注目の論文

火星の火山で検出された朝の霜

Nature Geoscience

2024年6月11日

Planetary science: Morning frost detected on Martian volcanoes

火星の古代火山の山頂で、寒い朝に水の霜が観測されたことを報告する論文が、Nature Geoscienceに掲載される。この知見は、このような巨大火山における局所的な大気の循環が火星の表面と大気の間での活発な水の交換に果たす役割を裏付けている。

タルシス高地は火星の熱帯地域に位置する台地で、高さ21キロメートルのオリンポス火山など、太陽系で最大かつ最も高い火山のいくつかが含まれるが、これらの火山の地質学的特徴は一見すると休眠状態にあるように見える。探査機により、タルシス台地の火山の上空で水の氷の雲が観測され、水蒸気量が局所的に増大していることが測定されたことから、この地域で活動的な水循環が起きている可能性が示唆された。しかし、熱帯地域の表面の平均的な条件は水の霜の形成を促すようなものではなく、このような低緯度地域で凝結が起きることを示す直接的な観測証拠も限定的であった。

今回、Adomas Valantinasらは、欧州宇宙機関(ESA)の探査機トレース・ガス・オービターが収集した画像を分析し、オリンポス火山の火山山頂とカルデラ底に氷の堆積物を見いだした。データによると、この堆積物は火星の寒冷な季節の朝早くにのみ現れている。Valantinasらは、気候モデルによるシミュレーションを用いて、表面温度は霜が二酸化炭素ではなく水からできていることと矛盾せず、この解釈は他のタイプの利用可能な探査機データの分析によっても支持されることを明らかにした。また、このシミュレーションから、タルシス台地の高い火山の上空を流れる大気によって生成される大気循環パターンが、地球の高山によって生じる微小気候と同様に、タルシス台地で霜が凝縮する条件をもたらし得ることが示唆された。

Valantinasらは、タルシス台地の火山で形成される可能性のある霜の全質量は、およそ15万トンの水の氷であると見積もっており、これらの水は火星の寒冷な季節に火星の大気と表面の間で毎日交換されている可能性が高い。これは火星大気中の水蒸気全量のわずかな割合ではあるが、局所的な表面の環境にとっては重要である可能性がある。

doi: 10.1038/s41561-024-01457-7

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