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【生態】捕食者に対する恐怖が食物網に及ぼす影響

Nature Communications

2016年2月24日

Ecology: Food webs of fear

Nature Communications

大型の肉食動物に対する恐怖は、被食者と捕食行動自体に同じ影響を及ぼすだけでなく、食物網全体に連鎖反応的な影響を及ぼすことが、アライグマの研究で明らかになった。このことは、生態系内の最上位捕食者の影響が、これまで考えられていたよりも広範囲に及ぶことを示している。この研究成果を報告する論文が、このたび掲載される。

最上位捕食者がいると、生態系内に連鎖反応的な影響が及ぶことがある。つまり、その被食者の個体数が減る一方で、被食者の餌となり、あるいは被食者と競合する他の生物の個体数が増える。捕食されることに恐怖を抱く動物が本来の生態系を離脱する場合には、捕食者に対する恐怖と捕食者を回避する行動は、捕食行動と機能的に類似した効果を持つ可能性があるが、この恐怖が、食物網のその他の部分にどのような影響を及ぼすのかは、これまで明らかになっていなかった。

今回、Justin Suraciたちは、カナダのブリティッシュコロンビア州のガルフ諸島の沿岸でカニと魚類を食餌とする野生のアライグマの集団(イヌに攻撃され、殺されることが多い)からなる食物網において、イヌ(最上位捕食者)に対する恐怖が、上述の連鎖反応的な影響を生み出すのかどうかを調べた。Suraciたちは、野生のアライグマに対して、イヌが吠えている音の録音を1か月にわたって聞かせて観察した。その結果、恐怖の影響下にあるアライグマが好みの潮間帯地域で採餌にかける時間が66%短縮したことが判明した。

このように採餌時間が短縮した後、アライグマの食餌となっているイソガニ属イワガニ科Hemigrapsus oregonensis、潮間帯魚類、イチョウガニ属Cancer productusの個体数は、それぞれ97%、81%、61%増加した。その結果、アライグマの捕食圧から解放されたカニ類との競合に敗れ、あるいは捕食されたその他の無脊椎動物種の個体数が減った。このことは、恐怖だけの影響も食物網全体に及ぶことを実証している。

doi: 10.1038/ncomms10698

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