Nature Index、発明のヒントとなるアイデアを提供している学術機関を産業界向けに発表
2017年8月9日
本日発表された特別企画冊子「Nature Index 2017 Innovation」は、研究論文が第三者の特許にどのように引用されているかを分析することで、学術研究がイノベーションに及ぼす影響について新たな洞察を提供しています。
「Nature Index 2017 Innovation」は、研究を行った学術機関自体が保有する特許ではなく、第三者が保有する(学術文献を参考にしている、あるいは引用している)特許を調べることにより、製品・サービスの開発に及ぼす研究の影響を明らかにしています。
「Nature Index 2017 Innovation」には、将来の発明へとつながる可能性のあるアイデアを提起している、主要学術機関の一覧表が掲載されています。表の上段には、高品質な研究を行っていることで国際的な評価を得ている機関や、出版された研究のインパクトが規模に比べて著しく大きな機関が並んでいます。
ランキングはThe Lensによって開発された指標に基づいており、サンディエゴのスクリプス研究所(1位)とニューヨークのロックフェラー大学(2位)が上位を占めています。以下、マサチューセッツ工科大学(3位)、マサチューセッツ大学医学系大学院(4位)、テキサス大学サウスウェスタン医療センター(5位)が続きます。イスラエルのワイツマン科学研究所(6位)は、米国以外の機関で唯一、上位10位にランクされました。米国立衛生研究所(7位)、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(8位)、スタンフォード大学(9位)という米国の3つの有力学術機関がこれに続きます。また、注目すべきことに、10位にはマウントサイナイ医科大学がランクされています。
The Lensの指標による上位50機関のうち、38機関が米国の学術機関です。米国以外で、それぞれの国のトップにランクされている学術機関は、ストラスブール大学(16位、フランス)、ジュネーブ大学(21位、スイス)、漢陽大學校(23位、韓国)、ダンディー大学(26位、英国)、カロリンスカ研究所(38位、スウェーデン)です。日本からは、大阪大学(31位)と理化学研究所(39位)が上位50位までにランクインしています。
Nature Indexの創設者、David Swinbanksは、次のようにコメントしています。「科学知識の産業・経済への変換をたどり、把握することが、政府や資金配分機関の優先課題としてますます重視されるようになる中で、今回の分析は実施されました。政府や資金配分機関は、公的資金によって生まれた科学知識が、社会の利益のために使われていることを実証する必要性が極めて高いのです。イノベーションに焦点を当てた今回の特別企画冊子は、Nature Indexが行ったより広範な取り組みの1つです。我々はThe Lensやクラリベイト・アナリティクスなどのパートナーと協力するとともに、パートナーが保有する洞察に満ちたデータも活用し、研究出版物の新たな動向とアカデミア以外のセクターとの接点について分析しました。」
The Lensの創設者、Richard Jeffersonは、次のようにコメントしています。「出版された研究と特許の結び付きを世界的な公共財とすることにより、イノベーション・エコシステムにおける学術的な科学の役割のマッピングを始めることができます。これは「innovation cartography(イノベーションの地図作製)」に向けた第一歩であり、複雑な科学技術に基づく問題解決手法(STEPS)を表現できるようになります。これによって科学者、出資者、企業や政策決定者は、パートナーを選択したり、新製品やサービスの実践を社会に提供したりするに当たり、根拠に基づいたより良い意思決定を可能とします。」
Normalized Lens Influence Metricは、学術機関で行われた研究がイノベーションに及ぼす影響を把握するための指標であり、研究を行った学術機関自体が保有する特許ではなく、第三者が保有する特許における研究論文の引用数から算出したものです。指標は、いくつかの学術機関ランキング(Nature Index、世界大学学術ランキング(ARWU)、Thomson Innovation、Leiden Ranking)の少なくとも1つで100位以内にランクされている高実績の学術機関200機関について抽出しました。
The Lensがランク付けした200機関についてのNature Indexのデータも示されています。また、今回初めて、クラリベイト・アナリティクスのWeb of Scienceに収録されている研究論文数によって示される、自然科学分野の学術機関の研究成果合計数に基づいて、Nature Indexデータの正規化を行いました。こうすることにより、Nature Indexにおける各学術機関の研究成果を、各機関の研究規模と相対的に比較できる指標が得られ、同様に研究機関の規模を正規化するThe Lensの指標と比較することが可能となります。
Nature Indexに関する詳しい情報については、natureindex.comをご覧ください。
編集の方々へ:
Nature Indexについて
2014年11月に初公開されたNature Indexのデータベースは、現役科学者からなる独立したパネルが選定した、68誌の自然科学系学術ジャーナルから出版される研究論文の著者の所属機関を記録しています。
ジャーナルの選定に関しては、大規模調査によって得られた2800人超からの回答に基づいて、検証を行いました。Springer Natureによれば、これら68誌からの引用だけで、自然科学系学術ジャーナルからの引用総件数の30%近くを占めると推定されます。
