注目の論文
治療薬が引き起こす難聴の発生リスクをもたらす遺伝子バリアント
Nature Genetics
2015年2月10日
Risk variant for treatment induced hearing loss
ACYP2遺伝子バリアントが、シスプラチン薬による治療を受けた子どもに起こる難聴と関連することが解明された。シスプラチンは、小児脳腫瘍をはじめとする数多くのがんの治療に用いられている抗がん剤である。非常に有効な治療薬だが、特に子どもの患者に耳器毒性(聴覚障害)を誘発することがあり、その理由は分かっていなかった。今回の研究成果は、小児脳腫瘍の治療にシスプラチン薬を使用するかどうかを医師が決定する際に役立つと考えられる。
J Yangたちは、シスプラチンによる治療を受けた脳腫瘍の子ども238人(そのうちの145人に耳器毒性が生じた)を対象とした関連解析を行った。その結果、ACYP2遺伝子バリアントと耳器毒性との間に強い関連が見つかった。この関連は、シスプラチンによる治療を受けた別の脳腫瘍の子どものグループ(68人)で追試・確認された。ACYP2遺伝子は、筋肉と蝸牛(内耳構造)で発現するタンパク質をコードしており、耳の中での正常な有毛細胞の発生に重要である可能性がある。耳器毒性発生のリスクに関連するACYP2遺伝子バリアントを持つ子どもは、すべて耳器毒性を起こした。ただし、Yangたちは、このバリアントを持たない複数の子どもにおいても耳器毒性が発生したことを見いだしている。その理由は今のところ分かっていない。
doi: 10.1038/ng.3217
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