2025年2月号Volume 22 Number 2
信頼できる抗体が研究を変える
市販抗体は製品ごとに品質や特異性にばらつきがあり、研究の再現性を損ねる大きな要因となっている。Carl Lafl ammeらが立ち上げたYCharOS(イカロス)社は、ノックアウト細胞などを使った徹底的な性能評価を実施しており、この検証により、性能表示の改訂や販売中止に至る製品が出るなど、状況の改善が見られ始めている。
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責任ある科学と出版を促すための研究公正
日本の研究コミュニティーの課題とその解決策を探るため、シュプリンガーネイチャーは、学術界、産業界や研究資金配分機関から有識者を招いた3回目となる「シュプリンガーネイチャー・ジャパン・リサーチ・アドバイザリー・フォーラム2024(JRAF2024)」を2024年10月10日に開催。今回は、国内の研究公正の現状を論じ、研究公正の課題や強化について議論を繰り広げた。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「全ての文化に「中年の危機」があるわけではない」「コウモリの聴力は高齢になっても衰えない」「誤情報へと導くのは検索エンジンのアルゴリズムではない」「長寿の秘訣は遺伝子に潜む亡霊をはらうこと?」、他。
News in Focus
AIの膨大なエネルギー需要は原子力発電を再生させるか?
次世代型原子炉を開発するスタートアップ企業にとって、グーグル社やアマゾン社との大型契約は助けになるかもしれないが、商用化にはさらに大きな投資と長い時間が必要だ。
エムポックスウイルスはヒト間で感染拡大しやすくなっている
中央アフリカで流行しているクレードIaエムポックスウイルスの解析から、ヒトからヒトへの持続的な感染拡大を示唆する遺伝的変異が確認された。
研究予算の大幅削減をもくろむ欧州の極右政党
欧州の反移民政権は、科学に対して敵対的もしくは無関心な政策を推し進めている。
中国で研究助成金制度改革後に資金獲得競争が激化
若手研究者の支援を目的とした方針変更に伴い、主要な研究助成金の獲得成功率は低下している。
科学を脅かすAI画像の見つけ方
生成AIツールはデータを簡単に作り出すことができるため、研究公正の専門家は、その普及により偽科学論文が激増することを懸念している。
血液検査でアルツハイマー病を診断するのは是か非か?
こうした動きによって、症状が生涯表れないかもしれない人でもアルツハイマー病と診断される可能性がある。
第2期トランプ政権下での大改革に備えるNIH
米国立衛生研究所の前途には、徹底的な変革と、研究に対するより厳しい監視が待っているかもしれない。
Features
とっておき年間画像特集2024
2024年、北米では壮大な皆既日食が観測されて人々を喜ばせました。ロボット工学では超現実的な進展が見られ、息をのむようなオーロラが観察され、生物学の新たな地平を切り拓くような偉業もありました。Natureが選んだ2024年のベスト科学写真を紹介します。
市販抗体の信頼性改善に挑む
研究者たちは長年、市販されている抗体の信頼性の低さに悩まされてきた。今、この状況を改善するための新しい取り組みが始まっている。
Japanese Author
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炭素と炭素、電子1つでの共有結合を実現!
共有結合は、教科書では「互いの原子が電子を1つずつ出し合い、共有する」と定義される。しかし、ライナス・ポーリングは1931年に「原子間で1つの電子を共有する1電子結合も存在し得る」と提唱し、それ以来、世界中で炭素原子間における1電子結合の実現が目指されてきた。今回、北海道大学大学院理学研究院の石垣侑祐准教授らのチームは、この約100年にわたる挑戦に終止符を打った。
News & Views
遺伝子操作でトマトの糖度をアップ
野生種と栽培種を比較することにより、トマトの甘さを制御する遺伝子調節因子が特定された。この遺伝子を改変すると、トマトのサイズを変えずに糖度を高めることができる。
可視光で「永遠の化学物質」を分解する光触媒
炭素–フッ素(C–F)結合を持つ化合物にはさまざまな用途があるが、その多くは化学的に不活性であり、「永遠の化学物質」として環境中に残留する。今回、そうした化学物質を容易に分解することのできる光触媒が発見された。
心臓発作後の深い睡眠が治癒を促す
炭素–フッ素(C–F)結合を持つ化合物にはさまざまな用途があるが、その多くは化学的に不活性であり、「永遠の化学物質」として環境中に残留する。今回、そうした化学物質を容易に分解することのできる光触媒が発見された。
謎の電波バーストは大質量銀河から
遠い銀河から届く強力な電波バーストは、若い天体に関係していると考えられている。しかし、この現象は、数が少ない、大質量の銀河で起こる可能性がより高いことが観測で分かり、その謎めいた起源への新たな手掛かりが得られた。
Advances
においで見る
嗅覚が乳児の視覚学習を促進。
Where I Work
Albert Porcar Castell
Albert Porcar Castellは、 ヘルシンキ大学(フィンランド)の森林学者。
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