注目の論文

創薬:オピオイド過剰摂取への対処法が前臨床モデルで確認された

Nature Communications

2023年12月6日

Drug discovery: Mitigating opioid overdose in preclinical models

フェンタニルとカルフェンタニルの過剰摂取の防止と過剰摂取症状の緩和のための新薬候補になり得る抗体CSX-1004の有効性が、前臨床モデルで確認された。このことを報告する論文がNature Communicationsに掲載される。今回の知見は、CSX-1004が、ヒトを対象とした適切な臨床試験を経て、オピオイド過剰摂取のリスクがある人々とオピオイドを過剰摂取した人々の治療に使用できる可能性を示唆している。

米国では、オピオイド関連死が前例のないペースで増加しており、フェンタニル過剰摂取関連の死者数が年間7万人を超えると推定され、新しい治療法が緊急に必要とされている。フェンタニルやカルフェンタニルなどの非常に強力なオピオイドを入手できることが、オピオイド過剰摂取の主たる要因の1つだ。現在のところ、フェンタニルの過剰摂取から回復させるための標準的な治療薬はナロキソンだが、その効果は短時間(30~90分)に限られるため、過剰摂取後に複数回投与する必要があり、過剰摂取の防止のために投与することはできない。これまでの研究により、抗体を用いた治療薬がこの分野で有望なことが示されたが、フェンタニルに対処するための抗体医薬で承認されたものはない。

今回、Paul Bremerらは、初の完全ヒトモノクローナル抗フェンタニル抗体であるCSX-1004のプロファイリングを行い、フェンタニル、カルフェンタニルとその他のフェンタニル類似体の過剰摂取を防止する効果と過剰摂取症状を治療する効果を調べた。Bremerらは、齧歯類と非ヒト霊長類を用いて、CSX-1004の投与によって過剰摂取が最長28日間にわたって阻止され、過剰摂取によって誘発される症状(呼吸障害など)が改善されることを示した。また、CSX-1004は、他のオピオイドに影響を及ぼさないことが示唆され、毒性試験からヒトでの使用が安全な可能性が高いことも判明した。

今回の知見は、フェンタニル関連の過剰摂取危機と闘うために役立つ可能性のある治療薬の開発を進めて、臨床試験を実施するための基礎固めとなる。

doi: 10.1038/s41467-023-43126-0

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