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【遺伝】トコジラミが噛む理由

Nature Communications

2016年2月3日

Genetics: Why the bed bugs bite

Nature Communications

トコジラミ(Cimex lectularius)のゲノム塩基配列の解析結果が記述された2編の論文が、今週掲載される。これらの研究結果は、トコジラミが血液を餌とするように適応した過程の遺伝的基盤に関する手掛かりをもたらし、殺虫剤抵抗性に関連していると考えられる遺伝子を明確に示している。

トコジラミは、吸血寄生生物の一種で、ヒトとの関わりは数千年間続いている。トコジラミの世界的蔓延は、家庭での暖房の普及と海外旅行の増加と関連しており、トコジラミの問題は、過去20年間にわたる殺虫剤抵抗性の進化によって悪化している。

今回、Jeffrey Rosenfeldたちは、トコジラミのゲノムの塩基配列解読と組立てを行い、5つの発生段階と雄と雌の成体で発現する遺伝子を全て同定した。そして、トコジラミが発現する遺伝子の変異の程度が最も大きくなるのは、トコジラミが初めて血を吸った時であることが明らかになった。また、Rosenfeldたちは、ニューヨーク市内の複数の地下鉄の駅で採取されたトコジラミのDNAを比較して、ニューヨーク市の同じ区内に生息するトコジラミの間の近縁度が高いという傾向を見いだした。

一方、Joshua Benoitたちの研究グループは、トコジラミのゲノムの塩基配列解読と組立てを行い、タンパク質をコードする配列の予測を行い、そうしたタンパク質の生物学的機能の注釈を付けた。その結果、血液消化酵素をコードする遺伝子候補187点が同定され、トコジラミが宿主に痛みを感じさせずに繰り返し吸血できるようにする唾液タンパク質を新たに数多く同定された。また、Benoitたちは、殺虫剤抵抗性に関連する遺伝子、例えば、殺虫剤の浸透を妨げる角質のタンパク質や殺虫剤を中和できる酵素に関連する遺伝子を同定した。

doi: 10.1038/ncomms10164

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