【生態】飼育下のパンダに配偶相手を選ばせると交尾成功率が高まる
Nature Communications
2015年12月16日
Ecology: Choice of partner improves panda mating success in captivity
動物園で飼育されているジャイアントパンダの場合、雄と雌が互いに好みのタイプであると繁殖率が大きく上昇することを明らかにした論文が掲載される。この論文には、それぞれのパンダに配偶相手を選ばせるという単純な方法が、動物園の繁殖プログラムの成功率を高める上で役立つ可能性があるという結論が示されている。
ジャイアントパンダは絶滅危惧種で、飼育下での繁殖が難しいことが判明している。雄と雌の遺伝的プロファイルを利用した「縁結び」によって近親交配の影響を最小限に抑えようとする保全繁殖プログラムは高額な費用を伴うことが多く、成功の保証もない。
今回、Meghan Martin-Wintleたちは、臥龍パンダ保護研究センター碧峰峡基地(中国・四川省)で飼育されている約40頭のパンダの配偶行動を調べた。この施設では、それぞれのパンダについて配偶相手の候補を2頭選定し、好みの相手を自由に選ばせている。選ぶ側のパンダは囲い地の中に置かれ、その左右に隣接する囲い地には配偶相手の候補がいて、その様子が見えるようになっている。Martin-Wintleたちは、雄が選ぶ場合と雌が選ぶ場合の両方で実験を行ったが、選ぶ側のパンダが配偶相手候補のいずれかに対して強い選好性を示した時に交尾成功率と仔の出生率が優位に上昇し、雄と雌が互いに強い選好性を示した時にはさらに顕著な上昇があったことを明らかにした。
この実験では、パンダが配偶前行動(例えば、匂いづけ行動、かん高く細い鳴き声)の60%以上を一方の候補に振り向けた場合には正の選好性があると定義され、その後の交尾成功率は、いずれの個体も選好性を示さなかった場合に0%だったのに対して、雄雌双方が選好性を示した場合には80%を超えた(交尾が12回中10回成功した)。Martin-Wintleたちは、飼育下のパンダの繁殖プログラムに、好みのタイプの配偶相手であるかどうかを調べる検査を組み込むことが、野生に戻した後のパンダの継続的生存を確かなものとするための効率的で費用効果の高い方法となる可能性がある、と結論づけている。
doi: 10.1038/ncomms10125
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