【進化】ホモ・ナレディの手足
Nature Communications
2015年10月7日
Evolution: The hand and foot of Homo naledi
ホモ・ナレディの手足の構造と機能について記述された2編の論文が、今週掲載される。これらの論文に示される知見を総合すると、ホモ・ナレディは主要な運動形態としての木登りと歩行の両方に適応するという独自性を有し、正確な手さばきもできた可能性が明らかになっている。
現生人類(ホモ・サピエンス)と絶滅したヒト種(ネアンデルタール人、ホモ・エレクトス、ホモ・ハビリス、ホモ・ナレディなど)はヒト属に分類され、ヒト属とアウストラロピテクス属(ヒト属の絶滅した近縁種)は、ヒト族と総称されている。
Tracy Kivellたちの論文には、南アフリカ共和国のライジングスター洞窟系のディナレディ・チャンバーで出土した約150点の手の骨化石(ほぼ完全な成体の右手の骨化石を含む)から明らかになったホモ・ナレディの手について記述されている。ホモ・ナレディの手は、手首の構造と長くがっしりとした親指がネアンデルタール人と現生人類の手と類似している。しかし、指の骨は、ホモ・ナレディの方が長く、曲がっており、ホモ・ナレディが手を使って木登りや樹上での移動をするとともに力を込めて手を正確に操って道具を使用していたことが示唆されている。
一方、William Harcourt-Smithたちの論文には、ディナレディ・チャンバーで出土した足の骨の化石の断片(良好な状態で保存されていた成体の右足の化石を含む)107点に基づくホモ・ナレディの足に関する記述がある。Harcourt-Smithたちは、ホモ・ナレディの足が、現生人類の足に見られる数多くの特徴を備え、直立と二足歩行に十分に適応していたことを明らかにする一方で、足の指の骨(基節骨)が現生人類より曲がっている点を指摘している。
以上を総合すると、2編の論文は、ホモ・ナレディの上肢と下肢の機能が分離していることを示しており、ヒト属の初期種の特徴だったと考えられる骨格の形態と機能に関する重要な手掛かりをもたらしている。
doi: 10.1038/ncomms9432
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