直近12カ月のNature Indexデータが、natureindex.com にて、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で公開されています。これにより、世界150カ国の8000以上の機関の最新の研究成果を分析することができるのです。同ウェブサイトでは、特定の研究機関から直近12カ月間に出版された論文情報を主題別に整理された形で閲覧することができます。各機関の国際的・国内的な共同研究に関する情報も入手できます。さらに2012年まで遡って、機関別・国別の年間ランキング表も見ることができます。ウェブサイトに無料登録すれば、ユーザーは、機関別・国別の研究成果発表数の経時的な変化を表示させることができ、さらなる分析を行うために生データをエクスポートすることも可能になります。
Nature Indexでは、以下の3種類のカウント法を採用しています:
・ Article count(AC)– 論文において、ある国ないし機関から1人でも著者として名前が挙げられていれば、その国ないし機関の論文1点(ACを1)として数える計算方法。その論文に著者が1人しかいなくても、100人の著者がいても、それぞれの著者の所属国(または機関)において論文1点として数えられることになるため、同じ1本の論文が、複数の国(または機関)においてAC として数えられることを意味します。
・ Fractional Count(FC)– FCは、ある論文に対する各共著者の相対的貢献度を考慮に入れる方法。論文1本につき最大FCは1.0です。この1点分を、共著者全員が等しく貢献したという仮定のもと、共著者間で等しく分けます。例えば、10人の共著者がいる論文の場合、各共著者はそれぞれ0.1分のFCを割り振られることになります。
・ Weighted Fractional Count(WFC) – 天文学および宇宙物理学の比重を調整するため、上記FCに対し重み付けを行う方法。これら2つの分野では、国際的学術ジャーナルで出版される全論文の約50%が、わずか4誌のジャーナルで発表されているのです。これは他の学術分野と比べると5倍も高い割合です。天文学および宇宙物理学の両分野のデータは、他の全ての分野と全く同じ方法で集計されていますが、こうした理由によってWFCでは、これら4誌の論文に、他の論文に比して5分の1の重み付けを行い、釣り合いを取っています。
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Nature Research(ネイチャー・リサーチ)について
ネイチャー・リサーチは、生命科学・物理学・化学・応用科学など多岐にわたる分野で高品質のジャーナル、オンラインデータベース、研究者を対象としたサービスなど、科学界への貢献を目的としたサービスから成るポートフォリオを提供しています。
Nature(1869年創刊)は、世界をリードする、国際的な週刊科学ジャーナルです。Nature Researchは、幅広いNatureブランドの定期購読型ジャーナル、多分野を対象とするトップクラスのオープンアクセスジャーナルNature Communications、その他、Scientific Reportsなどのオープンアクセスジャーナル、学術機関や学会とのパートナーシップのもとに発行されるさまざまなネイチャー・パートナー・ジャーナルも出版しています。これらのジャーナルは、全体として、世界で最も重要な科学的発見のいくつかを掲載しています。
オンラインのnature.comには、1カ月当たり900万人を超えるユーザーが訪れ、Natureのニュース記事やコメント記事、そしてNaturejobsなどの科学求人サイトにアクセスしています。また、ネイチャー・リサーチは、オンラインおよび対面によるトレーニングや専門家による英文校正サービスなど、さまざまな研究者支援サービスも提供しています。
詳細についてはnature.comをご覧ください。twitter公式アカウントは@nresearchnewsです。
ネイチャー・リサーチは、シュプリンガー・ネイチャーの一部です。
The Lensについて
The Lensは、イノベーション・システムをより透明、効率的、公正かつ包括的にするための、自由でオープンな保証された機関です。Lensは、創設者のCambia(世界的な非営利の社会的企業)とオーストラリアのクイーンズランド工科大学(QUT)が所有する米国登録の営利法人Lens.orgによって運営されています。The Lensの理念は「問題解決の問題を解決する」ことです。The Lensは、世界中の非営利団体や公共機関と協力して、世界中の特許のほとんど全てを自由かつオープンなデジタル公共財として、規制、法律、ビジネスデータと共に学術・技術文献と統合した形で提供しています。またThe Lensは、企業への学術研究の影響のネットワークをマッピングするためのアプリケーション(In4MやPatCite)や、生物学的な配列特許を把握するためのアプリケーション(PatSeq)を作成しています。The Lensは、文書、コレクション、分析の共有、注釈付け、埋め込みを許可しており、これによってInnovation Cartography、すなわち公平な問題解決への参加を拡大するための科学技術イノベーション・エコシステムのオープンなマッピングを可能にします。
クラリベイト・アナリティクス
クラリベイト・アナリティクス(Clarivate™ Analytics)は、世界中の皆様に対し、信頼の置ける知見や分析を提供してイノベーションの速度を加速することによって、新しいアイデアのより迅速な発見、保護、商業化を実現します。トムソン・ロイターのIP & Science事業を前身とするクラリベイト・アナリティクスは、科学と学術研究、特許分析と規制規格、製薬およびバイオテクノロジー情報、商標およびドメインブランド保護、そして知的財産マネジメントを主軸に、業界をリードする一連の定期購読型ビジネスを展開しています。また、Web of Science™、Cortellis™、Derwent, CompuMark™、MarkMonitor®、Techstreet™など知名度の高いブランドを所有し、従業員数は現在4000人以上で、世界100カ以上で事業展開する独立会社です。詳しくはclarivate.comをご覧ください。
※本プレスリリースの原本は英語であり、日本語は参考翻訳です。
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