚を用いた実験技術の見事な組み合わせにより、心臓がリズミカルで組織化された拍動を開始する仕組みが明らかになった。
受精後2週目のヒト胚モデル
幹細胞を用いて、受精後2週目のヒト胚に類似したモデルが作製され、ヒト胚では不可能だった研究への道を開いた。
細菌による防御を促す分子言語が拡張
細胞は、特殊なヌクレオチドによるシグナルを用いて防御を活性化する。このたび、細菌の研究で、ATP分子とS-アデノシルメチオニン分子の結合によって形成される、これまで知られていなかったクラスのシグナルが明らかになった。
Advances
悲しきサンショウウオ
アメリカオオサンショウウオの減少は環境悪化による共食いが原因らしい。
Where I Work
Axel Bres
Axel Bresは、ポルトーフランセ(地球上で最も隔絶された場所の1つである亜南極のケルゲレン諸島にあるフランスの科学研究基地)の電子技術者。