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【動物学】鳥の鳴き声は統語規則に従っている

Nature Communications

2016年3月9日

Zoology: Birds chirp to the rules of syntax

Nature Communications

シジュウカラ(Parus minor)が発声のいろいろな要素を組み合わせて、そこから複合的な意味を引き出していることを報告する論文が掲載される。この合成的統語というプロセスは、これまでヒトの言語においてのみ記録されていたが、動物のコミュニケーションがこれまで考えられていた以上に複雑なものである可能性が今回の研究で明らかになった。

シジュウカラ科の鳥類は、異なる種類の音素(例えば、A、B、C、D)によって構成される構造的に複雑な発声(例えば、「チッカ」または「チッカ・ディー」という鳴き声)をする。シジュウカラの鳴き声のレパートリーには、10種以上の音素があり、単独で用いる場合と複数の音素を組み合わせて用いる場合がある。シジュウカラは、2種類の「チッカ」(捕食者に近づかないように警告するための'ABC'と配偶相手に近づくように伝えるための'D')を発することが知られているが、こうした鳴き声を意味があるように組み合わせることができるのかどうかは分かっていなかった。

今回、鈴木俊貴(すずき・としたか)たちは、シジュウカラ科の鳥類の鳴き声のレパートリーをさまざまに組み合わせた録音を同種の野生種に聴かせて、その応答を観察した。その結果、この野生種が、ABCの鳴き声とDの鳴き声から異なる意味を引き出し、ABC-Dという組み合わせの鳴き声からは複合的な意味を引き出したことが判明した。実際、ABC-Dを聴いた野生種は、水平線を見渡して捕食者がいないかどうかを確かめる行動と音素が聞こえるスピーカーに近づく行動の両方をとり、ABCの鳴き声とDの鳴き声のいずれか一方だけを聴いた野生種が、それぞれの鳴き声に対応した行動をとるのと同様の結果になった。これに対して、音素の順序を人工的に逆転させた場合(‘D-ABC’)には、野生種の鳥は、水平線を見渡すこともスピーカーに近づくこともしなかった。この結果は、音素によって伝達される情報が、具体的な音素の順序に関する規則に従って組み合わされていることを示している。

今回の研究結果は、鳥類における合成的統語の存在を示す実験的証拠であり、合成的統語は、数少ない鳴き声のレパートリーによって伝達できる意味の数を増やす方法として進化した可能性が非常に高い。

doi: 10.1038/ncomms10986

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