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免疫学:SARS-CoV-2 mRNAワクチンに対する免疫応答と年齢の関係

Nature

2021年6月30日

Immunology: Age-related immune responses to the SARS-CoV-2 mRNA vaccine

Nature

140人の被験者による研究が実施され、80歳以上の人々の約半数は、ファイザー社/バイオンテック社製の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)mRNAワクチンの1回目の接種後に体内に産生される中和抗体がウイルスを不活性化する能力が不十分なため、その能力を最大限発揮させるために2回目の接種が必要なことが示唆された。この結果を報告する論文が、Nature に掲載される。この研究知見は、世界のワクチンプログラムの実施にとって重要な意味を持っている。

今回、Ravindra Guptaたちは、高齢者80人と若年医療従事者60人を対象に、ワクチン接種後の免疫応答を比較した。ファイザー社/バイオンテック社製ワクチンの初回接種から3週間後の時点で十分な中和力価を得た者の割合は、若年医療従事者より高齢者(80歳以上)の方が低かった。また、初回接種後の時点で、高齢者は、若年参加者と比較して、アルファ株(B.1.1.7変異株)やベータ株(B.1.351変異株)などの「懸念される変異株(VOC)」を中和する抗体の能力も低かった。これに対して、第2回接種後には、全参加者の中和抗体の応答性が、同じようなレベルになった。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を抑え込む際に基盤となるのはやはりワクチンだが、ワクチン開発を支える臨床試験に参加する80歳以上の高齢者が非常に少ない。今回の研究結果は、1回のワクチン接種しか受けていない人々がCOVID-19に感染して、重症化したという報告を説明する上で役立つと考えられる。ワクチンが不足しているため、一部の国々では、接種間隔を3週間から12週間に延長しているか、延長する予定になっているが、Guptaたちは、慎重になるべきだと呼び掛けている。高齢者はハイリスク集団であり、特にVOCが循環している時には、ワクチンの応答性を高めるための具体的な対策が必要である。さらに、ワクチン戦略によって達成される免疫が最適状態を下回ると、新たなワクチン耐性変異株の出現につながる状態になる可能性もある。

doi: 10.1038/s41586-021-03739-1

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