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【動物学】巧みに飛べるようにできていないキイロショウジョウバエの翅

Nature Communications

2016年3月2日

Zoology: These wings weren't made to fly

Nature Communications

キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の翅の発生に関与する単一の遺伝子の発現を操作することで、空中での敏捷性を高めることができることを報告する論文が、今週掲載される。この研究結果は、野生のキイロショウジョウバエの翅の形状が、全ての飛翔機能にとって最適というわけではないが、競合する形質間での最良のトレードオフを反映している可能性が非常に高いことを示唆している。

昆虫の翅の形状は自然に変異し、さまざまな個体がそれぞれ異なる利点を得ている。例えば、飛翔速度が上がり、あるいは敏捷性が高くなれば、捕食者からうまく逃れられるようになり、あるいは配偶相手にとっての魅力を増すのだ。昆虫の翅の形状の変異は、進化の過程で、こうしたさまざまな選択圧を受けて最適化するのだが、異なる特徴の間でその性能のトレードオフが存在するのかどうかは明らかになっていない。

今回、Richard Bomphreyたちは、RNA干渉法を用いて、キイロショウジョウバエの翅の発生に重要なことが知られた特定の遺伝子の発現を停止させて、その飛翔能力を野生種に自然に見られる変異の範囲を超えて高められるのかどうかを調べた。次に、Bomphreyたちは、高速度カメラを用いて、キイロショウジョウバエの飛翔軌道を追跡調査した。その結果、遺伝子操作によってアスペクト比をやや高めた(根元から先端までを少し長くした)翅を持つようになったキイロショウジョウバエは、野生種よりも旋回半径が小さくなり、旋回率が上がったことが分かった。

ところが、翅のアスペクト比を極端な値まで高め、もっと細長い翅にしたところ、全ての飛翔性能特徴が野生種より低下した。この結果は、キイロショウジョウバエの翅の形状が敏捷性と操縦性にとって最適なものとなっていないが、その他の選択圧(例えば、飛翔効率)によって制約されている可能性が極めて高いことを示している。

doi: 10.1038/ncomms10851

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