Press release

ネイチャー・パブリッシング・グループとReadCubeが試験的に行った科学論文のシェアリングの結果を発表

2015年12月9日

今後はコンテンツ・シェアリングを恒久化することで、nature.comの論文全体の幅広い公開と共有を実現します

シュプリンガー・ネイチャーの一角を成すネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)は、共同研究を後押しするために試験的に行った12か月間にわたる画期的なコンテンツ・シェアリングの結果を発表しました。試験的に行ったコンテンツ・シェアリングで良好な結果が得られたことから、nature.com の論文全文の、ReadCube のエンハンスドPDF技術を使ったコンテンツ・シェアリングを、恒久的に続けることとなりました。

NPGは2014年12月、12か月間の試験的なコンテンツ・シェアリングを開始し、nature.comの49誌の購読者に対し、興味のある論文全文を、nature.comの共有リンクを通して合法的かつ簡単に、購読権を持たない同僚とシェアできるようにいたしました。これは、出版技術企業であるReadCubeによって可能となりました。また、nature.comに掲載された論文を調査し、報告している世界中の100の報道機関とブログも調査対象としました。報道機関やブロガーは、リンクを通して記事の元となった科学論文の全文(閲覧のみ)へのアクセスを読者に提供することができました。

1年間にわたるコンテンツ・シェアリングから得られた主な結果:

  • 最も多く使われた科学論文のシェア方法は、報道機関およびブロガー経由のリファーラルプログラムであり、これによって読者に対し、ニュースや記事内で科学論文全文の無料のアクセス(閲覧のみ)を提供していました(77%)。
  • 多数の国際的な報道機関の注目を集めた Nature の論文に関するメディアレポートが、コンテンツ・シェアリングのトラフィックのほとんどを占めていました。2015年に最も人気が高かった論文は、2015年1月に Nature に発表された「A new antibiotic kills pathogens without detectable resistance(検出可能な耐性を伴わずに病原菌を殺す新たな抗生物質)」でした。
  • コンテンツ・シェアリングの多かった報道機関は、順に、BBC、ガーディアン紙、ニューヨークタイムズ紙、Science Magazine、そしてワシントンポスト紙でした。
  • 研究者間でのシェアは、論文にアクセス権のある購読者がnature.comの論文へのシェア用リンクを電子メールで送信またはソーシャルメディアなどへ掲載することで行うもので、大半が購読者と非購読者の間で行われており(67%)、残りは主に購読者間でのシェアでした。
  • この12か月間で、購読型ジャーナルの法人・個人の売上への影響は見られませんでした。
  • 無料の閲覧専用リンクを使った共有は、世界中で行われ、シェアが活発に行われていたのは、米国、英国、日本、ドイツ、中国、カナダ、スペイン、フランス、インド、および韓国の購読者でした。
  • 無料の閲覧専用リンクを通じて、世界中の読者からアクセスがありました。アクセスの多かった国は、順に、米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス、日本、オーストラリア、スペイン、ブラジル、およびオランダでした。

シュプリンガー・ネイチャーのネイチャー・リサーチ・グループのマネージング・ディレクターであるSteven Inchcoombeは、次のように述べています。「私たちの当初の目的は、研究者および社会全体に対して科学的知識の宝箱を開放することでした。従って、この12か月の試験的なコンテンツ・シェアリングで良好な結果が得られたことを本当にうれしく思います。このため、nature.comの論文全文の、ReadCubeのエンハンスドPDF技術を用いたシェアリングを恒久的に続けることにしました。今まで私たちの業界で、このような方針の作成、コンテンツの提供、デジタルプラットフォームの提供を行った企業はありません。」

デジタル・サイエンスの出版社広報ディレクターであるNicko Goncharoffは次のように付け加えています。「私たちは、NPGの斬新な方針とReadCubeの技術によって、購読型ジャーナルの内容を簡単にシェアするための、建設的で持続可能な選択肢を提供することができました。これは研究者が論文と知識を共有しつつ、出版社および著作者がシェアの状況を知るというニーズを満たすための大きな前進です。」

この取り組みの背後にある技術は、デジタル・サイエンスの1部門であるReadCubeにより開発されました。ReadCubeは、研究者、研究機関、および出版社にとって研究論文の管理のしやすさ、アクセスの容易さ、つながりを向上できるソフトウェアを開発しています。この出版技術は、ワイリー、NPG、カルガー、De Gruyter、ロックフェラー大学出版、その他の多くの出版企業ですでに採用されています。

今回の取り組みは、研究者の提携をサポートし、一般の人々に対して従来利用できなかった科学論文を読む方法を提供するために策定されました。これは、シュプリンガー・ネイチャーの多くのオープンアクセスおよびオープンリサーチの活動をサポートするものであり、それに置き換わるものではありません。

