公衆衛生:精神的ウェルビーイングは健康な加齢を促進する
Nature Human Behaviour
2024年6月18日
Public health: Mental well-being promotes healthy ageing
精神的ウェルビーイングは健康的な加齢と関連しており、社会経済的地位とは無関係であることを示した論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。今回の知見は、寿命の延長や、加齢に伴うストレスへのレジリエンス向上におけるメンタルヘルスの重要性を示唆するものである。
精神的ウェルビーイングと身体的な健康転帰との関連は、広範な研究や議論の対象となってきた。これまでの観察研究によれば、ポジティブなメンタルヘルスと、病気のなりにくさや寿命の延長といった加齢過程の促進の間に関連があることが示唆されている。しかし、この関連の因果的性質については、主に個人の社会経済的地位などの潜在的な交絡因子や逆の因果関係の問題のために、不明なままである。
今回、Tian-Ge Wangらは、ヨーロッパ系の人々の公的に利用可能な遺伝的データを解析することで、精神的ウェルビーイングが加齢のさまざまな転帰に及ぼす効果を調べた。最大230万人分のデータセットを解析した結果、精神的ウェルビーイングが良好な人々では、より健康的な加齢(レジリエンスの向上、自己評価の高い健康、長寿によって特徴付けられる)が見られる傾向があった。
Wangらは、80万~230万人の人々を含む8つのデータセットの解析から、収入、教育、職業はいずれも、良好な精神的ウェルビーイングに関連しており、中でも収入の増加が最も強く関連することを見いだした。またWangらは、106の介在因子の候補をスクリーニングした結果、体を動かさない生活様式の尺度(例えばテレビ視聴時間)の減少や喫煙の減少の他、例えば、チーズや果物の摂取量の増加などが、ウェルビーイングの改善とより健康的な加齢につながる可能性があることを報告している。
今回の知見は、公衆衛生政策や加齢研究にメンタルヘルス面での支援を統合することの重要性を浮き彫りにしている。Wangらは、精神的ウェルビーイングの改善を目的とした介入は、集団全体で健康的な加齢を促進するための実行可能な戦略になる可能性があると示唆している。ただし、今回の研究はヨーロッパ系の人々を対象としたものであるため、得られた知見をより多様な民族集団に適用するためにはさらなる検証が必要がある。
doi: 10.1038/s41562-024-01905-9
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