Press release

研究新興国が研究先進国との格差を埋めつつあることが、Nature Indexの分析結果から明らかに

2015年6月16日

世界的に見て高品質な研究論文は、中国からの出版数が年々増加している一方で、米国、ドイツ、および英国からの出版数は停滞傾向にあることが、Nature Index(natureindex.com)のデータ分析により明らかになりました。Nature Index 2015 Globalは、今週号の Nature の特別企画冊子として発行されます。

全体として見ると、Nature IndexのWFC(Weighted Fractional Count)*の91%を、北米、北欧・西欧、および東アジア・東南アジアが占めています。

北米は依然として、Nature Indexに収録された、最も高評を受けているジャーナル68誌への出版数が最も多い地域です。中国のNature Indexに収録されたジャーナルへの出版数は、米国に次いで多く、そのWFCは6,037で、米国の17,936という数値の3分の1となっています。WFCに基づく順位では、中国は米国に次ぐ第二位で、さらにドイツ、英国、日本と続きます。中国の寄与度は、2013年から2014年にかけて16%上昇した一方で、その他上位5か国の寄与度はいずれも低下しました。米国の出版数は3.5%減少しています。中国の2桁代の成長は、持続的なパターンを示しており、2012年から2013年にかけての14.9%の成長からさらに拡大しています。

Nature のエグゼクティブエディターであるNick Campbellは、次のように話しています。「中国の高品質研究論文の出版数の持続的な成長は、目を見張るものがあります。世界最高の研究を開始し、主導し、完成させる立役者を中国が演じる割合が急速に増加していることは、その数値から明らかなようです」。

Nature Index 2015 Globalでは、2012年から2014年までに出版された約6万件の高品質科学論文の著者の所属機関を追跡しています。その分析結果から、地域ごとの重点研究分野が明らかになりました。出版数を分野別に見ると、生命科学分野で最も高い比率を示しているのは北米で、物理化学分野では中欧・東欧および西アジアでの寄与が突出しており、化学分野では東アジア・東南アジアが強いことが示されています。北欧・西欧およびオーストラレーシア・太平洋諸島では、広範な対象分野における出版数の分布は、比較的均等でした。

Nature Index発行人であるRichard Hughesは、次のように話しています。「中国などの国々が大型の研究投資をしていることを踏まえると、その急成長は驚くにはあたらないでしょう。なお、Nature Index 2015 Globalの特別企画冊子のコメントの中には、『研究開発費を制限している研究先進国は、世界のリーダーとしてのこれまでの立場が脅かされる可能性がある』と指摘しているものもあります。そうした国々の研究出版数の伸び悩みを、こうした可能性を示す初期の兆候と見るのは時期尚早かもしれません。しかし、Nature Indexのデータが今後数年で積み重なっていく中で、この問題は興味深い観察対象となるでしょう」。

Nature Index 2015 Globalで示されたもう一つの興味深い知見は、国際共同研究の動向です。北欧・西欧における国際共同研究の大半は、同一地域で行われています(51%)。これに対して東アジア・東南アジアの研究者たちは、非常に遠い地域と共同研究を実施する傾向があり、全共同研究の約4分の3が、北米(45%)または北欧・西欧(18%)の研究機関との共同研究でした。国際共同研究については、2015年後半に発行のNature Indexの特別企画冊子で、さらに深く掘り下げる予定です。

Nature Indexについて

Nature Indexは、世界トップクラスの研究成果を国・機関別にプロファイリングするデータベースです。論文のカウント方法は以下のとおりです。

  • Article Count(AC):共著機関または共著国全てに対して1論文を1と数える計算方法
  • Fractional Count(FC):共著者の割合に応じて国や機関に論文数を割り振る計算方法
  • Weighted Fractional Count(WFC):世界で出版されているジャーナル総数が極めて少ない宇宙物理科学を他分野と同様にカウントすると比重が重くなりすぎるため、宇宙物理科学にのみ重み付けを行うことで標準化している。

詳細は、次の担当者までお問い合わせください。
大場 郁子
ネイチャー・パブリッシング・グループ:
E:Ikuko.Oba@nature.com

※本プレスリリースの原本は英語であり、日本語は参考翻訳です。
英語プレスリリース

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