注目の論文

【老化】人間の寿命に固有の限界があるのか?

Nature

2016年10月6日

Ageing: A potential limit to human lifespan?

全球的な人口統計データの分析が行われ、人間の寿命には固有の限界があると考えられ、それを超えて生きられる可能性は低いことが示唆された。この分析結果について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。文書に記録された人間の死亡年齢の最高は122歳であり、この記録が破られる可能性は低いと考えられている。

人間の平均余命と最高死亡年齢は、20世紀を通じて着実に上昇し、人間の寿命に上限はないとする学説を裏づけてきた。しかし、この傾向は、ここ数十年で鈍化し、100歳を超えると生存率の向上が大きく落ち込んでいる。

今回、Jan Vijgたちは、死亡データベース(Human Mortality Database)のデータを用いて、生存率の伸びが最も大きい年齢が年を追うごとに上昇していたのに、1980年頃に入るとほぼ横ばい状態になったことを明らかにした。次にVijgたちは、長寿化データベース(International Database on Longevity)に届け出られたフランス、日本、英国と米国における死亡年齢の最高記録を調べた。この分析によれば、文書記録上の死亡年齢が最も高かったジャンヌ・カルマンが死去した1997年のあたりで死亡年齢の最高が横ばいになった。Vijgたちは、このことが、人間の寿命の固有の限界を示すものと考えている。また、Vijgたちのモデルによれば、いずれかの年に最高死亡年齢が125歳を超える確率は1万分の1未満と予測されている。

同時掲載のNews & Views記事でS. Jay Olshanskyは、次のように述べている。「人間の寿命に『固有の限界』があるという考えは、この限界が老化と死の両方を引き起こす何らかの遺伝的に駆動されるプログラムの直接の副産物であることを暗示していないとVijgたちは正しく指摘している。(中略)人間がそれ以上生き続けることはできないという一定の限界は存在しないが、別の遺伝的に決定された生活史形質によって課された寿命の限界は、やはり存在している」。

doi: 10.1038/nature19793

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