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腫瘍の侵入を妨げる

Nature Cell Biology

2008年9月29日

Thwarting tumour invasion

Nature Cell Biology

腫瘍細胞が転移して肺組織に侵入し、二次腫瘍を定着させる際に使う仕組みの1つが突き止められた。この研究はまた、がんの広がりを防止する有望な薬剤標的を明らかにしている。

原発腫瘍はケモカイン産生を誘導して、肺に侵入する準備をする。ケモカインは本来、感染の際に免疫細胞を移動させるのに使われる化学因子だが、これが腫瘍細胞の二次腫瘍部位への移動を先導するのである。平塚佐千枝たちは、原発腫瘍が肺細胞にもう1つ別の因子、血清アミロイドA3(SAA3)も産生させることを見いだした。SAA3は、炎症にかかわる遺伝子の発現スイッチをオンにし、ケモカイン産生を増強することで、原発腫瘍細胞の移動を促進する。マウスでは、SAA3あるいはその受容体の働きを遮断すると肺への転移が著しく低下したが、これは重要である。

転移は予測が難しく、治療はさらに困難である。今回の知見は、がん細胞が原発腫瘍からずっと離れた部位に新たな腫瘍を定着させる仕組みを解明する重要な手がかりとなる。

doi: 10.1038/ncb1794

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