シュプリンガー・ネイチャーは、オープンリサーチの分野の先駆者であり続けます。2015年に nature.com に掲載された研究論文の60%以上がオープンアクセスです。NPGの全てのオープンアクセス誌においてCC-BYライセンスを選択する著作者の割合は、2014年には26%でしたが、2015年9月には96%と、劇的に増加しました。

2014〜2015年に行われた試験的なコンテンツ・シェアリング:

  1. nature.comに掲載されている49誌のジャーナルの定期購読者は、科学論文の全文(閲覧のみ)への固有のリンクを、自身にとって最も便利な方法(メールやソーシャルメディアなど)で同僚や共同研究者とシェアできるようになりました。対象となるジャーナルには、世界で被引用数が最も多い科学出版物である Nature、さらにはNature 関連誌の他、高品質な科学ジャーナル15誌が含まれています。この新たな取り組みは、世界の6,000以上の大学と団体に所属する研究者と学生を対象としており、月間1,000万人を超えるnature.comの利用者に向けて提供されます。研究論文のシェアは、個人が非営利目的に利用する場合に限られます。これに加えて今後、アノテーション機能が導入される予定で、コメントやテキストのハイライトなどもシェアできるようになります。
  2. 世界100か所の報道機関とブログでは、記事のもとになったnature.comの科学論文全文への共有リンクを読者に提供できます。これにより、記事の読者は数千報にも及ぶ高品質な科学論文を閲覧可能になります。Nature には、ヒトゲノム、DNAの構造、クローンヒツジ「ドリー」、レーザーの発明、AIDSウイルスの同定、オゾンホールの発見など、最先端の科学ストーリーが数多く発表されてきました。

ネイチャー・パブリッシング・グループについて:

ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)は、影響力の大きな科学情報を、プリント版およびオンライン版で提供している出版社です。NPGは、生命科学・物理学・化学・応用科学など多岐にわたる分野で、ジャーナルやオンラインデータベース、その他のサービスを提供しています。科学者のニーズに焦点を当てた Nature(1869年創刊)は、世界有数の週刊の国際科学雑誌です。NPGはまた、一連のNature 関連誌とNature Reviews誌、さらには学会主導の出版を含め、非常に優れたアカデミックジャーナルおよびパートナージャーナルを出版しています。オンラインのnature.comには、1カ月当たり800万人を超えるユーザーが訪れ、NPGの論文や Nature のニュース記事やコメント記事、そして非常に優れた科学求人サイトであるNaturejobsなどのサービスにアクセスしていています。Scientific American(1845年創刊)は、NPGの消費者メディアの核を成しており、長年継続して出版されている雑誌としては米国で最も歴史のあるもので、一般メディアの科学出版物として、非常に権威があります。

Visit: www.nature.com and follow @npgnews

シュプリンガー・ネイチャーについて

シュプリンガー・ネイチャーは、研究、教育、専門領域において世界をリードする出版社の1つです。高い評価と信頼を得ている多くのブランドから成る革新的な製品やサービスを通して、高品質なコンテンツを提供しています。シュプリンガー・ネイチャーは、世界最大規模の学術書籍出版社であり、世界で最も影響力のあるジャーナルを多数発行しています。またオープンリサーチにおけるパイオニアでもあります。当社の50か国超に及ぶ従業員数は約13,000人で、売上高は15億ユーロです。シュプリンガー・ネイチャーは、ネイチャー・パブリッシング・グループ、パルグレイブ・マクミラン、マクミラン・エデュケーション、シュプリンガー・サイエンス+ビジネスメディアの合併により2015年5月に誕生しました。

Visit: www.springernature.com and follow @springernature

ReadCubeとデジタル・サイエンスについて

ReadCubeは、研究世界へのアクセス性を高め、つながりを強化するためのソフトウェアを開発しています。ReadCubeの無償のデスクトップパソコン用アプリケーション(Windows版とMac版)があれば、どのような分野の研究者も既存の論文ライブラリの整理と管理を簡単にでき、検索機能とユーザーのレコメンドを通じて、新しい文献を発見できます。また、ReadCubeは、科学研究のニーズに応えるマクミラン・サイエンス・アンド・エデュケーション(MSE)のポートフォリオに含まれる技術企業であるデジタル・サイエンスによって支援されています。デジタル・サイエンスは、インテリジェントな知識発見ツールや研究室用のソフトウェアアプリケーション、さらにマネージャーの意思決定を支援するシステムなど、科学を広範囲にわたり支援する技術とデータソリューションを提供しています。

デジタル・サイエンス ウェブページ
Twitter:@digitalsci

ReadCube ウェブページ
Twitter:@ReadCube

詳細は、次の担当者までお問い合わせください。
大場 郁子
シュプリンガー・ネイチャー
E:Ikuko.Oba@springernature.com

※本プレスリリースの原本は英語であり、日本語は参考翻訳です。
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