Press release

オープンアクセス出版の学術書は、オンラインでのダウンロード数、言及数、被引用数が従来型書籍を大きく上回る

2017年12月18日

シュプリンガー・ネイチャーが2017年11月7日に発表したレポートによると、出版と同時に公開されるゴールドオープンアクセスモデルで学術書を出版することには、目に見える利点があることが次の通り明らかになりました。 

  • ダウンロード数が7倍:オープンアクセス書籍1点当たりの平均ダウンロード数は、出版後1年間で、3万チャプター弱。この数値は、オープンアクセスではない書籍と比べて、平均で7倍多い。 
  • 被引用数が50%多い: 被引用数の平均値は、オープンアクセス書籍の方が、オープンアクセスではない書籍よりも、4年間で50%多い。
  • オンラインでの言及数が10倍:オンライン言及数の平均値は、オープンアクセス書籍の方が、オープンアクセスではない書籍よりも、3年間で10倍多い。 

オープンリサーチの推進者であるシュプリンガー・ネイチャーは、オープンアクセス出版が書籍に与える本質的な影響を分析できる立場にあります。当社は、Palgrave PivotやSpringerBriefsなど、モノグラフや通常より短い中間形態の研究論文に対して、オープンアクセス出版の選択肢をいち早く導入してきました。2017年10月現在、SpringerLinkにて400点を超えるオープンアクセス書籍を出版しています。

シュプリンガー・ネイチャーのビジネスディベロップメント&ポリシーディレクターであるCarrie Calderは、次のように話しています。「このレポートは、オープンアクセス書籍とオープンアクセスではない書籍とを利用データに基づいて初めて大規模に比較した結果であり、これまでの調査の一歩先を行くものです。“オープンアクセス効果”が書籍においても見られることを、初めて明らかにしました。」

さらに、「ジャーナルの論文だけでなく書籍やデータにおいても、オープンリサーチの試みが広がっていくことが、発見の進展のために大切なことだと私たちは考えています。オープンアクセス書籍を巡る状況は今も発展を続けていて、資金提供団体や出版社も、さまざまなモデルを試みているところです。多くの方々に今回のレポートで明らかになった結果をご覧いただき、今後もオープンアクセスに関する各種の指標や、著者や資金提供団体の視点を土台として、長期的に評価を続けて頂きたいと思います」としています。

ダウンロード数の分析は、シュプリンガー・ネイチャーのオープンアクセス書籍216点と、オープンアクセスではない書籍1万7124点を対象としました(SpringerLinkデータを使用)。また、被引用数および言及数の分析は、オープンアクセス書籍184点と、オープンアクセスではない書籍1万4357点を対象としました(Bookmetrixデータを使用)。レポートには、著者および資金提供団体の関係者へのインタビューに基づく定性的な分析結果も含めています。

オープンアクセス欧州ネットワークOAPENのディレクターであるEelco Ferwerdaは、次のように語っています。「シュプリンガー・ネイチャーは、書籍に対する“オープンアクセス効果”をはっきりと示すことができた初めての出版社です。著者の皆様に、研究モノグラフに対するオープンアクセスの利点を分かって頂く上で、このレポートが役立つよう願っています。」

このレポートによると、オープンアクセス書籍を出版することと、出版のために資金を提供することの背景として、研究の認知度を上げて、より広く普及させたいという動機があることも示されました。公的な資金が投入された研究の成果を自由に閲読できるだけでなく、知識に対しても、誰もが等しくアクセスできるべきであるという点において、意見が広く一致しています。

この調査でインタビューに応えた著者は、オープンアクセス化の利点として、書籍の共有のしやすさを挙げています。ダイレクトリンクによって書籍を簡単に共有することができ、特に従来型の印刷版の書籍を手に入れにくい地域においても、読者層を広げることができるからです。

一方で、著者や資金提供団体は共に、書籍をオープンアクセスで出版することの意義や、出版後のインパクトをどのように測定するかについて、計量書誌学的なツールが用意されてはいるものの、十分な情報を与えられていないと回答しました。出版社が、書籍のオープンアクセス化の効果について説明する必要性が明確になりました。

今回のレポートから、オープンアクセス書籍とダウンロード数の増加との間には正の相関があることが明らかになりましたが、その因果関係が証明されたと結論付けることはできませんでした。書籍では、オープンアクセスでの出版という形態が比較的新しいビジネスモデルであり、現段階のデータでは、一冊のオープンアクセス書籍についてライフサイクル全体の概要を示すには不十分です。また、書籍の製品寿命は科学論文よりもはるかに長く、被引用数は時間の経過とともに増加していくため、例えば、一冊のオープンアクセス書籍の製品寿命全体において被引用数や利用数がいつピークを迎えるのかについて、現時点では明確な傾向を述べることができません。こうした傾向については、今後の研究や分析を待つ必要があります。

記者の方々へ: 


シュプリンガー・ネイチャーについて

シュプリンガー・ネイチャーは、信頼性が高く、洞察に富む研究を出版しています。新しい知の領域を広げ、世界中のアイデアと情報へアクセスできるようにすることで、発見の進展に貢献しています。 著者の方々が自身の発見を共有しやすくすること。研究者の方々が他の研究者の研究成果を見つけやすく、情報にアクセスしやすく、理解しやすくすること。図書館や研究機関で働く方々のために、技術とデータの形を刷新させ、お仕事しやすくすること。高い品質の出版によって、学協会を支援すること。研究コミュニティーが直面している課題に真摯に取り組むこと。このようにして、私たちは、研究コミュニティー全体にくまなく最良のサービスを提供することができます。


私たちは、学術出版社として、Springer、Nature Research、BioMed Central、Palgrave Macmillan、Scientific Americanといった信頼の厚いブランドを擁しています。

当社サイト: www.springernature.com 

ツイッター:@SpringerNature


詳細は、次の担当者までお問い合わせください。 

新谷 洋子
シュプリンガー・ネイチャー
E:Y.Shintani@nature.com
※本プレスリリースの原本は英語であり、日本語は参考翻訳です。
英語プレスリリース

「プレスリリース」記事一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度